第19話 光の当たる場所
月曜日の朝。
教室に入った瞬間、空気がいつもと違った。
「科学部、クラファンやるらしいよ」
「見た? あの3人、普通にモデルじゃん」
「白峰くん、写真映えすごい」
「雨宮くん、イケメン」
「黒江さん、強い美人すぎる」
反発ではなく、
“興味”と“期待”が混ざった空気だった。
「……なんか、褒められてない?」
俺――白峰理久が言うと、
雨宮柊が苦笑した。
「褒められてますね。
珍しいことに」
「珍しいって言うなよ」
黒江斎は机に座りながら、スマホを見せてきた。
「ほら、これ。
クラファンの事前告知、もう拡散されてる」
画面には、
昨日撮った“3人の写真”が載っていた。
白峰(俺)――静かな目
雨宮――柔らかい笑顔
黒江――自信に満ちた表情
3人が並ぶと、確かに“映える”。
「……なんか恥ずかしいな」
「恥ずかしがるなよ」
黒江は肩をすくめた。
「私たち、知識はないけど“顔だけは最高”なんだから。
使える武器は全部使うのよ」
「言い方よ……」
俺は頭を抱えた。
「でも、事実です」
雨宮は淡々と言った。
「白峰くん、写真の“いい角度”が多すぎます」
「褒めてるのかそれ」
「褒めてますよ」
黒江が立ち上げたクラファンのページは、
すでに“事前フォロー”が増え始めていた。
「これ……本当にいけるかもな」
俺は呟いた。
「いけるわよ」
黒江は自信満々だった。
「だって、
“普通科の美形3人がソーラーカー作ります”って、
もうそれだけで物語じゃない」
「物語って……」
「物語よ。
クラファンは“物語”がすべてなの」
雨宮がページの文章を見せてきた。
「説明文、こんな感じでどうですか?」
そこには、
“普通科の3人が、強豪校に挑む理由”
“失敗を恐れず進む姿勢”
“地域の人に支えられていること”
が丁寧に書かれていた。
「……お前、文章うまいな」
「ありがとうございます」
黒江が言った。
「雨宮くんの文章、
“応援したくなる空気”があるのよね」
「空気って……」
俺は笑った。
「でも、確かにそうだな」
そのとき、
教室の後ろから声がした。
「科学部、すごいじゃん」
振り向くと、
クラスの男子が笑っていた。
「クラファン、応援するわ。
なんか……かっこいいし」
「ありがとう」
俺は素直に言った。
黒江が小声で言った。
「……なんか、
“敵”じゃなくて“味方”が増えてない?」
「増えてるな」
俺は頷いた。
「三枝がいたときより、
空気が軽い気がする」
「それは……」
黒江は少しだけ考えてから言った。
「たぶん、
“3人の物語”に戻ったからよ」
雨宮が静かに言った。
「三枝さん、
今頃どうしてるんでしょうね」
「どうもしないだろ」
俺は笑った。
「敵チームなんだから。
でも……
クラファンの噂くらいは届くだろうな」
「届きますね、きっと」
雨宮は頷いた。
「でも、
それはそれでいいんじゃないですか。
僕らは僕らで進むだけです」
黒江が立ち上がった。
「よし。
今日の放課後、クラファンの最終チェックするわよ」
「了解」
「はい」
チャイムが鳴り、
教室がざわつき始めた。
でも、
そのざわつきは昨日までのものとは違った。
反発でも嫉妬でもなく、
“期待”と“応援”が混ざった空気。
俺は思った。
光が当たるって、
こんな感じなんだな。
そして、
その光の中に立つのは――
俺たち3人だ。




