第十四話〜喧騒〜
カップルや友人同士、子供達でにぎやかな大通り。
道の脇にはずっと続く屋台の数々。
遠くで響く虫の鳴き声が心地いい。
陽はとっくに落ちているが、ここはまだ昼間のように明るかった。
「ねえアキラ!イカ焼き食べようよ!」
と、言いながらもその両手にはわたあめとたこ焼き。
アニメのお面を頭に被り、子供のように顔を輝かせはしゃいでいるのはアカネだ。
「どちらか食べてからじゃないと持てないだろ」
「はい!」
俺にわたあめを押し付けると、イカ焼きの屋台へ向かってしまった。
この場を一番楽しんでいるのはアカネだな。
まったく……と思わず苦笑してしまう。
「楽しそうで何よりですね」
隣を歩くミナトさん、なんだか子供を見守る母親のようになっていないか?
「ああ、本当に……」
ちらっと隣を見ると、ヨーヨーと金魚の袋、頭にはアカネとお揃いのお面を被ったミナトさん。
あなたも十分楽しんでいらっしゃる、訂正、一番は2人いる。
「私も負けてられません!」
と、金魚袋を俺に押し付けるとアカネの後を追って行ってしまった。
また訂正、子供が2人いた。
おっと、そろそろ花火の時間かな。
2つの夏の影をそっと追いかけた。
※
花火を見るにはどこがいいかな、と思い人の流れに沿っていくと先ほどとは比べ物にならないほどごった返していた。
道幅はかなり広く、すぐ横には土手がある。
そこを埋め尽くしている人、人、人。
「アキラー!」
人の波に呑まれそうになっているアカネ。
「アキラさーん!」
と、ミナトさん。
まったく、仕方がない。
「はぐれるぞ」
アカネとミナトさんの手を掴んで俺が先導することにした。
「あら、ありがとうございます」
静かに微笑むミナトさん。
「ちょっ!子供じゃないんだから大丈夫よ」
少し慌てるアカネ。
さっき人の波に呑まれそうになっていたのはアカネだろ、と思ったが手を離さないのを見るに嫌ではないらしい。
「なあ、あそこはどうだ」
と俺が顔を向けたのはすぐ隣の土手。
来る途中の橋からも様子が見えたが、河原は比較的人も少なく少し先までいけば景色もひらけそうだ。
2人ともそれを見ていたのか、了承してくれた。
3人で手を繋ぎ土手を降り、他愛もない会話をして歩く。
そよ風が吹き去ると、川のせせらぎが雑踏を遠ざけてくれる。
ーーヒュゥゥゥゥゥドンッ……パッ!
と、しばらく歩き道がひらけたタイミングで夜空に大輪が咲いた。
「すっごい綺麗……」
花火に照らされるアカネの横顔は、うっとりとしており心を奪われているようだった。
「たまやー!……って、みなさんは言わないのですか?!」
1人だけ言ったのが恥ずかしかったのか、照れているミナトさん。
「本当に綺麗だ、ありがとな、アカネ」
「今日来て良かったです!アカネさん、ありがとうございます!」
そうだ、今日はアカネが俺達を連れ出してくれた。
離島に行った時もそうだった。
すると
「私も!みんなで来られて本当に良かった!」
夜空に輝く大輪に負けない花が、咲いていた。
【非常呼集!非常呼集!戦闘要員は今すぐ駅前へ!護衛対象者がいる場合はシェルターへ誘導してください!非戦闘員の皆さんは係員の誘導に従ってシェルターへ避難してください!繰り返し……】
※
突然の警報アナウンスにあたりが騒然となる。
夏を彩っていた人々の笑い声は戸惑いの声になり、その波は混乱を生み出していた。
「……アキラ」
「アキラさん……」
こちらを見つめる不安そうな2人の目。
こういう時俺はいつもこう言うしかない。
「大丈夫!すぐ終わるから!いこう」
すぐさま手を引いて土手を上がり、道へ出る。
すると脇道では早速係員が拡声器を使って誘導をしており、人々は少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「これからアキラも行っちゃうの?」
「大丈夫だ、シェルターまで送る」
「アキラさん、くれぐれも無理だけは……」
「ありがとう、心配しないで」
2人が落ち着くよう静かに、穏やかに言葉を返す。
だが。
アカネとミナトさんと楽しんでいた花火大会。
その平穏でささやかな幸せをぶち壊しにきた奴ら。
ーー許さねえ。
「アカネ、すまないが命令を」
「……うん……わかった」
俺の右手に重なったアカネの手にギュッと力が入った。
このお願いだけは何度経験しても慣れるものではないな。
そう、アカネは俺の護衛対象者。
その権利として行使できる命令。
「源藤アキラ、攻撃許可。……それから!絶対に無事で戻ってきて」
'''射撃許可命令確認。自動攻撃システム起動。携行武器確認……'''
アカネの顔からいつもの明るさは消え、沈痛な面持ちだった。
「……おいおいなんだ?」
「……おい、進めよ」
「止まんなって!おい、押すなよ!」
「……ね、ねえ、なんか変じゃない?」
「ちょっと!あれ!」
あたりの人達から漏れ始めた困惑の声と、焦燥。
なんだ、何が起きているんだ?
周囲の人が顔を向けている方向に目をやると。
「……嘘だろ」
そう言うしかなかった。
この道の先にある橋。
その橋の上には馬のような生き物に乗った、武装した兵士達。
あれは皇国軍ではない、つまり。
「……敵だ」
思わず呟いた次の瞬間、橋の上を駆け出した敵集団は道にいる人々へ。
「やばいやばい」
「ちょっと!おい!逃げろ!逃げろ!」
「人がきられっ……!やばいって!」
困惑の渦に巻き込まれ、人の波が俺らを呑み込む。
「……アカネッ!ミナトさんッ!」
「……アキラッ!カエデちゃんッ!」
「……アカネさんッ!アキラさんッ!」
伸ばした手から離れゆく2人はやがて視界から消えていった。
「面白かった!」
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