第十一話〜夢〜
「っく……っはあ……っはあ……」
「……あらぁ。人間、にしてはしぶといと思ったのだけど……人間、ではないのかしら?」
「……クソッ」
腹部からは血……循環油が流れている。
どうやら損傷したようだ。
硝煙と油の匂いがあたりを包んでいた。
「銃?ってやつよねぇ、それ。んー、情報が足りなさすぎるわ。あなた達、どうやって防御魔法を無効化しているの?」
敵はどうしてか大東皇国の言語を解しているようだった。
「……知るか」
急に襲いやがっ……アカネ!?
アカネは無事だっただろうか?
辺りを見回してもアカネの姿はなく、近くに人の気配もしない。
みんな無事に逃げた、そう信じるしかない。
ふぅっと一息。
……あれ?俺、さっきまでーー。
冷静になるとなんだか頭が混乱してきた。
いや、今はこの状況に集中しろ!
やることをやるんだ!
今は目の前のこいつをなんとかしないとーー。
'''プログラムの損傷を確認、本機体の機密保持のため60秒以内にシステムを強制ダウンします'''
ーーは?強制ダウン?今そんなことしたら。
「んー?どうしたの?動けなくなっちゃったのかしら?」
クソッ、手も足も思うように動かねえ!
敵は不気味な笑みを浮かべてこちらへ歩みを進める。
動け!クソッ!
'''あと30秒で強制ダウンします。記憶等固有データクラウドバックアップ完了。自動制御感知システムオン。これより攻撃行動はできません'''
ク……ソッ…。
敵の手が俺の頭に翳された、その時。
※
「……クソォッ!」
「んぎゃあっ!」
「きゃあっ!」
「……あ?ん?ここは……?」
「こ、ここは?じゃないわよ!海!あんたまた倒れて眠ってたんだから!」
まったくー、いきなり叫んで飛び起きんな!
アカネが俺の肩を平手打ちするがまだよく分からない。
今のは一体、なんだったんだ?
ーーはっ!とする。
「アカネ!ミナトさん!大丈夫か?無事か?何もなかったか?」
そうだ、俺はさっき奴に会った、それで奴に手を翳されて……。
2人は心配そうな表情を浮かべ、あんた頭打ったんじゃない?やはり人と同じく疲労が蓄積するのではないでしょうか、と声をかけてくる。
どうやら本当に何もなかったらしい。
しかし、今のは一体なんだったんだ?
夢か?にしては妙に生々しくリアルだった。
まるで起きたことを追体験させられたかのような……。
ただごとではない、俺にそう教えるかのようにカタカタと震える手。
掌を開くとそこには
(サプライズプレゼント)
と書き込まれていた。
「……おいおい」
夢にしちゃ、できすぎじゃねえの?
※
ひとまず俺が心配だということで宿に戻ることになった。
アカネが言うに俺は1時間ほどうんともすんとも言わず、ただ眠っていたらしい。
あれだけ生々しい悪夢を見て魘されもしなかったのは不思議というか、アンドロイドっぽいというか。
俺の頭に奴が手を翳してきたところで記憶は終わっている。
俺を眠らせるために何かしたなら、アカネとミナトさんになんらかの目的があったと考えるのが妥当だ。
だが、見たところ何ともないし聞いても気を失ったり誰かを見た、ということもないようだ。
何だったんだ一体。
それに……夢の中に出てきた敵……奴、だったような。
突然現れた奴に動転して気絶、奴の悪夢を見た、と。
いや、そんな単純な話しではない!
掌に残されたメッセージ、どういうことなんだ?
考えれば考えるほど、深まる謎、思考の迷路。
うーんと迷宮入りしそうな出来事に考え込んでいると
「ねえ!アキラ!カエデちゃん!今から温泉行こ!」
と、アカネの呑気な声。
いや、今それどころではないんだが……。
片目をうっすらあけてみると、声の主が腕を組んで仁王立ちしていた。
すごく自慢げに。
そして、いいですね!いきましょう!と準備を始めるミナトさん。
まあ、分からないものを考え込んでも仕方がない。
「そうだな、行くか!」
窓から夕陽が差し込み、部屋にも影を落としていた。
※
宿から歩いて5分のところにある公営浴場へ。
ここは湧き出た温泉が有名らしく、島外観光客に人気らしい。
人気、とは言っても観光客らしき人は見かけない。
脱衣所はガランとしていた。
ラッキーなことに利用者も俺達だけのようだ。
「アキラー、一緒にお風呂入るのいつぶりだっけー?」
とニマニマするアカネ。
今日は一段とテンションが高いな。
「さあな……。小6……の10月19日だったか」
「……えっ、いや日付まで覚えてんの?マジ?」
うげっ!ちょっと引くわ、しかも早口だったし!とささっと距離を置かれる。
いや聞いたのはお前だろうが。
「アキラさん……。その、気になっていたんですが……」
ん?なにが?と顔を見ると恐る恐る、といった状態のミナトさん。
「ア……アカネさんに彼氏とか……できても……」
笑っているんだか震えているんだか、ビクビクとしているミナトさん。
なんでミナトさんも引いてるの?
てか何で今その質問?……まあ、いいか。
それにしても。
「考えたこともなかったな」
アカネの彼氏、か。
ミシッ。
ん?何だ?今の音は。
「あ……」
「あらー」
「……んなっ!」
みんなの視線を見て俺も合わせると、手に持っていた携帯デバイスにヒビが入っていた。
「アキラあんた……」
「いや、違う!えっ?なんで?」
力を入れた覚えもつもりもない。
「それ、お母さんにちゃんと自分で言いなさいよね……」
あ、そうだった、これ、買ってもらったんだ……ローンで。
ミナトさんはごめんなさい!どうしましょう!とあわあわしている。
あ、でも画面にヒビが入っただけで使えるな。
画面が光ったのを見て安堵するミナトさん。
ミナトさんのせいではないから大丈夫っと頭をそっと撫でて落ち着かせる。
「はあ、あんたね」
こちらへスタスタとやってくるアカネ。
「そういうのは!誰にでもしていいことじゃないの!」
そう言うと、ほらさっさと脱いでいくわよっ!とタオルをバシンと背中へ。
いや、おっさんかお前は。
「あの……そろそろ……」
ん?あっ!すまんすまん、ずっと手を頭に置いてしまっていたようだ。
子供の頃、アカネにもこうしていたな。
あー、だからちょっと寂しかったのか?あいつ。
かわ……っと、体冷えないうちに行かないと。
「アカネー!背中流してやるよ!」
「はあ?!いいわよ別に!」
「2人だけずるいですー!私も流してください!」
「しかたねえ、じゃあみんなで流しっこだな」
「なによそれ、あんたが言い出したんだから私とカエデちゃんを流しなさいよ!」
こんなひと時がずっと続いてほしい、そんな願いを天に瞬く星達に届くことを祈って。
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