第42話 帰り道の誓い
合同試走会が終わった夕方。
会場の空気には、まだ熱が残っていた。
南条工業の車体が片付けられ、
エクストリーマーも静かにトラックへ積まれていく。
「……終わったな」
俺――白峰理久は、深く息を吐いた。
「終わったけど……
なんか、まだ胸が熱いですね」
雨宮柊が言う。
「当然よ」
黒江斎が微笑む。
「今日、私たち“挑戦者”になったんだから」
「白峰くん、黒江さん、雨宮くん」
南条工業の三枝が歩み寄ってきた。
「今日は本当にありがとう。
君たちと走れてよかった」
「こちらこそ……
本当にありがとうございました」
俺は頭を下げた。
「冷却問題、
絶対に解決します」
雨宮が言う。
「ええ。
今日の壁は、
“越えろ”って言ってるのよ」
黒江が続ける。
リーダーは笑った。
「その意気よ。
大会で会いましょう。
今度は“挑戦者同士”じゃなくて、
“ライバル”として」
その言葉に、
胸が震えた。
「……はい。
絶対に会いましょう」
南条工業のメンバーが手を振る。
「エクストリーマー、いい名前だよー!」
「次はもっと速くなってるはずだ!」
「大会でまたな!」
3人は自然と笑っていた。
藤川先生の運転するトラックの後ろを歩きながら、
3人はゆっくりと帰路についた。
夕焼けが長い影を伸ばしている。
「……なんか、
夢みたいな一日だったな」
俺は呟いた。
「夢じゃないわよ」
黒江が言う。
「だって、
ちゃんと“走った”んだから」
「はい」
雨宮が静かに言った。
「走って、
壁にぶつかって、
助けてもらって……
なんか……
青春ってこういうことなんですね」
その言葉に、
胸がじんとした。
スマホが震えた。
「……商店街のグループLINE?」
俺は画面を開いた。
『科学部のみんな、お疲れさま!
ケーブルテレビで見たよ!
泣いた!
次も応援するからね!』
『南条工業の子たち、礼儀正しいねぇ。
いいライバルだ!』
『エクストリーマー、かっこよかったよ!』
『帰ってきたら寄っていきな!
おにぎり用意してるから!』
「……なんだよこれ……」
俺は笑いながら涙が出そうになった。
「町全体が、
私たちの“帰り”を待ってるのよ」
黒江が言う。
「嬉しいですね……
本当に」
雨宮が呟いた。
学校に戻ると、
先に着いた藤川先生が待っていた。
「お前ら……
よくやったな」
その声は、
いつもより少しだけ震えていた。
「先生……
褒めてくれてるんですか?」
俺が聞くと、
「当たり前だろ。
お前らの挑戦、
見届けないでどうする」
藤川先生は3人を見渡した。
「今日の走りは、
“挑戦者の走り”だった。
胸を張れ」
雨宮が目を潤ませた。
「でも……
まだ壁があります」
「壁があるから、
挑戦は面白いんだ」
藤川先生が言う。
「越えろ。
お前らなら越えられる」
倉庫に戻ると、
エクストリーマーが静かに佇んでいた。
夕焼けの光が、
車体を赤く染めている。
「……なぁ」
俺は言った。
「今日、
南条工業に“挑戦者”って言われた時……
なんか、
胸が熱くなった」
「私もよ」
黒江が言う。
「挑戦者って、
なんかいい言葉よね」
「僕……
もっと挑戦したいです」
雨宮が微笑む。
俺は深く息を吸った。
「よし。
冷却問題、絶対に解決するぞ」
「するわよ」
「はい」
3人はエクストリーマーの前で、
そっと拳を合わせた。
「大会まで、
全力で走る」
「走るわよ」
「走りましょう」
合同試走会の余韻を胸に、
科学部は次の挑戦へと歩き出した。




