(8) 部員
私が入っている部活は、散策部。
河川敷をひたすら歩き、自然を発見して、写真とかを撮るっていう……ごく地味な部活と言っても良い。
その為、自ら入りたがる人なんて……まず居ない。
私も、彩音が入ろう……と誘って来なければ、絶対に入らなかった部活だと今だから暴露しておく。
人気がある訳でもない部活に、今頃二名も入る……?
ちなみに、今のメンバーは部長の彩音。それに私と、三上さん……三上葵さんがメンバーだったりする。
私と三上さんは部活で知り合ったから、親友という程でもないけれど、普通のクラスメイトよりは仲が良いんじゃないかと思ってる。
さて。
部員二名が入ると聞いて、何故かカイの姿を思い浮かべてしまった。
カイはもう居ないのに。
いや、正確には【死ゅ語霊】とやらになって戻って来たらしいけど……。
「はあ……」
何か、折角高校生になったっていうのに、まだ中学の事を……カイの事を引きずってる、なんて……女々しいかな……。
本当は、早く忘れた方が良いんだと思う。
例え【死ゅ語霊】として私の前に現れたんだとしても、生きていた頃のカイが居ないのは事実なんだから。
私は、もうカイに縛られたくないのに。
なのに、どうして……今頃になって、私の前に現れるの……?
夜宵の事を好きで居ちゃいけないって事なの……?
ねえ、カイ……。
「おっはよ~。朝野さん」
彩音と別れた後、教室に向かう為に廊下を歩いていると、背中を軽く叩かれて振り向く。
すると、目の前には同じ部活の三上さんが居た。
今日もご機嫌なのか、鼻歌を歌っている。何処かで聞いた事があるようなメロディだったけど、思い出せなかった。
どうでも良い事だけど。
「おはよう、三上さん。今日も元気だね」
「まあね! 元気が私の……とりえ、みたいなものだから」
「そうかもね」
私と三上さんは顔を見合わせて、そして微笑む。
いつもの挨拶光景。
近寄り過ぎず、かと言って遠過ぎない……心地良い距離感。
だからと言ったら、三上さんはどういう顔をするのかわからないけど、丁度良い距離感は私にとってはホッとする事だった。
こういう雰囲気がずっと続けば良いのに。
「そう言えば、部員入るの、聞いたかな? さっき部長にメールしたんだけどな」
「うん、聞いたよ。二名、だよね」
「涼風夜宵君と、親戚の涼風カイさんが入るんだって」
……嘘……。