力なき者の光
【みゆきの小さな光】
みゆき
みゆきは、争いの絶えない世界に生きていた。人々は生まれながらに持つ「力」の大きさを競い合い、強い者が弱い者を支配するのが当然だとされていた。みゆきには、そうした力は一切なかった。華やかな魔法も、大地を揺るがすような武術も、彼女はただの、どこにでもいるような少女だった。
しかし、みゆきには誰にも負けないものがあった。それは、心の温かさだった。
荒んだ大地に咲く小さな花を見つければ、そっと水をやる。怪我をした動物を見つければ、手当てをしてやる。人々の間に憎しみが渦巻くような場所でも、みゆきは分け隔てなく、困っている人にそっと手を差し伸べた。
「役立たず」
強い力を持つ者たちは、みゆきを嘲笑った。力こそが全ての世界で、彼女のような存在は無意味だと。それでも、みゆきは自分の信じる道を歩み続けた。彼女にとって、人の痛みを無視することなどできなかったのだ。
ある日、大きな戦いが起こった。強者たちがぶつかり合い、街は焼け野原となり、多くの人々が傷つき倒れた。力を持たない人々は、恐怖に震え、絶望に打ちひしがれていた。
そんな中、みゆきは一人、瓦礫の中を歩き回っていた。力のある者たちは更なる力を求めて争い続けている。けれど、みゆきの目に映るのは、助けを求める小さな声、震える肩、乾いた唇だった。
彼女は、自分の持てる全てを捧げた。傷ついた人に水を運び、寒さに震える人に自分の羽織をかけた。力のある者たちが顧みない、小さな命の叫びに耳を傾けた。
最初は訝しんでいた人々も、みゆきの懸命な姿を見るうちに、心を動かされていった。力を持たない人々は、彼女に倣って互いを助け合うようになった。分け与えることの温かさ、支え合うことの強さを、彼らはみゆきから教わったのだ。
やがて、戦いは終わりを迎えた。勝者も敗者も、深い傷跡を抱えていた。そんな中、みゆきの周りには、かつて嘲笑していた者たちも集まってきた。彼らは、力だけでは癒せない心の傷を抱え、静かにみゆきの言葉に耳を傾けた。
みゆきは、力について語らなかった。ただ、共に悲しみ、共に喜び、共に生きるということの大切さを、その温かい眼差しと優しい言葉で伝えた。
力を持たないみゆきの周りには、いつしか小さな光が灯っていた。それは、彼女の優しさと思いやりが人々の心に宿した、希望の光だった。この世界で本当に大切なのは、人を傷つける力ではなく、人を愛し、支え合う心なのだと、みゆきは静かに示していた。彼女の存在こそが、紛れもない「真の強さ」だったのだ。
みゆき