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炎魔殿の幽閉者

 僕は、こたつが大好き。

 こたつがないと、生きていけない。


 目の前に広がるのは、異世界。剣と魔法の王国。


 でも、人々の顔は、とても疲れ切っていた。冬の寒さをしのぐ手段は焚き火や厚着だけで、家の中でも凍えるような生活を送っている。


「この世界って、もしかして、こたつがないの?」

「こたつ? 何それおいしいの?」


 ――絶望だった。


 効率的な暖房器具も、ぬくもりを共有する文化もない。

 人々は寒さに耐えるのが当たり前で、ぬくぬくとした幸せを知らなかった。


「僕はもう、こんな世界にはいられない!」


 だけど、ここで僕は決意した。


「こたつを作らなくちゃ!」


 温もりを、安らぎを、家族団らんのひとときを……僕がこの世界に広めてみせる!


 こたつのない世界で、僕はまず木を切り、布を集め、シンプルなこたつを作った。


「ここに炭火を入れて……布をかけて……よし、できた!」


 試しに人々に入ってもらうと……


「うおっ!? 足元が……温かい……!」

「ここから出たくなくなる……これは魔法か!?」


 こたつはすぐに評判になり、人々は冬の寒さを忘れるほどリラックスしていった。

 しかし、噂が広まると危険視され、とうとう追放された。


「これは、人間を堕落させる悪魔の道具だ!」

「こんなものが広まったら、誰も働かなくなる!」

「辺境で暖炉にでもあたっておとなしくしてろ! お前は危険だ、危険なんだ!」


 だけど、追放の地へ向かう旅の途中、僕は見つけた。

この世界にも、人に知られぬまま眠る、伝説の炎の石があることを。


「レベルアップ、おめでとうございます!」


 謎の声が虚空に響いた。炎の石を組み込むと、炭火よりも電気よりも、安全で効率的な魔法のこたつが完成して、僕のヌクモリティはどんどん〈レベルアップ〉した。


 こうして、僕は、炎魔殿の幽閉者(こたつキーパー)となったのだ。


 炎魔殿(こたつ)から出られなくなったので、これからも僕のこたつ生活は続く。



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