(9) 【死ゅ語霊】と友
「あの、カイ?」
「はい、何でしょう?」
爽やかな笑顔を浮かべるカイに気持ち悪さを感じながら、僕は事情を尋ねる為にカイに近くに来るよう手招きをする。
三上さんはきょとんとしながらも、何も言わずにその場で待っていてくれる。
有難う、三上さん。
「何ですか?」
と言いつつ、僕に近付いてくる。
お嬢様のような口調はやめて欲しいんだけどな……。
と思いつつも、ツッコミを入れるのはやめておいた。だって、三上さんが傍に居るのに、そんな……出来ないし……。
「何を考えてるの? って言うか、何を企んでるの?」
「まあ、何を言っているんですか? 私、何も企んでいませんよ。ただ、学校生活を楽しもうとしているだけですけど」
カイが私、って言ったのを初めて聞いた気がする……。
多分、この姿を見たのが初めてだったら、僕もカイに見惚れていたと思う。
今のカイは、口調がお嬢様って感じだからかもしれないけど、清楚で可憐な美少女に見えるもん。
僕の好きな人は三上さんだから、カイを好きになるなんてあり得ない事。
だけど、もし好きな人が居なかったら、多分カイを好きになっていたと断言出来る程、今のカイは女の子っぽかった。
――だって、学校生活をオレは満喫出来なかったからな。
「え?」
ボソッと小さな声で、カイは何か呟く。
考え事をしていた事もあってか、ふいに呟いた言葉を聞き取る事は出来なかった。
「ごめん、もう一回言って。聞き取れなかったから」
「何言ってるかっていう内容? それとも、言葉の意味?」
「……前者」
「……ふーん……。……何でもありません。気にする程の事でもないですから、気にしないで下さい」
そう言われると気になるんですけど。でも、カイはお前との話は終わったかと言うかのように僕から離れ、三上さんの方を向く。
「私が三上さんに近付いたのは、三上さんと友達になりたいからですよ」