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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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金塊冒険者ー村の少年は冒険者になり一攫千金を目指すー

掲載日:2026/02/02

この世界で一番信用できるものは何か。


名誉? 友情? 努力?


――違う。


金だ。


俺、リオ・バルドは断言する。 金は裏切らない。裏切るのは、いつだって人間だ。


◆◆◆


目を覚ました瞬間、俺は現実を直視した。


天井は薄汚れた木板。布団は異様に軽く、腹は盛大に鳴っている。 枕元に置いた財布の中身は――銅貨三枚。


「……終わってるな」


昨日の夕飯はパン一個。 今日はそのパンすら怪しい。


俺はゆっくりと上体を起こし、壁に立てかけた剣を見る。 刃こぼれだらけの安物。重くて、正直まったく格好よくない。


だが、これしかない。


「はぁ……やるしかねえか」


金が欲しい。 ただそれだけだ。


世界を救う気はない。 魔王討伐の使命もない。 可愛いヒロインとの運命的な出会い? それは後回しだ。


今はとにかく――金。


この世界で金を一番手っ取り早く稼げる方法。 それが、冒険者だった。


命の危険? あるある。 ブラック? 超ブラック。


だが、成功すれば一攫千金。 つまり、俺向きだ。


冒険者ギルドの扉を開けた瞬間、独特の匂いが鼻を刺した。


酒、汗、鉄。


そして掲示板いっぱいに貼られた依頼書。


「……全部、金に見える」


討伐依頼、採取依頼、護衛依頼。 俺は内容より先に、報酬欄を見る。


銀貨、却下。 銅貨、論外。


「冒険者登録ですか?」


背後から声をかけられ、振り向く。 受付嬢の笑顔が眩しかった。


「は、はい! お願いします!」


声が裏返る。 チョロい? 自覚はある。


手続きを終え、木札を受け取る。 それが俺の冒険者証だった。


「今日から、冒険者ですね」


胸が、少しだけ高鳴った。 ――いや、正確には。 金袋が膨らむ未来を想像して、だ。


掲示板の前に立つ。 最初の依頼は慎重に選ぶべきだ。 命も大事だしな。


……と思っていた。


【洞窟調査/報酬:金貨一枚】


「……金貨?」


一瞬で理性が蒸発した。


「これだ!」


内容をろくに読まず、依頼書を引き剥がす。 周囲の冒険者が、微妙な目でこちらを見るが気にしない。


金貨一枚は正義だ。


洞窟の前で、俺は立ち止まった。


岩肌は湿り、入口からすでに薄暗い。 いかにも『初心者お断り』な雰囲気だ。


「……いや、冷静になる必要ある?」


金貨一枚だぞ。 銅貨三枚で生き延びてきた俺からすれば、革命レベルだ。


「危険=高報酬。つまり、チャンスだ」


自分に言い聞かせ、洞窟へ足を踏み入れた。


中は想像以上に暗い。 たいまつを灯すと、壁に影が揺れた。


「……嫌な音がするな」


ぬちゃ、という湿った音。


そして――


「出た!」


緑色の半透明な物体、スライム。 初心者の登竜門……のはずだった。


「おい、近い近い!」


思ったより速い。 しかも、数が多い。


「斬れない!?」


剣はぐにゃりとした感触を残すだけ。


――そうだ。 衝撃に弱い。


剣の腹で叩きつける。


「よし!」


どうにか撃退し、床に残った核を拾い上げる。 換金可能。


「……売れるよな」


恐怖も疲労も、金の前では誤差だ。


俺は、洞窟の奥へと視線を向けた。


――この場所が、俺の冒険者人生を決定づけるとも知らずに。


洞窟の奥は、思った以上に広かった。 天井は高く、たいまつの光が届かない場所は闇に沈んでいる。


その中央に、木箱がひとつ置かれていた。


「……宝箱?」


いや、違う。 雑に置かれた、いかにも『仮置き』の木箱だ。


「罠だな」


俺は即断した。 こういうのは九割罠。残り一割は即死級。


だが――


「金が入ってる可能性は、ゼロじゃない」


一歩、踏み出した瞬間だった。


「止まりなさいッ!!」


甲高い声が洞窟に響き、俺は思わず飛び退く。


壁際から飛び出してきたのは、革鎧に杖を持った少女だった。 目の下には、はっきりと隈がある。


「何考えてるんですか! その箱、どう見ても怪しいでしょう!」


「え、あ、いや……」


勢いがすごい。


「私はミリア! 魔法使いです!」 「今のは警告です! 褒めなくていいです!」


褒めてない。


ミリアは杖で床を叩いた。 淡い光が広がり、箱の周囲に赤い魔法線が浮かび上がる。


「爆発します」


「即死?」


「即死です」


「換金不可?」


「換金不可です!」


完璧なクソ罠だった。


「……でも」


俺が顎に手を当てると、ミリアが嫌な顔をする。


「中身が無事なら、爆発後に回収できる?」


「できません!!」 「そういう発想をする人が、だいたい死ぬんです!!」


ツッコミが速い。苦労してそうだ。


そのとき、洞窟の奥から足音がした。


複数。重い。


「盗賊です!」 「しかも、箱狙い!」


俺は箱を見て、ひとつの悪巧みを思いついた。


「なあミリア。この罠、起動条件は?」


「近づく、触る、衝撃を与える……」


「なるほど」


俺は笑った。


盗賊が箱に駆け寄り、勢いよく蹴りを入れる。


――次の瞬間。


轟音。 爆発。 洞窟が揺れ、盗賊たちは吹き飛ばされた。


俺とミリアは岩陰で伏せていた。


「……言いましたよね?」 「即死って」


「半分は生きてる」


「そこ褒めるところじゃありません!!」


爆心地には、木箱の破片と金貨が散らばっていた。


「生き残り金貨……」


「その呼び方やめてください!」


拾えるだけ拾い、俺たちは撤退を選ぶ――はずだった。


洞窟の奥から、低い唸り声が響く。


壁が、起き上がった。


「ゴーレム……!」


遺跡の警備装置。 つまり、さっきの箱は警報だったらしい。


「走るぞ!」


「だから無策は死ぬって言ったんです!!」


全力で逃げ、どうにか生きて街へ戻った。 命は助かり、金は微増。 実に冒険者らしい結果だ。


だが、ギルドは甘くなかった。


「遺跡由来の財物は、原則没収です」


職員の笑顔が、冷たい。


詰みかけた、そのとき。


俺は未鑑定の封印札を差し出した。


「未登録魔道具の発見者には、優先権がある」


沈黙。


「……今回は、特例で」


金は、俺たちのものになった。


その夜。 宿の部屋で、俺は封印札を見つめていた。


「売れば一生遊べる」 「使えば……もっと稼げる」


選択肢は二つ。


――いや。


「両方だろ」


封印札が割れ、俺たちは遺跡最深部へ引きずり込まれた。


守護獣。 絶望的な強敵。


だが――


最後に立っていたのは、俺たちだった。


財宝の山。 金。 命。


ミリアの全力ツッコミが飛ぶ。


「欲張りすぎなんですよ!!」


俺は笑う。


「でも、全部手に入れた」


欲張りは、やめない。


金も命も、あるなら全部欲しい。


それが、俺だから。

本日21時45分からシルバーバレットを連載しますなろう系ではかなり異質な作品だと思うのでぜひ見てください。⚠世界観はイギリス風なのでこの作品とはかなり違います。

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