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走り出せ!エクストリーマー!  作者: 双鶴


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第44話 町が灯す火

 火曜日の放課後。

 倉庫には、昨日に続いて静かな熱が満ちていた。


「……ダクトの形、これでどうだ?」

 俺――白峰理久は、削ったフレームを黒江斎に見せた。


「いいわね。

 空気の“逃げ道”ができてる」

 黒江が頷く。


「温度分散のために、

 素材の組み合わせも変えてみました」

 雨宮柊がタブレットを見せる。


「理科の先生のアドバイス通り、

 熱伝導率の違う素材を組み合わせて……」


「よし。

 これならいける」

 俺は深く息を吸った。


 昨日の合同試走会で見えた“壁”。

 それを越えるために、

 3人は今日も黙々と作業を続けていた。




 その頃、商店街では――

 自然と“ある動き”が始まっていた。


「科学部、また頑張ってるらしいねぇ」

「昨日の試走会、泣いたよ」

「大会、いつだっけ?」

「応援したいよなぁ」

「旗でも作るか?」

「壮行会とかどうだ?」


 誰が言い出したわけでもない。

 でも、町の空気が“動き始めていた”。



 夕方。

 倉庫の扉がノックされた。


「科学部さーん、荷物だよー!」


 八百屋の店主が、大きな段ボールを抱えていた。


「荷物……?」

 俺は受け取った。


 開けると――

 中には、色とりどりの布が入っていた。


「これ……旗の布?」

 黒江が目を丸くする。


「そうだよ!」

 八百屋の店主が笑う。


「商店街で話しててね、

 “エクストリーマーの旗を作ろう”ってなったんだよ」


「えっ……」

 雨宮が息を呑む。


「だってさ、

 お前ら、町の誇りだろ?」

 店主は照れくさそうに言った。


「大会に持っていけるように、

 みんなで旗を作るんだよ」


 胸が熱くなった。


「……ありがとうございます」

 俺は頭を下げた。


「礼なんかいらないよ。

 走れ、科学部!」



 その夜。

 商店街のグループLINEが動き始めた。


『壮行会やろう!』

『場所は駅前広場でどう?』

『軽音部にも声かけよう!』

『吹奏楽部も呼ぼう!』

『ケーブルテレビにも連絡しとく!』

『エクストリーマーの旗、明日から作るよ!』


「……なんだよこれ……」

 俺はスマホを見て呟いた。


「町全体が、

 私たちの“背中”を押してるのよ」

 黒江が言う。


「嬉しいですね……

 本当に」

 雨宮が目を潤ませた。



「よし。

 じゃあ、試すぞ」

 俺はエクストリーマーの電源を入れた。


 モーターが静かに唸る。

 バッテリー温度の計測が始まる。


「温度……安定してます」

 雨宮が言う。


「空気の流れ、

 ちゃんと抜けてるわ」

 黒江が頷く。


 5分。

 10分。

 15分。


「……上がらない」

 俺は息を呑んだ。


「温度が……

 上がらない!」

 雨宮が叫ぶ。


「成功よ!」

 黒江が笑った。


 3人は思わず抱き合った。


「……やったな」

 俺は震える声で言った。


「やったわよ」

「やりました……!」




 そのとき、

 黒江のスマホが震えた。


「……また来てる」


「南条工業か?」

 俺が聞く。


「ええ。

 見て」


『冷却問題、進んでいますか?

 僕たちも応援しています。

 大会で会えるのを楽しみにしています。

 挑戦者同士、最後まで走りましょう。』


 雨宮が微笑んだ。


「南条工業……

 本当にいい人たちですね」


「いい人たちよ」

 黒江が言う。


「でも、

 大会では本気で戦うわよ」


「もちろんだ」

 俺は深く頷いた。



 夜の倉庫で、

 エクストリーマーが静かに光っていた。


「……冷却問題、

 越えたな」

 俺は言った。


「越えたわよ」

 黒江が微笑む。


「はい。

 これで……

 大会に行けますね」

 雨宮が言う。


 3人は拳を合わせた。


「町の旗を背負って走る」

「全国の声を背負って走る」

「南条工業と、

 挑戦者として戦う」


 科学部は、

 冷却問題を越え、

 大会へ向けて本当の意味で走り出した。


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