やっぱりゴブリンが好き!
あたしは、ゴブリンが大好き。
ゴブリンがいないと、生きていけない。
目の前に広がるのは、異世界。剣と魔法の王国。
でも、人々の顔は、とても疲れ切っていた。どの冒険者も魔王やドラゴンにばかり目を向けて、初心者向けのモンスターなんて見向きもしない。
「この世界って、もしかして、ゴブリンがいないの?」
「ゴブリン? 昔はいたが、駆除され尽くしたよ。」
絶望だった。
序盤の経験値稼ぎも、ゴブリンの匠の知恵から生まれたトラップも、ホブゴブリンすらいない。
人々はゴブリンの魅力を知らないまま、ただ「弱いモンスター」として消し去ってしまった。
「あたしはもう、こんなところにはいられない!」
だけど、ここであたしは決意した。
「ゴブリンを復活させなくちゃ!」
ゴブリンの悪知恵を、器用さを、集団戦法を……あたしがこの世界に広めてみせる!
ゴブリンのいない世界で、あたしはまず古代の洞窟を探索した。
「ここに……ゴブリンの遺伝子が!」
試しにゴブリンを召喚してみると……
「グオッ? ……お、俺たち、生きていたのか?」
「うおおっ、俺たちの時代が来たぞ!」
ゴブリンたちは徐々に知恵をつけ、社会を築き始めた。
しかし、噂が広まると危険視され、とうとう追放された。
「ゴブリンを蘇らせるとは……異端者め!」
「辺境でおとなしくしてろ。お前は危険だ、危険なんだ!」
だけど、追放の地へ向かう旅の途中、あたしは見つけた。
この世界にも、人に知られぬまま眠る、伝説のゴブリン王国があることを。
「レベルアップ、おめでとうございます!」
謎の声が虚空に響いた。ゴブリン王と契約すると、あたしだけがどんどん〈レベルアップ〉した。
こうして、あたしたちゴブリン王国と、アンチゴブリン派の勢力は、五分五分となったのだ。
アンチゴブリン派殲滅のその日まで、これからもあたしの冒険は続く。