表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しゅごれい  作者: 千世
第一章 涼風夜宵サイド
2/54

(1) 日常




 人は、何人かに……何万人かに一人は、不思議な能力を持つものがいる――。





 とどこかの本で読んだ事があった。

 それは人様々で、超能力というものであったり、霊が見えたりと、普通の人から『何言ってんだ、お前?』とでも言われそうなものばかりである。

 当たり前と言えば、当たり前なのかもしれない。普通の人から見れば、気味の悪い事なのだから。

 でも僕は、ふと、こんな疑問を持つ。

 ……なら、【普通】というのは何なのか、と。

 誰が【普通】で、誰が【変】なのか。

 もしかすると、普通と思っている人が、普通じゃないのかもしれないとは思わないのだろうか、と。

 まあ、どうでも良いことなのだけど。

 こんな事を思っている僕も、自分がその立場だったら? と聞かれると多分困るだろう。

 何故かって?

 僕も普通と思っているから。

 何事もなく平凡に過ごし、十六年間が当たり前に過ぎているから。

 でも、そんな思いが崩れ去る日が訪れる。

 それは、カラッと晴れた朝の事だったと思う――。





      ※※※





《朝だよ。ピーちゃんだピヨ☆》

 インターネットのオークションを通じて、超格安で売って貰った、お気に入りのヒヨコ型時計の音が部屋全体に響き渡る。

 その音は、僕の頭の中にも当然響く。

 最初は、かすかに聞こえる程度だったので気にも留めなかったが、次第に大きくなって、ガンガンと頭痛がしてきたので、大きく手を上げて力いっぱい時計を叩いて、止めた。

 うっすらと目を開ける。白い天井がぼんやりと見える。

 辺りまだ暗そうだったので、もう一度目をつむる。昨日何時にセットしたっけ? と頭の中に疑問が浮かんで来たと同時に、僕は渋々ゆっくりと起き上がる。

 まだ目がうつろ、頭の中は真っ白状態だったので、何も考える気にもなれず、そのまま暫くぼっーとする事に決めたのだった。





「……よし」

 十分後。

 頭の中が少し活動を始めたので、布団を脱ぎ捨てて、ベッドから下りた。

大きな欠伸を一つし、目の中にいっぱいの涙が溜まったまま、チェックのパジャマから制服へと着替え始める。

 ここで、自己紹介の一つでもしておこうと思う。

 僕の名前は、涼風夜宵。

 性別は男で、十六歳。高校一年生。

 一応受験はしたけど、定員割れのところを狙ったので、平凡な僕の成績でも入る事が出来た。

 だからという訳ではないけど、結構のんびりした学校(名前は、虹ヶ丘商業高等学校、略して虹商)なんで、僕にぴったりのいい雰囲気で助かっている。

 最後の最後……願書出す前日まで悩んでいただけの事はある。

 勉強・運動ともそこそこ平凡。

 だけど、絵を描くことはヘタクソ。歌を歌えばオンチと言われ、機械を触れば必ずと言っていいほど壊れ、ミシンを使えば糸が絡まる。

 小学校の時は、クラッシャーと呼ばれていたのが、懐かしく感じる。

 ……という具合に、ほとんどダメ人間だけど、料理だけは得意だったりする。

 と自慢してみる。

 後、僕には家族はいない。

 小さい頃に亡くなったらしい。

 僕は全く覚えていないんだけど。

 写真を見せて貰った事はあるが、イマイチ、ピン と来なかった。

 まあそんなこんなで、父さんと母さんの高校時代の友人夫婦に引きとられたが、今は一人暮らしをしている。

 理由は、ただ単に一人暮らしがしてみたかっただけ。

 一人の方が気楽だし、マンション代・光熱費・食費・その他もろもろの生活費とお小遣いは貰っているので、何の問題もないし。



 バキッ。



 何かを踏んだ感触と、割れる音がしたので下を見ると、僕の足の下にヒヨコの時計があった。

 多分、力いっぱい時計の音を止めた時に、反動で床に落ちたのであろう。恐る恐る足を上げると、時計にヒビが入っており、目玉が飛び出していた。

「あっ……」

 しゃがみ込んで時計を拾い、ため息と同時に肩をすくめた。

 心の中では、涙の嵐が起こった。

 それ程ショックという事なのだけど、本日で三十個目(壊した数)に到達してしまったので、ショックを通り越し、自分に呆れてしまった。

 ダメな人間だな、と。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ