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第五十話 五行儀式の実践

宗則は、土御門家にて、陰陽五行説と風水の基礎を学んだ。

そして、いよいよ、五行の力を体感するための儀式「五行儀式」に挑むことになる。



「宗則殿、いよいよ、五行儀式を始めよう」



土御門有春は、静かに言った。

彼の声は、老齢を感じさせない、力強さがあった。



宗則は、有春の前に跪き、深々と頭を下げた。



「はっ、師匠、わたくし、準備は出来ております」



「よろしい」



有春は、宗則を、奥座敷へと案内した。

奥座敷は、静寂に包まれ、厳かな雰囲気が漂っていた。

部屋の中央には、白木の祭壇が設けられ、その上には、五色の布が掛けられていた。

祭壇の周りには、五つの香炉が置かれ、それぞれに、異なる香りが焚かれていた。

白檀、沈香、丁子、龍脳、そして、麝香。

五つの香りが、複雑に混ざり合い、宗則の心を、落ち着かせると同時に、緊張感を与えた。



「五行儀式とは、陰陽五行の五つの元素、木、火、土、金、水、それぞれの力を体感し、自らの能力を高める儀式じゃ」



有春は、宗則に、五行儀式について説明した。



「それぞれの儀式には、試練が伴う。その試練を乗り越えることで、お前は、真の陰陽師に近づくことができるじゃろう」



「私、必ず、試練を乗り越え、真の陰陽師になります!」



宗則は、有春の言葉を聞き、決意を新たにした。



「まずは、『木の儀式』から始めよう」



有春は、祭壇に近づき、五色の布を取り払った。

祭壇の上には、木の枝が彫られた、美しい彫刻が置かれていた。

その彫刻は、精巧な作りで、まるで、今にも動き出しそうな、生命力を感じさせた。



「宗則殿、目を閉じ、木の気を心静かに感じ取るのです」



有脩は、宗則に、指示を出した。



宗則は、深呼吸をしながら目を閉じ、意識を集中させた。

静寂の中、かすかに聞こえる風の音。

木の葉が擦れ合う音が、まるで囁き声のように彼の耳に届く。

深い森の香りが鼻腔を満たし、土の湿った匂いが足元から漂ってくる。

宗則の心は次第に木々と一体となり、彼の体に木の『気』が流れ込んでくるのを感じる。

温かいエネルギーが体中を巡り、まるで大地に根を張る大樹になったかのような力強さがこみ上げてくる。



(これが…木の気…か…)



宗則は、その力に圧倒されそうになりながらも、目を閉じたまま、じっと耐えた。

彼の体の中を、温かいエネルギーが駆け巡り、今まで感じたことのない、不思議な感覚に包まれる。

それは、まるで、大地に根を張り、天に向かって枝を伸ばす、大樹の力強さだった。



(この力を使えば…私は…きっと…)



宗則は、その力に、大きな可能性を感じた。



その時、彼の背中のあざが、淡く光り始めた。

光は次第に強まり、宗則の意識は、闇に引きずり込まれるような感覚に襲われた。

木々のざわめきが、轟轟と耳をつんざき、彼の視界は、緑色の光で満たされる。

制御できないほどの膨大なエネルギーが、彼の体を駆け巡り、宗則は、苦痛に顔を歪めた。



「うっ…力が…強すぎる…!」



宗則は、木の力を制御しようと、必死に抵抗する。

しかし、力は、彼の意志に反して、暴走していく。

彼の身体は、木の枝のように、しなやかに曲がり、指先は、鋭い爪のように、伸びていく。



「宗則、心を静めるのじゃ! お前の心が、力を制御するのだ!」



白雲斎の厳しい声が、宗則の耳に届いた。



「しかし…師匠…この力…は…」



宗則は、苦しみながら、答えた。



「落ち着け、宗則。お前の心を見つめよ。お前の守りたいものを思い出せ!」



八咫烏の声が、宗則の心の奥底に響き渡った。



宗則は、深呼吸をし、心を落ち着かせようとした。

彼は、白雲斎の教えを思い出した。



(陰陽の力、それは、己の心を映し出す鏡。心を静め、澄ませ、そして、力を一つに…!)



宗則は、再び、自らの内なる力に意識を集中させた。

徐々に、光の勢いは弱まり、彼の心は、静けさを取り戻した。

宗則は、ゆっくりと目を開けた。

彼の瞳は、深い緑色に輝いていた。



「よくやった、宗則」



有脩は、宗則に、静かに言った。



「お前は、木の気を制御することに成功した」



宗則は、安堵の息を吐いた。

彼は、最初の試練を、乗り越えることができたのだ。



「この力を、感じてください、宗則殿」



有春は、宗則に、木の彫刻を、手渡した。



宗則は、彫刻を受け取ると、両手で、しっかりと握りしめた。

木の温かさが、彼の掌に伝わってくる。

それは、まるで、大地の力強さ、そして、生命の温かさだった。



「木の気は、成長と生命力の象徴です。その力を正しく使うことで、あなたは、人々を癒し、そして、導くことができるでしょう」



有春は、宗則に、そう言った。



宗則は、有春の言葉に、深く頷いた。

彼は、木の力を、決して、悪用してはならないと、心に誓った。



(続く)


数ある作品の中から今話も閲覧してくださり、ありがとうございました。


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