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走り出せ!エクストリーマー!  作者: 双鶴


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第2話 動き出す科学部、そして噂は広がる

 科学部に入部した翌日。俺たち三人は、昼休みに部室へ向かった。


 校舎裏のプレハブは相変わらず湿気っぽい。けれど、昨日より少しだけ“自分たちの場所”に見えた。


「とりあえず、現状把握からだな」

 俺――白峰理久は、部室の棚を開けながら言った。


「現状把握って、つまりゴミの仕分けですよね」

 黒江斎が腕を組む。


「まあ、そうですね。これは……壊れた顕微鏡?」

 雨宮柊が持ち上げた。


「壊れてるなら捨てろよ。なんで残してんだよ」

 俺が呆れると、黒江が即答した。


「学校ってそういうとこでしょ。誰も責任取りたくないから、壊れた物が永遠に残る」


「言い方が辛辣すぎる」

 雨宮が苦笑する。


 そんな調子で片付けをしていると、部室の窓の外に人影が増えてきた。


「……なんか見られてない?」

 俺が言うと、黒江がため息をついた。


「そりゃそうでしょ。学校きっての美形三人が、同じ部活に入ったって噂になってるんだから」


「美形って……自分で言う?」

 雨宮が苦笑する。


「事実でしょ。ほら、あの子たち写真撮ってるし」

 黒江が指差すと、窓の外で女子数人がスマホを構えていた。


「やめてほしいんだけど……」

 俺は思わず顔をそむけた。


「まあ、注目されるのは悪いことじゃないですよ。スポンサー探すとき有利ですし」

 雨宮が妙に前向きなことを言う。


「そういう問題じゃないんだけどな……」


 とにかく、落ち着かない。


 そんな中、黒江が机にノートパソコンを置いた。


「はい、これ。ソーラーカー大会の規定。ざっと読んだけど、まあまあ厳しいわよ」


「どれどれ……」

 俺は画面を覗き込む。


 車体サイズ、重量、パネルの種類、バッテリー容量、走行距離……

 思っていたより本格的だ。


「これ、高校生が作るレベルじゃないだろ」

 俺が言うと、黒江が肩をすくめた。


「でも出るんでしょ。廃部回避のために」


「まあ……そうだけど」


「僕、規定読むの好きですよ。こういうの、パズルみたいで」

 雨宮がページをスクロールする。


「雨宮くん、パズルの難易度高すぎるでしょ」

 黒江が呆れた。


 そこへ、部室のドアが開いた。


「おーい、科学部。ちゃんと活動してるか?」


 藤川先生だ。白衣のポケットにはチョコバーが刺さっている。


「先生、これ見てください。大会の規定です」

 雨宮が画面を見せる。


「うわ、難しそう……ほんとに出るの?」

 藤川先生は完全に他人事だ。


「出ますよ。廃部にされたくないんで」

 黒江がきっぱり言う。


「まあ、やる気があるのはいいことだね。でも、まずは“車体を作る場所”を確保しないと」


「場所?」

 俺が聞くと、先生は部室の狭さを指差した。


「ここじゃ無理でしょ。車一台分のスペースなんてないし」


「……確かに」

 俺は部室を見回した。

 プレハブは狭い。机と棚を置いたら、三人が座るのがやっとだ。


「体育館裏の倉庫、空いてた気がするけど……」

 藤川先生が言う。


「使わせてもらえるんですか?」

 雨宮が聞く。


「交渉次第かな。あそこの管理は体育科の先生だから」


「体育科……」

 黒江が眉をひそめた。

「絶対めんどくさいじゃん」


「まあ、頑張って」

 藤川先生はチョコバーをかじりながら去っていった。


「……交渉か」

 俺が呟くと、黒江がニヤッと笑った。


「任せて。こういうの得意だから」


「黒江さん、体育科の先生相手に毒舌はやめてくださいね」

 雨宮が心配そうに言う。


「大丈夫。必要なときだけ毒吐くから」


「必要なときっていつだよ」

 俺が突っ込むと、黒江は肩をすくめた。


「相手が理不尽なとき」


「それ、ほぼ毎回じゃん」

 雨宮が小声で言った。


 そんなやり取りをしていると、また窓の外に人影が増えた。


「ねえ、あの三人って新しい科学部の子たち?」

「全員顔良すぎない?」

「なんかドラマみたいなんだけど」


 聞こえてくる声に、俺はため息をついた。


「……これ、落ち着いて作業できるのか?」


「無理でしょ」

 黒江が即答した。

「だから、早く作業場所確保しないと」


「じゃあ、放課後に体育館裏行く?」

 雨宮が提案する。


「行くしかないな」

 俺は頷いた。


 こうして、科学部の“本格始動”が決まった。


 部員三人。注目度だけは校内トップ。

 でも、実力はゼロ。経験もゼロ。予算もゼロ。


 それでも――動き出した以上、止まるわけにはいかない。


 ソーラーカーはまだ影も形もない。

 けれど、確かに前へ進み始めていた。


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