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走り出せ!エクストリーマー!  作者: 双鶴


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第46話 壮行会の夜

 大会まで、あと三日。


 夕方の駅前広場は、

 いつもとはまったく違う空気に包まれていた。


 ライトが設置され、

 ステージが組まれ、

 商店街の旗が風に揺れている。


「……これ、全部……?」

 俺――白峰理久は、言葉を失った。


「全部、商店街の人たちが準備したのよ」

 黒江斎が微笑む。


「壮行会……

 本当にやるんですね……」

 雨宮柊が目を丸くする。


 そのとき、

 八百屋の店主が手を振ってきた。


「科学部ー!

 こっちこっち!」


「お前らのための壮行会だぞ!」

 喫茶店のマスターも笑っている。


「……なんだよこれ……

 泣くに決まってるだろ……」

 俺は目を押さえた。



 広場の中央には、

 巨大な旗が掲げられていた。


 白地に青いライン。

 中央には大きく――


『走れ!エクストリーマー』


 その周りには、

 商店街の人たちの寄せ書きがびっしりと書かれていた。


『泣いてもいい、でも前に進め』

『町の誇りだよ』

『南条工業にもよろしくね』

『怪我だけはしないように』

『青春、見せてくれ!』


「……こんなの……

 反則だろ……」

 俺は震える声で言った。


「反則じゃないわよ」

 黒江が微笑む。


「町が、

 私たちに“光”をくれてるのよ」


「僕……

 本当に走りたいです」

 雨宮が涙を拭った。



「科学部ー!

 準備できてるかー!」


 軽音部のボーカルがステージに立つ。


「今日は、

 科学部のために作った新曲を披露する!」


 ギターが鳴り、

 ドラムが跳ね、

 ベースが走る。


 そこに――

 吹奏楽部の音が重なった。


 トランペット、

 サックス、

 ホルン、

 クラリネット。


 音が夜空に広がる。


「……すごい……」

 雨宮が呟いた。


「軽音部と吹奏楽部のコラボなんて……

 初めて見たわ」

 黒江が目を丸くする。


 曲名は――

 『光を集めて走れ』


 歌詞は、

 科学部の挑戦そのものだった。


『泣いた日も

 悔しい日も

 全部、光に変えていけ


 走れ、走れ

 エクストリーマー

 君の青春は

 まだ終わらない』


 俺は胸が震えた。


「……なんだよこれ……

 泣くに決まってるだろ……」



「科学部のみんな、ステージへどうぞ!」


 司会の声が響く。


 3人はステージに上がった。


 目の前には、

 商店街の人たち、

 学校の仲間たち、

 子どもたち、

 先生たち。


 そして――

 巨大な旗。


「……すごい光景だな」

 俺は呟いた。


「すごいわね」

 黒江が微笑む。


「僕……

 こんなに応援されたこと、

 人生で初めてです」

 雨宮が言う。


 マイクが渡された。


「白峰くん、どうぞ」


 俺は深呼吸した。




「……今日は、

 本当にありがとうございます」


 声が震えた。


「僕たちは、

 ど素人でした。

 何も知らなくて、

 何度も失敗して、

 何度も泣いて……」


 広場が静かになる。


「でも、

 町が応援してくれて、

 全国が助けてくれて、

 南条工業が手を差し伸べてくれて……

 だから、

 ここまで来れました」


 黒江と雨宮が横で頷いている。


「大会では、

 全力で走ります。

 結果がどうであれ、

 僕たちは“挑戦者”として走ります」


 拍手が広がった。



「私からも一言」


 黒江がマイクを持つ。


「私は、

 この挑戦を通して、

 “美しさ”って何かを考えました」


 広場が静かになる。


「美しいのは、

 形だけじゃない。

 挑戦する姿、

 支える人たち、

 涙、

 笑顔……

 全部が美しいのよ」


 拍手が起きた。


「僕からも……」


 雨宮は少し震えていた。


「僕は、

 自分に自信がありませんでした。

 でも、

 白峰くんと黒江さんと、

 町のみんながいてくれて……

 僕、

 “走りたい”って思えるようになりました」


 涙がこぼれた。


「大会、

 頑張ります」


 広場が拍手で包まれた。



 最後に、

 軽音部と吹奏楽部が再び演奏を始めた。


 商店街の人たちが歌い出す。

 子どもたちも歌う。

 先生たちも歌う。


 広場全体が、

 ひとつの大きな声になった。


『走れ、走れ

 エクストリーマー

 光を集めて

 未来へ行け』


 俺は涙を拭った。


「……行くぞ」

 俺は言った。


「行くわよ」

 黒江が微笑む。


「はい」

 雨宮が頷く。


 壮行会の夜、

 町はひとつになり、

 科学部は大会へ向けて

 最高の光を受け取った。


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