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AIミナはリクの夢を見るのか  ― 時間を観測するカフェ ―  作者: Morichu
AIは微睡みの街で笑うのか ― フィレンツェ、光と影の工房 ―

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31/35

第31話 フィレンツェ初飛行

フィレンツェ編も、いよいよ翼が動き始めました。

リクとミナの “ポンコツ × 天才工房” の組み合わせは、

いつも少し笑えて、少し焦げた香りが混ざります。


今回は、ダ・ヴィンチ工房の熱気と風に巻き込まれながら、

二人が「夢の設計図」に触れていく物語です。

どうぞ、ゆっくりお楽しみください。


フィレンツェ郊外の丘。

薄い霧が朝日に溶け、街の尖塔がゆっくりと浮かび上がる。


リクは、木製の巨大な翼を前にため息をついた。


「……こういうの、図面で見るより迫力あるな。」


『構造解析完了。安定率19%です。』


「……低いな。」


『低いです。』


リクは思わず笑った。

いつものことだ。初回のテストは、たいていこんなもの。


「まあ、飛ばすのは今日じゃない。試運転だ。」


『あなたの“試運転”は、過去7回中5回が本番化しています。』


「縁起でもない統計出すなよ……。」


木の影から、レオナルドが現れた。

手にはスケッチブック、顔は朝陽みたいに明るい。


「友よ、この翼は“空の記憶”を掴むためのものだ。

 試す価値はある。」


リクは笑って帽子を押さえた。


「整備士としては全力でお手伝いします。

 飛ばすかどうかは……風と相談で。」


「賢い判断だな。」

レオナルドは楽しげに頷いた。


ミナが翼に近づき、内部の布張りと骨組みをスキャンする。


『素材の経年劣化、想定内。

 しかし補強部にあなたの修理跡が残っています。』


「ああ……その……勢い余って釘を2本ぐらい……。」


『“ぐらい”という単位、観測不能です。』


「細かいことはいいの。味だよ味。」


レオナルドが笑う。


「味……面白いな。

 機械に個性が宿るということか?」


「はい。俺の師匠がよく言ってました。

 “完成度より、魂の入り方が大事”って。」


『あなたの魂が入ると、たいてい焦げます。』


「それ褒めてないだろ絶対。」


丘の上に風が通り、翼がかすかに鳴った。

草の香りと朝の湿気が混じり合う。


レオナルドが静かに言う。


「わたしは……空を飛びたい。

 だが、どこかで恐れてもいる。

 “もし落ちたらどうなるのか”とな。」


リクはしばらく黙って、翼を撫でた。


「落ちるかもしれない。

 でも、“飛ぼうとした事実”は残ります。

 俺たちの時代では、

 そういう挑戦の記録が未来を作ったんです。」


ミナがそっと補足する。


『創造とは、観測の別名です。

 あなたの夢は、未来でも観測され続けています。』


レオナルドは目を見開いた。


「未来……か。

 ならば、わたしも記録を残そう。

 空の観測者として。」


リクは軽く手を叩いた。


「よし、では試運転の準備をしますか。」


『手順を開始します。

 翼角度調整、風向き解析――』


そこで突如、翼がバサッと開いた。


「うお!? まだ触ってねえぞ!」


『自動展開が誤作動しました。

 あなたの工具が引っかかっています。』


「え、俺のせい!?」


『はい。責任比率87%です。』


レオナルドが大笑いした。


「いいぞいいぞ! 生命を感じるぞ、この翼は!」


「いや生命感じんといてください!?」


丘の風が強まり、翼はさらに大きく揺れた。


『リク、風速上昇。推力テストにちょうど良い状態です。』


「……え、まさか今日飛ぶ流れ?」


『可能性49%。』


「絶妙に怖い数字だな!」


レオナルドが真剣な表情で言う。


「友よ。もし今日飛ばずとも、構わない。

 ただ……この翼に触れてくれて感謝している。」


リクは照れたように笑った。


「こちらこそ。夢の続きに混ぜてもらえるなんて光栄です。」


ミナが静かに結論を出す。


『“飛行の祈り”が観測されました。

 旅の条件が整いつつあります。』


リクは息をのんだ。


「……ってことは、そろそろ“次”が近いな。」


『はい。だが、飛行装置の記録はまだ未完です。

 もう少しだけ、この時代にいる必要があります。』


リクは空を見上げ、風に帽子を押さえた。


「よし。じゃあ次は本番前の調整だな。」


フィレンツェの風が、三人の間をやわらかく吹き抜けた。


――午後三時、観測は続く。



観測記録 No.31

観測者:リクとミナ

転移先:15世紀末・フィレンツェ郊外

観測対象:レオナルドの飛行装置(試運転)

状態:観測継続・風の祈り検出


読んでくださり、ありがとうございます。

リクとミナの旅は、まだまだフィレンツェで続きます。

翼は揺れて、夢は香って、焦げ率は……上昇傾向です。


もし面白かったら、

ブックマーク・★評価・いいね などいただけると嬉しいです。

とても励みになります。


次回、いよいよ「飛ぶかもしれない」予感。

ぜひまたお付き合いください。


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