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第六十四話 五カ条と退き口

 義昭と信長の対立は激化の一途を辿っていた。

 信長からの五カ条の条書を受け取ってからの義昭は、その内容に激しく動揺し、大いに荒れていた。


「あの条書は我々の意向を全く無視している。これでは、この国の平穏が乱されるではないか」


 義昭は、宗則との対話を経て、公家や宗教勢力を糾合し、信長の策略に対抗する決意を新たにしていた。


「義昭様、信長様の狙いは明確です。彼の強引な策略に対抗するためには、我々の結束が欠かせません。公家衆や宗教勢力とも力を合わせ、信長の野望を阻止しなければなりません」


 宗則は、五カ条の条書に対する義昭の反発を耳にしながら、その策を見極めるために慎重に言葉を選び、義昭に答えた。

 義昭は奥歯を噛み締め、宗則の言葉に深く頷いた。彼の心には、将軍としての誇りと信長に対する怒りが深く刻まれていた。


 そのとき、二条晴良が義昭に向かって冷静にささやいた。


「義昭様、信長殿の強引な手法に従うことは、我々の威信を傷つけることになります。公家としての立場を守るためには、宗教勢力との連携が必要です」


 義昭は晴良の言葉に耳を傾けながら、公家勢力と共に信長への対策を練り始めた。

 義昭はさらに強固な決意を胸に抱き、公家衆や宗教勢力と結束を強めることを誓った。


 その頃、信長は岐阜城にて光秀と対話していた。信長は冷静な表情を浮かべながら、光秀に静かに語りかけた。


「義昭がこの条書を承認することで、我らの計画は成功する。しかし、あの男の人脈が厄介であることも明白だ。奴を抑え、我らの思惑通りに従わせる策が必要だ」


 光秀は深く頷きながら答えた。


「義昭様がこの条書を承認すれば、信長様の計画は着実に進むでしょう。しかし、公家内での動向にも警戒が必要です」


 信長は冷徹な微笑みを浮かべた。


「その通りだ。彼らを巧妙に操り、我が天下を万全にするために動くのだ」


 義昭は信長の強引さに反発しながらも、公家勢力との連携を強化し、信長との対話の場を設けた。


「信長よ、この国を治めるための方法は、その強さだけでなく、公家や宗教勢力との調和も必要だ。我々が結束することで平穏を取り戻すことが必ずできる!」


 信長の目は冷たく光り、義昭の言葉を無言で聞き入った。


 その間、浅井長政と朝倉義景が信長との間で策動を始めていた。信長の強引な手法に不満を抱く彼らは、信長包囲網の形成を目論んでいた。


 朝倉義景は冷静な目を浅井長政に向けて言う。


「信長の強引さに我々が立ち向かうためには、結束が必要じゃ。そのために、我々は信長を罠にかけようと思う」


 長政は頷き、


「信長を追い詰めるため、金ヶ崎で退き口を作り、彼を罠にかけるのです」


 と答えた。


 義昭は信長との対話に臨む中で、浅井・朝倉との連携を模索し、それによって信長を揺さぶり包囲網を成立させる方策を探り始めた。


続く

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