(15) 諦め
「さあ、一緒に行きましょうカ。夜宵クン」
【守護霊】は、一瞬で僕の前に立ち塞がり、手を差し伸べてくる。
笑っているけど、怖い。見た目は天使のようなのに、バックに悪魔が取り付いているように見えてしまう。
「い、嫌だ……!」
僕は、無意識に手を払いのけていた。
始めに言っていた……助けてくれるという言葉よりも、今の呑み込まれそうな雰囲気に恐怖を感じたから。
「抵抗しても、良い事なんてないデスヨ。……ハア」
ため息を付き、【守護霊】はカイを睨み付ける。
「アナタのせいデス」
「どーも」
何なんだよ……。
カイは、何がしたいんだよ。
何処に居ても、どんな状況でも飄々とした態度を取るカイにイラつき、僕は八つ当たりのように大声で叫んだ。
「カイ! 助けてよ!」
自分でも言いながら、図々しい奴だなと思えるくらいだった。
「……オレ、帰れって言われた身なんですけど」
「でも、ヤバイ人なんだよね!」
「だから、ナニ?」
「えっ……」
「オレには、関係ないし。丁度死ぬ予定だったんだし、良かったな」
つ……冷たい……。
「――――っ」
カイの事が、全くわからない。
迎えに来たと思ったら、突き放したりするし!
でも……でも、一番自分勝手なのは、僕だ。
散々カイを責めといて、都合が悪くなると助けて欲しい……なんて、虫が良すぎる……。そんな奴、誰も助けたいと思うはずがないよね……。
「そうだよね……。……もう、いいや。【守護霊】さん、僕、何処でも行くよ。……何処でも、連れてってよ」
つい、投げやりな言葉を口にしてしまった。
「本当デスカ!」
【守護霊】が、もの凄く嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「うん……」
少し後悔したけど、言ってしまった言葉が戻る事はない。
「告白は、どーするんだ?」
空気が読めないのか……わざとしているのかわからない、【死ゅ語霊】のカイが、いつも通りのふざけた調子で聞いてくる。
まただ。
イライラして来た……。
「どうもしないよ」
もう、どうだって良いんだ……。