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走り出せ!エクストリーマー!  作者: 双鶴


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23/50

第23話 地図を描き直す日

 翌日の放課後。

 倉庫の机の上には、ノート、タブレット、付箋、ペン。

 いつもより物が多い。


「さて。今日は“計画の再構築”から始める」

 黒江斎が、ホワイトボードに線を引いた。


「資金、増えるからな」

 俺――白峰理久は椅子に座りながら言った。


「増えたというか……倍になりましたよ」

 雨宮柊がタブレットを見せる。


 クラファンの数字は 152人。


「……すごいな」

 俺は思わず息を吐いた。


「すごいのは数字じゃなくて、

 “町が動き始めた”ってことよ」

 黒江はペンを回しながら言った。


「まず、資金の再配分からいくわよ。

 バッテリー、パネル、フレーム材……

 優先順位をつける」


「フレームは俺がやる」

「文章と広報は僕が」

「交渉と外回りは私ね」


 役割が自然に決まる。


 黒江がホワイトボードに書き込む。


【優先順位】

1. フレーム強度の再設計(白峰)

2. バッテリー選定(雨宮)

3. パネルの調達(黒江)

4. スポンサー交渉(黒江)

5. SNS広報(雨宮)

6. 進捗動画(3人)


「で、日程」

 黒江がカレンダーを広げた。


「大会まで、あと四十日。

 週ごとに“何を終わらせるか”決める」


「四十日って……短いな」

 俺が言うと、黒江は笑った。


「短いから燃えるのよ」


 雨宮が静かに言った。


「でも、

 “できること”と“できないこと”を分けないといけませんね」


「そう。

 だから今日は“地図を描き直す日”よ」


 黒江が線を引くたび、

 計画が形になっていく。


 そのとき――

 倉庫の扉がノックされた。


「失礼します、科学部さん」


 見慣れない大人が立っていた。

 胸には「タウン誌・編集部」の名札。


「取材、お願いできますか?

 クラファンの記事、ぜひ載せたいんです」


「……タウン誌?」

 俺は思わず立ち上がった。


「はい。

 “町の挑戦者たち”という特集を組んでまして」


 黒江が一歩前に出た。


「もちろん。

 ただ、作業中なので、

 簡単なインタビューなら」


「十分です。

 写真も数枚撮らせてください」


 雨宮が小声で言った。


「白峰くん、また写真ですよ」


「またか……」


 でも、悪い気はしなかった。


 取材は10分ほどで終わった。

 編集者は満足そうに帰っていった。


「……すごいな」

 俺は呟いた。


「何が?」

 黒江が聞く。


「いや……

 俺たち、いつの間にか“町のプロジェクト”になってる」


 雨宮が頷いた。


「まだ終わってないのに、

 応援してくれる人が増えていくって、

 不思議ですね」


「不思議じゃないわよ」

 黒江は言った。


「“挑戦してる人”って、

 それだけで町の宝なのよ」


 そのとき、また扉が開いた。


「科学部さん、ちょっといい?」


 今度はPTAの会長だった。


「クラファン、見たわよ。

 学校としても応援したいの。

 PTAの広報誌に載せてもいい?」


「えっ……」

 雨宮が目を丸くした。


「もちろんです」

 黒江が丁寧に頭を下げた。


「ありがとう。

 うちの子も“科学部かっこいい”って言ってたわよ」


 会長は笑顔で帰っていった。


 俺は思わず天井を見上げた。


「……なんか、すげぇな」


「すごいのはこれからよ」

 黒江が言った。


「商店街からメール来てる。

 “スポンサーになりたい”って」


「商店街が?」

 俺は驚いた。


「うん。

 “町の子たちが頑張ってるなら、

 うちも何かしたい”って」


 雨宮が静かに言った。


「……嬉しいですね」


「嬉しいだけじゃないわよ」

 黒江はホワイトボードを指差した。


「計画、もう一段階上げられる」


 俺は深く息を吸った。


「よし。

 じゃあ、今日のうちに“新しい地図”完成させよう」


「そうね」

「はい」


 3人でホワイトボードに向かう。


 線が増える。

 付箋が貼られる。

 日程が埋まっていく。


 町の声が、

 計画の中に入り込んでいく。


 科学部は、もう3人だけのものじゃない。

 町と一緒に走るプロジェクトになった。


 そして――

 新しい地図が、静かに完成した。


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