異世界人は努力が足りないんだよ!
僕は、会社が大好きだ。
会社がないと、生きていけない。
目の前に広がるのは、異世界。
剣と魔法の王国。
でも、人々は怠けている。
日の出と共に働き、日没と共に寝る。
中世かよ。生産性低すぎだよ。
「この世界って、もしかして、愛社精神がないの?」
「愛社精神? 何それ、おいしいの?」
絶望だった。
定時退社? 有給休暇? 労働組合?
そんなものが当たり前の世界なんて、僕には耐えられない!
「僕はもう、こんなところにはいられない!」
だけど、ここで僕は決意した。
「理想の会社を作らなくちゃ!」
長時間労働、成果主義、ノルマ制を導入し、組織を強化。
無駄を排除し、利益を最大化する経営を実施した。
「ああ……限界まで働く社員、圧倒的な売上、最高だ……」
試しに人々を雇ってみると――
「残業代? そんなもの出るわけないだろ!」
「休日? 甘えるな、仕事は人生だ!」
どんどん業績は上がった。しかし、噂が広がると――
「こんな会社、悪魔の巣窟に違いない!」
「お前は違法だ、違法なんだ!」
僕の会社は危険視され、とうとう追放されてしまった。
だけど、追放の地へ向かう旅の途中、僕は偶然見つけた。
この世界の海には、人に知られぬまま眠り続ける、魔法の貝〈ヤリガイ〉があったのだ。
「上場、おめでとうございます!」
謎の声が、虚空に響いた。
ヤリガイを搾取するたびに、魔法の力で、私のグループ企業だけがどんどん〈上場〉していった。
こうして、王国最強のアットホームな職場になった、ってわけ。
新たな社員を求めて、これからも我が社の挑戦は続く。