第二話
「僕、宇宙で迎える、初めての新年なんですよ!」
「そんなに変わらないけどね」
次に通信機器の画面に映ったのも、若い男女だった。先ほど神社にいた男女よりは、もう少し年齢が上だろうか。宇宙服を着ている。
映像をよく見ると、窓の外に黒々とした宇宙が広がっていた。宇宙船なのか、宇宙ステーションなのか、とにかくそういう類の施設のようだ。
私は宇宙に行ったことがないから、これも私の記憶ではない。いったいどういうこと? と私が首を傾げていると、機械音声によるアナウンスが入った。
「新年とともに、重力制御の解除を行います」
「え? なんで?」
「新年を迎えるときに、ジャンプするんだよ」
「3! 2! 1!」
人々のカウントダウンがはじまる中、男性は戸惑っている。
「……A HAPPY NEW YEAR!」
クラッカーの鳴る音がしたのとほぼ同時に、画面の中の人々の身体が宙に浮かび上がり、さまざまな方向に飛んでいく。無重力状態だ。
「うわっ! わああ!」
先ほどの男性は無重力状態に慣れないのか、脚をバタバタさせている。身体のバランスをどうとればいいのかわからないのだろう。
「大丈夫、落ち着いて」
女性が男性の手を取って、床に着地させる。ストローから出てきたジュースが、無重力状態で水玉になった。シャボン玉のようだ。
女性は大きく口を開けると、そのジュースをぱくっと口に含んでみせた。
「やってみ」
「えー……」
宙に浮かんだジュースを、男性がこわごわと口に含もうとする。うまくいかない。
「まあ、そのうち慣れるよ」
女性が肩をすくめて笑いかけると、男性はパウチに刺さったストローからジュースを飲んだ。
「A HAPPY NEW YEAR。今年もよろしく」
「こちらこそ」
新年を迎えたささやかなパーティがはじまったところで、通信機器の画面にノイズが走った。
「ええー、また?」
これも私の記憶ではないけれど、面白そうだからちょっと見てみたかった。
無重力状態でのパーティなんて、どんなふうになるのか想像もつかない。チキンのソースも宙に漂うんだろうか。
私は通信機器をそっとなでて「しっかり!」と応援したが、寒空の下、長時間置いてあった機械はひんやりとしていた。動いているのが不思議なくらいだ。
お腹がぐうと鳴った。もこもこに着膨れたコートのポケットを探ると、チョコレートバーがある。取り出してかじりつくと、ナッツとキャラメルとチョコレートの味が、口の中に広がった。
「通信が混線してるのかな。さっきのも、私の記憶じゃなかった」
しばらく宇宙での新年パーティの続きが見られないかなと帯域を微調整したけれど、無理だった。画面に映っているのは砂嵐のようなノイズだ。
底冷えする寒さに震え上がりながら、私はチョコレートバーをむしゃむしゃと頬張った。キャラメルの部分が、冷えて硬くなっている。
空を見上げると、大きなオーロラがゆっくりと動いていた。緑色とピンク色のグラデーションが綺麗だ。
私はチョコレートバーを食べ終えると、再び自分の記憶を探しはじめた。




