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走り出せ!エクストリーマー!  作者: 双鶴


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第10話 学校がざわつく

 昼休みの教室。

 弁当を広げようとした瞬間、前の席の女子がひそひそ声で言った。


「ねえ、白峰くんって科学部なんだよね?」


 俺――白峰理久は、箸を止めた。


「……そうだけど」


「やっぱり! なんか噂になってるよ。

 “科学部が車作ってる”って」


「車じゃなくてソーラーカーな」


「どっちでもすごいよ!」


 教室のあちこちから視線が飛んでくる。

 昨日より明らかに増えている。


 そこへ、雨宮柊が弁当を持ってやってきた。


「白峰くん、なんか見られてますよ」


「見られてるんじゃなくて“観察されてる”だな」


「どっちでも嫌ですね」


 雨宮は席に座り、静かに弁当を開いた。


「黒江は?」

「呼びに行ったら“あとで行く”って言ってました」


 その“あとで”が問題なんだよな。

 黒江斎は、何かあるとすぐ動くタイプだ。


 案の定、昼休みの終わり際に教室のドアが開いた。


「白峰くん、ちょっと来て」


 黒江が顔だけ出して言った。


「何だよ」


「職員室。呼ばれてる」


「……は?」


 職員室に行くと、藤川先生と、見たことのないスーツ姿の男性がいた。


「白峰くん、紹介するよ」

 藤川先生が言った。

「この人、PTAの広報担当の方」


「広報……?」


 スーツの男性が笑顔で言った。


「科学部の活動、ぜひ学校の広報誌に載せたいんだよ」


「えっ」


「写真も撮りたいし、インタビューもしたい。

 “若い力が未来を作る”ってテーマでね」


「いやいやいや、まだ何も作ってないんですけど」


「だからこそ“これから作る”っていう熱意を伝えたいんだよ」


 黒江が横で小声で言った。


「白峰くん、断ったらダメ。広報に載ればスポンサー増える」


「お前、そういうとこだけ早いな……」


 結局、俺は写真を撮られ、簡単なインタビューを受けた。


 職員室を出ると、黒江が満足げに言った。


「ほら、いい感じじゃん」


「いや、俺は別に……」


「白峰くん、顔がいいんだから使わないと損」


「使うって言うな」


 そこへ、雨宮が走ってきた。


「二人とも! 大変です!」


「どうした?」

 黒江が聞く。


「南条工業の三枝さん、学校に来てます!」


「は?」

 俺と黒江が同時に声を上げた。


「昇降口で先生と話してました。

 “科学部の活動を見学したい”って」


「なんでだよ!」

 俺は頭を抱えた。


「わかりません。でも……来るみたいです」


 その瞬間、昇降口のほうから声がした。


「白峰さん、いますか?」


 振り向くと、三枝が立っていた。

 昨日と同じ無表情。

 でも、目だけは妙にキラキラしている。


「……何しに来たんだよ」


「あなたたちの作業場、見たいです」


「なんで?」


「気になるからです」


「理由それだけ?」


「はい」


 黒江が小声で言った。


「この子、思ったより変わってるわね」


「お前も人のこと言えないだろ」


 三枝は淡々と続けた。


「昨日、あなたたちの話を聞いて……

 “普通科でソーラーカー”というのが、少し面白いと思いました」


「面白いって……」


「だから、見たいです。

 あなたたちがどこまでできるのか」


 挑発ではない。

 純粋な興味。

 それが逆に怖い。


「……わかったよ。来いよ」


「ありがとうございます」


 三枝は軽く頭を下げた。


 その瞬間、黒江が俺の耳元で囁いた。


「白峰くん、これ……勝負始まってるわよ」


「勝負って……まだ何も作ってないぞ」


「だからよ。

 “何もないところから始める”のが、うちの強みなんだから」


 雨宮が静かに言った。


「三枝さんは天才ですけど……

 僕らには僕らのやり方がありますよね」


「……まあな」


 倉庫へ向かう三人と一人。

 その背中を、廊下の生徒たちが見送っていた。


 科学部は、もう“ただの弱小部活”ではなくなっていた。


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