表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/168

第六十六話 運命の外交

 若狭攻めが本格的に始まった。織田信長は3万の大軍を率い戦地へと向かう。

 義昭の思惑を一歩先んじるため、信長はその眼光を鋭く光らせていた。


「朝倉勢力を制圧する。ここで勝利を収め、若狭・越前を切り取るのだ」


 信長の言葉に、兵たちは緊張感を漂わせた。


 一方、義昭の屋敷では、宗則が近江へと訪れるために準備を整えていた。義昭は宗則に告げる。


「宗則、この戦いの行方を左右するのは、浅井長政殿の動向だ。近江に向かい、彼の動きを確かめてくれ」


 宗則は静かに頷き、内に秘めた決意を胸に出発した。信長の命令を受けつつも、義昭の期待に応えようとする宗則の心は揺れていた。


「信長様の期待に応えるためにも…だが、義昭様への忠誠も忘れぬ」


 宗則はそう心に誓い、馬を走らせた。


 近江、小谷城。城内には冷ややかな空気が漂っていた。宗則が城門を越えると、信長の妹お市が迎えに来た。


「宗則殿、お久しぶりです。この地に来ていただけるとは思いませんでした」


 お市は微笑むが、その瞳には何かが隠されているように感じられた。


「お市様、近江の状況を確認に参りました。これほど早く戦が始まるとは…」


 宗則はお市の瞳を見つめ、微かな違和感を感じ取った。


「最近、長政様の様子がおかしいのです。何か嫌なものを感じます」


 お市の言葉は宗則の胸に突き刺さった。浅井長政が心を揺さぶっている場面が浮かんだ。

 宗則は内心で警鐘を鳴らした。


「お市様、この地に不穏な動きがあるのであれば、絶対に見過ごしてはなりません」


 宗則は深い思いを胸に、お市の案内を受けつつ、長政の元へ進む。

 廊下を進む中で、義昭からの伝言を伝えるための準備を心中で整えていた。

 義昭への忠誠心と信長への忠義が宗則の心で複雑に絡み合っていた。


 長政の前に進んだ宗則は、深呼吸しながら静かに語り掛ける。


「浅井殿、義昭公からの伝言がございます。包囲網の形成に助力をと。」


 長政は宗則の目をじっと見つめ、鋭い感情を内に秘めた声で問いかけた。


「宗則殿、あなたは義昭公と信長殿、どちらに忠義を尽くしているのですか?」


 宗則の心が一瞬揺れる。しかし、表情にはそれを出さずに答える。


「私は天下の安寧を第一に考えております。乱世を平定することが私の使命です」


 義昭の決意が宗則を通して伝えられた。長政の目が一瞬光る。


「わかりました。義昭公の要請とあらば、こちらの状況もあるが、それでも義昭公の意向に従う。ただ宗則殿。両雄並び立たず。あなたもどちらかを選ばなければ裏切り者の誹りを免れませんよ」


 宗則はその言葉に安堵を感じるが、心の中では深い葛藤に包まれる。信長への忠義、そして義昭への忠誠が交錯する中、心の揺れが止まらない。


「ありがとうございます、浅井殿。義昭公も感謝することかと」


 宗則は深く礼をし、その場を後にした。そして、くのいちの綾瀬に指示を出し、お市からの陣中見舞いとして「袋の両端を縛った小豆の袋」を信長陣営に届けさせる。


任務を終えて、宗則は険しい表情のまま帰路につく。心にはまだ葛藤が渦巻いていたが、自らの使命を全うすべく行動を続ける。





数ある作品の中から今話も閲覧してくださり、ありがとうございました。


気が向きましたらブックマークやイイネをお願いします。

また気に入ってくださいましたらこの後書きの下部にある⭐︎5の高評価を宜しくお願い致します。


執筆のモチベーションが大いに高まります!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ