第十五話〜途絶〜
……クソッ!
この人混みと混乱ではまともに追いかけることもできねえっ!
【アカネとミナトさんの現在地は?】
'''位置情報検索。源藤アカネ右後方80m地点、湊カエデ左後方100m地点。なおも後方へ移動中'''
とりあえず無事、そして逃げてはいるようだ。
だがひとまずはアカネのそばにいかなくちゃ、俺は胸にしまっていた携行銃を取り出しながら土手を駆け上がり、河原へ降りた。
しかし、ここも多くの人が逃げ惑っている。
人の波を掻き分け、転びそうになりながらも駆ける。
くそっ!邪魔だ!浴衣のすそをたくし上げながら、夢中で。
そんな中で浮かんだのは、家でのアカネとの会話。
「なんで下がTシャツジャージなのよ!半袖半ズボンってガキじゃあるまいし……」
「折角だしアキラも下駄履こうよ!浴衣にスニーカーなんて似合わないよ!」
不満そうに抗議してきたアカネだったが、離島で油断していたことを教訓に頑として譲らなかった。
「……役立ってほしくはなかったな」
'''敵戦闘員を確認、ロックオン'''
脳内に響いた突然の自動音声。
ロックオンたってこの人混みの中じゃ撃てやしない!
「ーーーー!!!」
敵の声が背後に迫っていた、そして響く数々の悲鳴。
皇国軍はなにやってんだ!
ーーいや、待て。
なんで奴らが急に来た。
いつもなら防御部隊が現れているはず。
確か学校事変の時もーー。
「おかあさぁん!おとぉさぁん!」
俺の意識をハッとさせたのは泣き叫ぶ子供の声。
走りながら目をやると1人立ち尽くす女の子。
振り返ると、こちら目がけて猛然と駆けてくる馬騎士1人。
クソッ!
【弾丸追尾はできんだろうな?!】
'''弾丸追尾システム正常。ロックオン完了'''
足を止めて女の子の元へ駆け寄る。
目前に迫った敵は暗がりの奥で不敵な笑みを浮かべていた。
ーーてめぇらが壊していいものなんて何一つここにありはしねえ!
女の子の前に立ち、銃を構え引き金を引く。
ーードンッ!
ーードンッ!
直後、槍をこちらへ突き出そうとしていた敵は馬から転げ落ち、動かなかった。
硝煙が、静かに月へ昇っていく。
※
大丈夫か?女の子に声をかけるも泣き叫んでいるばかりだ。
今の俺は一刻も早くアカネの無事を確かめ、ミナトさんとも合流しなければならない。
だがこの子を放っていくわけにもいかない。
敵はまだ逃げ惑う人々を襲い続けている。
ここへ来るのにもそう時間はかからないだろう。
仕方ねえ。
わんわん泣き叫ぶ女の子を抱き抱え、走る。
しばらくすると、誰かの名前を叫びながら逆走する人が見えた。
「おーい!アスカ!アスカー!」
男性と女性の2人組だ。
その人達の元へ。
「この子、違いますか?」
息を切らし、2人に女の子を見せるとそれぞれ顔が綻んで涙を浮かべた。
「アスカぁっ!!!」
女性が名前を呼んだので抱えた女の子を渡すと、女の子もママァー!と安堵と喜びを爆発させ、がっしりと抱きついた。
「ありがとうございます!ありがとう!本当になんとお礼を……」
俺の手を握り頭を下げる父親。
だが、今はその時間すらも惜しい。
「無事に会えてよかったです、ただ敵が迫っています。早くシェルターへ向かってください!」
「ありがとうございます、このお礼は改めて必ず!せめてお名前だけでも」
懇願するような父親の声、このままでは引き下がりそうにないので彼らへ背を向けて一言。
「戦闘用人型アンドロイド、源藤アキラです」
※
【アカネとミナトさんの現在地は?】
'''位置情報システム確認。2名とも2km圏内、地区シェルターへ向けて移動中'''
ふっと胸を撫で下ろす。
だが、地区シェルターへ向かうにも人混みの中、敵を銃で撃ちながら移動するのは困難だった。
弾丸追尾システムがあるとはいえ、非戦闘員を巻き込む可能性がある。
「ーーーー!!!」
「ーーーー!ーー!」
敵の声が近い、俺1人でどうにかできる人数ではない、が、しかし。
【アカネとミナトさんの現在地がシェルター方向からズレたり止まったりしたら教えてくれ】
'''了解しました。'''
太ももに巻きつけたレッグホルスターからミリタリーナイフを手に取る。
「ーー生きて返さねえよ」
敵の声がする方に駆け出した。
非戦闘員を襲っている敵の姿、そのうちの1人の馬騎士がこちらを見てニヤッと笑みを浮かべた。
翻り土手を駆け、思いっきり蹴り返し、飛ぶ。
目をかっぴらき、口をあんぐりとさせ、槍を構えるちょび髭のおっさん。
この距離なら巻き込む非戦闘員は、いない。
ナイフを持つ手を引き銃を構えた。
突き出された槍先を首を傾けて交わす。
ーードンッ!
眉間に1発。
敵が馬から落ちるのと同時に着地。
「ーーー!!!」
「ーーー!!」
銃声でこちらに気が付いた歩兵が向かってきた。
槍兵ではない、剣と盾を構えている。
人数は3名。
非戦闘員が間にいて銃は近接のみでしか使えない。
ミリタリーナイフを構え、向かって走る。
3人が迫り剣を構えたその瞬間、間をスライディングのように滑り背後へ周り、その勢いのまま態勢を反転させ、すかさず1人の首元へナイフを突き立てた。
そのままこちらへ向き直った残りの2人へ銃を構え、弾丸を撃ち込む。
敵戦闘員3名、排除。
ふぅっと、一息つき疑問が浮かぶ。
急に現れた敵は陣形を組んで襲ってはいない、各々がそれぞれ動き、危害を加えている。
一体なんのために……。
「ーー陽動か?」
考えがいたり呟くと、威勢のいい声が近く聞こえた。
そちらへ振り向き様に銃を構える。
「ーーー!!!」
何かを叫びながら迫る敵。
盾と剣を構えて突進してくる。
そして大きく振りかぶると、剣をその勢いのままーー。
「何言ってんのかわかんねぇつってんだろ!」
響く銃声、血の匂いが闇に漂う。
そして、虚しく音を立てるは地面に落ちる剣。
その切先が俺を捉えることはなかった。
※
「近接戦闘ぅッ!!!着け剣!!!突撃ィ!!!前へっーーー!!!」
前方から大東皇国語の命令が聞こえた。
「やっと、やっと来たか……」
直後、罪のない人々が襲われ、殺戮されている惨状を目の前にした彼らの声が荒々しくも頼もしくこだまする。
「てめぇらふざけんじゃねえ!!!」
「ぶっ殺したらぁ!!!どらぁ!!!」
つい先ほどまで人々の笑顔で溢れていたこの場所は、殺気と血の匂いで充満していた。
さて、軍が来たことだ、アカネと合流しなくては。
駆け出したその時だった。
'''源藤アカネ、湊カエデ、両名の位置情報を喪失。最終把握地点は地区シェルター付近の総合運動公園です'''
なっ!!!
位置情報喪失?!電波がまた遮断された?デバイスの電源が切れたのか?!それともーー。
いくら頭を振り切っても最悪の想定、敵兵に襲われるアカネの姿が拭い切れない。
全身を焦燥が貫いた。
ーーアカネ!無事でいてくれ!
滴る汗が、夜の闇に染みていく。
「面白かった!」
「次話以降も読みたい!」
「今後どうなっていくの?」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
⭐︎1〜5の中で皆様の評価をいただけたらとてもありがたいです!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです!
何卒よろしくお願いいたします!




