(5) 絶対
「意味が、わからないんだけど……」
「オレ、意味わかんない事は言ってないつもりだけど?」
カイの顔は、おちゃらけた表情ではなく真剣そのものだった。
口調は……いつも通りだけど。
本当に、わからなくなる。
本気で言っているのか、冗談で言っているのか。
そもそも、夜宵が死ぬかどうかの瀬戸際で、助ける方法が恋愛ゲームなんて……馬鹿げてるとしか言いようがない。
共通点がないと言っても良い。
それに、カイは夜宵の事を……。
「余計な事を考えてる暇あんの?」
私の心を読んでいるかのように、声をかけてくる。
「……いつも、カイは私の心の中を読むんだね」
「そんな事ねーよ。たまたまだって」
「たまたまで、正確に思っている事がわかる人なんて居ないよ」
「そうでもねーと思うけど?」
さあ、さっさと話進めようぜ。いのりんも授業あるんだろ?
そう言って、カイは自分の右手の人差し指と中指を私の方に向けた。
左手は腰にあて、いかにも偉そうなポーズをとる。
その姿は、中学の時のカイの姿とそっくりだった。
「いのりんにして貰う事は、夜宵が想い人とくっつかないようにして貰う事。その為の条件として守って貰う事は、二つ。一つ目は、ゲームの事を誰にも喋らない事。二つ目は、オレの事を……夜宵に喋ったりするな。――絶対に」
最後の言葉には、強い信念のようなものがこもっていた。
今までで見た事がないくらい…………………………………怖い顔だった。