第七十九話 三人衆の策謀（前編）
京の静寂が漂う中、元亀元年（1570年）の初夏に差し掛かると、三人衆の影が静かに動き始めた。
信長軍の主力が畿内から撤収したという報せが、彼らを動かす引き金となった。
摂津の池田城。城内の静かな朝、城主の池田勝正は不安げな表情を浮かべていた。空気が重く、窓から吹き込む風が不吉な予感をもたらす。
「何かが起こりそうだ......」
池田勝正が呟いたその瞬間、城内に響く足音が徐々に近づいてくる。
池田知正と荒木村重が、その不協和音を奏でながら勝正に近づき、重い沈黙の中で勝正への策を巡らせた。
「我らに力を貸すのだ」
知正と村重の言葉は冷徹な響きを持ち、その冷酷さが勝正を追い詰めた。
三人衆の影響が城内に広がる中、静かな城壁が改築される音が響き渡っていた。
城を包む静けさの中、その不協和音が京の街にも届く。京の通りは普段通りの活気を見せつつも、影には漂う不安が見え隠れしていた。
「我らの力を結集し、信長を討ち果たさねば。我々の打倒のため、総力を尽くすのだ」
三人衆の声が京の闇に響き渡り、兵たちが続々と集結していく。その目には疑念の光と野望の炎が交錯している。
7月21日、三人衆軍は摂津中嶋に進出し、野田・福島へと移動。野田城、福島城の築城を開始し、堀の掘り直しや壁の設置が進められる。夜を徹した城の改築が要塞の強みをますます固めていた。
松永父子は信貴山城で戦闘準備を整え、三人衆軍の河内侵攻に備えていた。一方で、信長の目にはその動きに対する警戒心が宿り、その鋭い目が情勢を見極めている。
8月17日、三人衆軍の攻撃が始まった。
古橋城を狙ったその攻撃は激烈を極め、城兵はほぼ全滅に追い込まれた。町を包む炎の色が夕焼けに染まる情景を見つめつつ、信長の心に冷徹な覚悟が刻まれていく。
「この戦いが決して引けぬ運命の場となる。全軍、出撃せよ」
信長の命令が響く中、彼の目には冷徹な光が宿っていた。8月20日、信長は3千騎を率いて岐阜城を出立。冷たい風が彼の決意をさらに固める。
信長の軍勢が次第に増え、多くの部隊が横山城、長光寺、本能寺へと集結した。信長の見据える広大な風景には、自らの野望が静かに広がっていた。
「宗則、この戦局を見極め、我が軍の勝利を導くためにはお前の知恵が必要だ」
信長の言葉が宗則の心に深く響いた。宗則は烏の巻物を手に取り、新たな覚悟を固めながら、信長に深々と頭を下げる。
「もちろんです、信長様。陰陽術を駆使し、敵の動向を見極めます」
信長の決意のもとで進む軍勢はますます膨れ上がっていく。その間、天王寺に布陣した三人衆軍は信長軍に対抗するための防備を強固に整えていた。
「この戦いが、私たちの未来を決する。必ず勝利を収めるのだ」
信長の冷徹な指示が兵たちに次々と伝えられ、信長軍と三人衆軍の間にはまさに一触即発の緊張状態が漂っていた。
宗則は冷静に儀式を行い、その力を信長に報告する。彼の背中の烏のあざが疼き、彼に新たな力を与える予感が広がっていた。
「信長様、敵の動向を見極めました。三人衆軍は北東から進行しようとしています」
信長はその報告に冷静に頷き、鋭い目を前線に向けた。
「全軍、直ちに配置につけ。敵の動きを封じ、我が軍の力で圧倒せよ」
信長の命令を受け、兵たちが一斉に動き出し、まるで鋼鉄の壁の如く強固な防備を整える。
一方で、三人衆軍の指導者たちも、信長軍に対する警戒を強めていた。
「この戦いが我々の未来を決する。信長の野望を打ち砕かねばならない」
夜が更けて戦場の空気が一段と重たくなる。信長の鋭い目が敵の動きを見極める中、戦局の動きが徐々に開始された。
戦場の空気が次第に湿り気を帯び、重々しい緊張感が漂う。信長軍と三人衆軍がついに激突する。剣戟の音が響き渡り、戦場が熱を帯びる。
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