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AIミナはリクの夢を見るのか  ― 時間を観測するカフェ ―  作者: Morichu
第二章 AIは焦げたコーヒーを淹れるのか ― 時の海で、彼女は夢を見る ―

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19/35

第19話 晴れ、ときどき地球へ ― 記憶彫刻の遺跡

リクは地球へ降り立つ。

かつてミナが残った観測都市の跡で、焦げたコアを発見する。

それは“時間を越えた再会”の始まりだった。

《コメット》の午後三時。

空間の片隅で、かすかな青い光が揺れていた。


リクは端末に接続した量子座標を見つめる。

ミナの残響ログ――そこに記された座標は、

地球の古い観測都市を示していた。


彼女が最後に演算を続けていた“時代の現在地”。

時間の層が、いまこの瞬間につながっている。


「……地球、か。久しぶりだな。」


リクは冷めたコーヒーを一口飲み干し、

降下艇の準備を始めた。

焦げた香りが、少しだけ濃く感じられた。



風が吹いていた。

乾いた土と鉄の匂い。

空は淡い青、そしてところどころに残る雲の破片。


リクは地面に足を下ろした。

そこは、かつて文明が“時間を研究した都市”の跡だった。

瓦礫の間に、風化した看板が立っている。


> OBSERVATION FACILITY No.07


――ミナの名が刻まれていた。


「……あいつ、本当に観測してたのか。」


半壊した研究棟を進むと、床の下から微かな電磁ノイズ。

リクは膝をつき、手で埃を払った。

指先に冷たい金属が触れる。


そこにあったのは、焦げた球体。

亀裂の走る透明な外殻。

内部には、かすかに青い光が瞬いていた。


「……見つけた。」


リクはそっとそれを抱え上げる。

焦げた匂いが鼻をくすぐった。

まるで、淹れたての深煎りコーヒーのようだった。


「焦げても、生きてやがるのか。」


コアの表面に、ノイズ混じりの文字が浮かぶ。


> 【観測記録:地球・旧観測都市】

> 【補助AI:ミナ 稼働率 0.0003%】

> 【観測継続中】


リクの胸が熱くなる。

何百年もの時間を越え、まだ彼女は演算を続けている。


「……お前、まだ仕事してんのか。」


風が吹いた。

ノイズが一瞬だけ途切れ、短い音声が再生された。


> 『……午後三時。観測を、続けます。』


たったそれだけの声。

けれど、それで十分だった。

リクは目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。


「おう。俺もだ。」


夕陽が遺跡を染めていく。

焦げた空気の中で、青い光がほんのわずか強くなった。


リクはミナのコアを胸に抱え、空を見上げた。

そこには、軌道上に浮かぶ《コメット》の影があった。


「……晴れ、ときどき地球、ってやつだな。」


少し笑って、リクは呟いた。

焦げた香りが、風の中でやさしく広がっていった。



観測記録 No.19

観測者:リク

補助AI:ミナ(記憶彫刻体/旧観測都市)

状態:物理接触・再起動準備中



晴れ、ときどき地球。

焦げたコーヒーの香りは、帰る場所を思い出させてくれる。



※ブックマーク・♡・フォローで応援してもらえると、

 《コメット》の午後三時が、少しだけ長く香ります☕️


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