(13) 天敵
「知らなかったな~。夜宵がオレをそんな風に思ってたなんて」
「カイ……」
嘘を言うな。嘘を。
いつの間にかカイは、僕たちが居る教室の一番後ろの中央席に、足を組んで机の上に堂々と座っていた。
僕は立ち上がり、【守護霊】はニヤニヤと笑いながら、カイを見つめる。
そんな視線を気にしていないのか、カイは気軽に【守護霊】に声をかける。何年振りかの友達に会ったかのように。
「よお。元気そうじゃねーか。【守護霊】さん」
「そっちこそ……【死ゅ語霊】、デスネ?」
もしかして……。
「知り合い……?」
僕は、【守護霊】のヒカリさんと、【死ゅ語霊】のカイを交互に見やる。
同業者?
でも、漢字が違うし……何よりも、味方同士……と言うよりかは、敵とか天敵とか……そういう表現が似合っているような……。
「まぁ、一応……な。でもさぁ、正直……今更こんな女に会っても……全然、全く、ちっとも、嬉しくねーけどな」
「私は、吐き気がシマス」
「何だと! じゃー吐いて来たらどーですか」
「相変わらずの馬鹿っぷりデス」
そう言って、【守護霊】は教団から降りる。
何か……険悪ムードが漂っているんですケド……。
僕は、はっきり言って関係ないと思うんだよね……。これは完全に巻き込まれた感が強いと言うか何と言うか……。
と思っていても、異様な雰囲気なので、僕はただ見ているだけで何も言えなかった。
「ハッ。勝手に言っとけよ」
ヒカリさんの事を鼻であしらってから、カイは僕の方を見る。
「な、何……」
僕の方に注目されるとは思っていなかったから、多少声が震えてしまった。
もう……これ以上、僕を非日常に引っ張り込まないで欲しいんだけど……面倒な事しか起こらなさそうだし……。
何よりも、僕はこんな変な人たちの騒動に巻き込まれている場合じゃないと言うか……。
勘弁して欲しいよ……。
「おい、夜宵。さっさと帰ろうぜー。あ、それとも……この訳わかんないオネーサンと遊ぶ方が好みなのか?」
何なんだよ、その言い方は……。
僕が変な趣味みたいじゃないか。
しかも、誰のせいでこの【守護霊】に絡まれていると思ってるんだ! お前のせいだよ! お前の!!
「……先に、帰れば?」
つい、思ってもない事を口にしてしまった。でも、今更『やっぱり間違い』なんてカイに言えるはずがない。
「……一つ言っとく。この女に任せたら、死ぬぐらいじゃ済まねーぜ」