第四話
広い道のところどころに、雪が残っている。木造の洋風建築の屋根から、溶けかかった雪が滑り落ちた。
そわそわと郵便受けの前で待っていた振袖姿の少女は、郵便配達員に「ありがとうございます!」と大きな声でお礼を言った。あとを追うように、白い息が流れていった。
「これはお父様宛て。こっちはお母様宛て……それからこれは私宛て」
少女はそのまま、待ちきれないとばかりに年賀状を分類しはじめる。寒そうだから家に入ればいいのにと、見ている私の方が寒さに震えてしまう。
少女の手がふと止まって、ぱっと表情が明るくなった。
「お姉様からだわ!」
少女がその場でくるくると踊るように一回転すると、着物の袖がふわりと持ち上がる。嬉しそうに年賀状を胸に当てている様子を見ると、きっとその年賀状が待ち遠しかったのだろう。
「お姉様、どうしておられるかしら。お正月のお着物はお召しになられたのかしら。きっと素敵でしょうね」
少女はうっとりと独り言を言うと、食い入るようにハガキを見つめた。そうして次の瞬間、ふふっと幸せそうに笑い、再び年賀状を胸に当てた。
「うさぎをもふもふしているなんて、お姉様、なんてかわいらしいのかしら!」
きっとこの少女にとって、お姉様のすることの大半は素敵に見えるんだろうな、と私は微笑ましくなる。あばたもえくぼというやつだ。
少女はゆっくりと家に戻りながら、噛みしめるように小さく年賀状を読み上げた。
「私の後ろをうれしそうについてくるところ、ちょっとあなたに似ているなと思うことがあるわ。年が明けて、学校がはじまったら、また会えるのが楽しみです。……私もです! お姉様! きゃー!」
少女が顔を覆って再び一回転したところで、ノイズが入って見られなくなった。
私はほっこりしながら、ひんやりした通信機器のしぼりを微調整する。
これも、私の記憶でないことは確かだ。
今回は、私よりかなり歳上の人の、若い頃の記憶なんじゃないだろうか。映画でしか見たことのないような建物が並んでいた。
「私の記憶を見つけなくちゃ」
滑り止めのギザギザがついたしぼりを調整して、私はすぐに手袋をした。ここはオーロラが出るほど寒い。手袋なしでは、あっという間にしもやけになってしまう。
突然通信機器から派手な爆発音が聞こえてきて、私は思わず尻もちをついた。
「な、なに? どこかが攻撃を受けてるの?」
通信機器のノイズの向こうで、誰かが叫んでいる。




