寒い夜の言い訳
掲載日:2026/02/27
修学旅行の夜。
布団は並んで敷かれている。
当然みたいに、君は僕の隣。
「やっぱ落ち着くわ」
そう言って、すぐ寝息を立てる。
僕は眠れない。
暗闇は、心を正直にするから。
寝返りを打った瞬間、腕が回された。
ぴたりと背中に体温。
息が止まる。
心臓がうるさい。
「……なに」
小さく呟いても、返事はない。
眠っている。
無意識。
でも、離れない。
君には彼女がいる。
僕は親友。
なのにどうして、こんな抱き方をするんだろう。
動けない。
離れたくもない。
朝。
目を覚ました君は、普通の顔で言う。
「なんか寒かった」
腕は、まだ僕の腰にある。
「……そう」
「お前あったけーな」
無邪気に笑う。
全部、寒さのせい。
全部、偶然。
でもその日から、距離が妙に近い。
廊下で肩が触れる。
昼休み、無意識に僕の袖を掴む。
彼女より、僕に触れる。
気づいてないのは、君だけだ。
「今日も隣な」
夜、布団を並べながら君が言う。
僕は少しだけ笑う。
「寒いもんね」
それ、言い訳。
君のも、僕のも。




