第四十七話 白雲斎の推薦と領地開発の方針
近江国、坂本。 永禄十二年(1569年)初夏。
琵琶湖畔に位置するこの地は、かつて延暦寺の門前町として栄えたが、度重なる戦乱により、今は、寂れた漁村と化していた。
宗則は、信長からこの坂本を領地として与えられ、新たな人生を歩み始めていた。
「この坂本を、必ずや、活気あふれる豊かな里にする」
宗則は、静かに、しかし力強く、誓った。 信長様への忠義、春蘭様への想い、そして、領民たちへの責任。 様々な思いが、宗則の胸の中で、渦巻いていた。
宗則は、兄たち、そして白雲斎と共に、領内を視察していた。 坂本は、琵琶湖の水運を利用した交易で栄えていたが、戦乱の影響で、商船は減り、港は寂れていた。 人々は、戦乱の恐怖に怯え、希望を失っていた。
「この地を、発展させるためには、どうすれば良いのか?」
宗則は、家臣たちに問いかけた。
義隆が、山の木々を見渡しながら言った。
「この山には、良質な木材が豊富にございます。これを利用すれば、きっと、この地は、再び栄えるでしょう」
頼明も、川の近くで、頷いた。
「この川は、魚が豊富です。漁業を活性化させることも、考えられます」
宗則は、二人の意見に、耳を傾けた。
「確かに、木材と漁業は、この地の重要な資源です。しかし、それだけでは、十分ではありません」
宗則は、静かに言った。
「我々は、この地の利を活かし、新たな産業を興し、人々の暮らしを豊かにする必要がある」
その時、白雲斎が口を開いた。
「宗則、わしが紹介したい者たちがいる。この坂本を豊かにするために、力を貸してくれるであろう」
白雲斎は、宗則に、三人の男たちを紹介した。
「この者は、久兵衛。農業に通じた男じゃ。長年、土と向き合ってきた経験は、坂本の発展に役立つであろう」
「わしゃ久兵衛といいやす。長年、土と向き合ってきた、ただの百姓でごぜぇますが、どうか、お役に立ててくだされ」
久兵衛は、腰を曲げ、深々と頭を下げた。 彼の顔には、深い皺が刻まれ、長年の苦労が伺えた。 しかし、その目は、力強く、大地の恵みを知る者の、静かな自信に満ちていた。
「こちらは、佐吉。腕利きの鍛冶師じゃ。良い鉄と、熱い火があれば、どんなものでも作り出せる、と豪語しておる」
佐吉は、豪快に笑った。 彼は、筋骨隆々とした体格で、鍛冶で鍛え上げられた腕は、まるで鉄のように硬かった。 その目は、炎のように燃えており、熱い情熱を感じさせた。
「そして、この男は、小次郎。火薬の扱いに長けた、謎多き男じゃ」
小次郎は、無言で、宗則に頭を下げた。 彼は、小柄で、痩せた体格の男だった。 顔色は青白く、どこか病弱そうな印象を与えた。 しかし、彼の目は、鋭く、底知れぬ力を感じさせた。
宗則は、彼らを、温かく迎え入れた。
「ようこそ、坂本へ。わしは、東雲宗則。この地の領主である」
「これから、共に、この坂本を、豊かな里にしていきましょう」
宗則は、三人に、自らの決意を伝えた。
翌日、宗則は、白雲斎の推薦を受けた三人の男たちと共に、改めて領内を視察した。
翌日、宗則は、兄たち、白雲斎、そして、三人の新たな家臣と共に、領内を視察した。
坂本は、琵琶湖の水運を利用した交易で栄えていたが、戦乱の影響で、商船は減り、港は寂れていた。
人々は、戦乱の恐怖に怯え、希望を失っていた。
「この地を、発展させるためには、どうすれば良いのか?」
宗則は、家臣たちに問いかけた。
義隆が、山の木々を見渡しながら言った。
「この山には、良質な木材が豊富にございます。これを利用すれば、きっと、この地は、再び栄えるでしょう」
頼明も、川の近くで、頷いた。
「この川は、魚が豊富です。漁業を活性化させることも、考えられます」
宗則は、二人の意見に、耳を傾けた。
「確かに、木材と漁業は、この地の重要な資源です。しかし、それだけでは、十分ではありません」
宗則は、静かに言った。
「我々は、この地の利を活かし、新たな産業を興し、人々の暮らしを豊かにする必要がある」
「宗則様、わしは、昔、山の中で、不思議な土を見つけましてな。その土は、黒くて、ふかふかで、まるで、腐った葉っぱが、積み重なったような匂いがしたんですわ。試しに、その土を、畑に撒いてみたら、作物が、驚くほどよく育ちましてな。もしかしたら、この坂本の山にも、同じような土があるかもしれませぬ。一度、探してみては、いかがでございましょうか?」
久兵衛は、訥々と、しかし、熱心に、説明した。
「なるほど…森の豊かな土を、農地に利用する…か…」
宗則は、久兵衛の提案に、深く頷いた。
「それは、試してみる価値があるでしょう。久兵衛殿、その土を、わしに、見せていただけませぬか?」
「へへっ、喜んで!」
久兵衛は、宗則の言葉に、満面の笑みを浮かべた。
宗則は、久兵衛と共に、森へと向かった。
森の中は、ひんやりとした空気に包まれ、木漏れ日が、地面に、美しい模様を描いていた。
久兵衛は、宗則を、森の奥深くへと案内した。
「ここです、宗則様」
久兵衛は、地面を指さした。
そこには、黒く、湿った土が、広がっていた。
土からは、独特の、発酵したような匂いが漂っていた。
宗則は、土を手に取り、その感触を確かめた。
「これは、確かに、良い土ですな」
宗則は、感嘆の声を上げた。
「この土を使えば、きっと、素晴らしい作物が、できるでしょう」
宗則は、久兵衛に、この土を、農地に運ぶように指示した。
「わたくしは、この土を、『腐葉土』と名付けましょう」
宗則は、その土に、新たな名前を与えた。
(この腐葉土が、坂本を、そして、近江を、豊かにする!)
宗則は、心の中で、そう誓った。
(続く)
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