第六十八話 和睦の果てに
京の空に雨が降りしきる中、信長は義昭との対話を頭の中で反芻していた。
「和睦を模索することがこの国の平穏を保つ方法です」
と義昭が申し出たが、信長の心には冷徹な戦略があった。
信長の陣中では兵士たちがひと時の休息を取っていたが、緊張が漂い続けている。そんな中、信長は宗則を呼び寄せた。
「宗則、此度の功績は大義であった。金ヶ崎の退き口において、お前が情報を伝えたことにより、我らは命拾いをした。褒美として陰陽助に昇進させることを決めた」
宗則は静かに頷き、信長の指示に従う決意を新たにした。彼の心中には再び揺れ動く感情が渦巻いていた。
「信長様の望む平穏を実現することが、義昭様への忠誠にもつながるのかもしれない」
宗則は心に誓い、朝廷へと向かう決意を固めた。薄暗い廊下を抜け、古びた門をくぐると、朝廷の高官たちが待ち構えていた。
「信長様の使者として参上しました。宗則でございます」
朝廷の重鎮たちは互いに顔を見合わせながら、宗則を見つめた。彼らの表情には疑念と警戒が滲んでいた。
「宗則殿、我々は信長公の意図を測りかねます。和睦の求めか、侵攻の準備か、それとも別の策謀か」
宗則の瞳には冷静な光が宿っていた。
「信長様はこの国の平和を願っております。そのための和睦の道を探ることが、我々の使命です」
宗則の言葉に、朝廷の重鎮たちはしばし沈黙した。
その間、宗則の心の中では様々な策が巡った。信長と義昭の対立をどう解消し、この国を守る力となるべきか。
その折、本願寺顕如が宗則に接触してきた。顕如は宗則の力を認め、協力を求めた。
「宗則殿、我々の力を結集し、信長の野望を阻止せねばならぬ。あなたの力が必要です」
宗則の心にさらに複雑な感情が渦巻く。信長、義昭、本願寺の間で自らの立場を守りつつ動く必要があった。
「顕如殿、私の目標はあくまでこの国の安寧です。私も微力を力を尽くしましょう」
顕如との会談を終えた宗則は、再び朝廷へと向かった。
天皇専属の陰陽師になるための昇進が囁かれる中、宗則の心には決意が宿っていた。
皇室を守るために、彼の智謀と陰陽術が試される時が来た。
朝廷に戻ると、高官たちが宗則を迎えた。彼らの表情には希望と期待が浮かんでいた。
「陰陽助としての働きを認め、さらなる昇進を願いたい。我々公家勢力と手を結び、共にこの国の平和を守るために力を尽くしてほしい」
宗則は静かに頷き、信念に従って行動を誓った。
「この国を守ることが私の使命です」
宗則が再び信長の元へ戻り、その報告を行った。信長は冷静に、その報告を聞き入れた。
「宗則、その働きを認める。次なる任務にも全力を尽くせ」
宗則は深く一礼し、その使命を胸に抱きながら、信長の期待に応えるために動き続ける決意を固めた。
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