夢
5度目の投稿です。
「ねえ、君たちの夢ってなに?」
隣にいた奴がいきなり話しかけてきた。
「こんな場所で夢もなにもないだろ」
ぶっきらぼうに言った。
だってそうじゃないか
こんなどこかもわからない暗いところに押し込められて
しかも、明日には皆埋められる。
俺たちはそのために生まれた。
きくところによると、俺たちを人様のために役立てるらしい。クソ喰らえ。
俺は自分の名前を知らない。皆そうだろう。
埋めることがわかってる奴らに名前をつける人はいないらしかった。
だからこそ、さっきの奴は名前を聞かずに夢を訊いたのだろう。
「えぇー夢ないのー? じゃあ君は?」
別の奴にきいていた。
「僕は、もっと背が高くなりたい」
「そうだね、私たち背小さいもんねー」
「あたしはケーキ屋さんとかになりたかったな」
「おぉ〜、かわいらしい夢ね。そういう夢好きよ」
俺たちみたいなやつがケーキ屋さん? 馬鹿な夢にも程がある。
「俺たちに、できるワケないだろうが……」
「……」
「もうーこらこら。そういうこと言わないの。おぉよしよし。ごめんねぇ、あのお兄ちゃんも悪気があった分けじゃないの」
「じゃあお前の夢はなんなんだよ」
「私の夢? うーん……私の夢は、明日どんなことがあっても皆が笑顔でいられることかな」
衝撃的だった。こいつは、明日に起こることを受け入れているのだ。
「だから、そのために今、夢を聞いてるの。明日一人ぼっちになっても幸せな記憶をもっていられるように、ね」
どうして……どうしてこいつはこんなに強いんだ……
俺でさえ、明日を受け入れることがどうしてもできないというのに……。
「ねえ、教えてよ。君の夢」
「俺の……夢」
「そう、君の夢。教えて?」
考えてみた。今までの俺には、明日への絶望しか頭になかった。
「俺の夢は…………明日が来ないことだ」
やっぱりこうなってしまった
やっぱり、俺から絶望を消すことはできなかった。
「そっか……。じゃあ、私たちの夢をわけてあげる」
「えっ」
「きっと、私たちの夢を聞いたら、それだけで絶望を消すことができるよ」
目の前のこいつは、根拠の無い自信に満ちていた。
だが、ただ絶望に打ちひしがれているよりは良いと思った。
その後、他の奴らの夢を聞いた。
気付いたら朝になっていた。
そしてとうとう牢屋の扉が開かれた。
「じゃあみんな、元気でね」
俺に夢を聞いてきたあいつが最初に牢から出された。
そして――
ギュイイン ガッ。
頭をグッと抑えられ、一瞬で埋められた。
今はもうあいつの頭頂部しか見えない。
「じゃあな、夢をありがとう。名前も知らないお前」
そして皆一人づつ消えて俺だけ残った。
俺が最後だった。
でも、怖くなかった。
最後は一瞬だった。
目の前が暗闇になったが俺は怖くなかった。
だって
あいつらがくれた希望が
俺を照らしているから。
そして
全てが終わり
俺たちを埋めた奴は言った
「ネジ止め完了」
これは、電車に乗ってたときに、ネジ、というのが浮かびました。
もっと、青春っぽい感じにしようと思ったのですが……。
きっとこれは眠いせいだ、と自分を無理に慰めました。
まあ今回も例のごとく酷いので、こうすると青春っぽい雰囲気が、とかあったらいってください。
読んでくれた人、ありがとうございました。
またいつか会いましょう。