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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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56 ビエナブルクの海戦 終戦

無双するローゼンシア騎士団



 ヴェローニカは狙った矢は外れたが、とりあえずリオンハルトを守った者を沈めることができて不敵な笑いを浮かべている。


 その時、ブワリと噴き出すような魔力の圧が辺りを包んだ。

リオンハルトからとてつもない量の魔力による威圧がユラユラと立ち昇り周りに竜巻のような流れを作っている。

その周囲には時折りバチバチと小さな稲妻が走り、リオンハルトの一つに束ねていた長い髪が解けて風に靡いていた。

 そしてリオンハルトの紫紺色の怒気を孕んだ昏い眼差しが空へ向けられた瞬間、今まで晴れていた夏の夕焼け空がリオンハルトの上空だけ黒く厚い雲が湧き上がり大気を震わせ凄まじい閃光が轟音とともに二つ続けてヴェローニカの乗る旗艦のマストに落ちた。

 まるでリオンハルトの怒りをそのまま現したような激しい稲妻が船体を貫き、大きな揺れとともに大きな艦が傾き海中に沈んでいく。

たくさんの兵が海へと投げ出され、ヴェローニカは思わずマストにしがみつく。

 沈みゆく艦を囲っていた別の戦列艦から皇太女と海に落ちた兵を助けるため救助艇が降ろされたが、救助活動をする間もなく、今度はその艦目掛けて金色のたてがみをいからせた聖獣レグルスが巨大なデビルウェールの尾鰭を咥えて振り回し、その勢いのまま叩きつけた。

 粉々に打ち砕かれた戦列艦は救助艇を残して大きな水柱を上げ沈んでいった。

 マルティオス騎士団の旗艦の上、こちらも憤怒の表情を浮かべたジェラールが大剣を両手で高々と掲げ呪文を唱えている。

 ジェラールの頭上にキラキラとした氷の粒が現れ、次々と集まり固まって巨大な氷の柱となり夕陽を受けて赤く輝く。

そのマストの半分もあろうかという鋭く尖った氷柱はジェラールが剣を振り下ろすと同時に放たれ、砲弾のように敵艦に真上から突き刺さり甲板に大きな亀裂が走る。

 そしてラディアスが真っ赤に燃える巨大な炎の竜を両手剣(ツヴァイヘンダー)より放ち、カイルがミリアムが、マルティオス騎士団の各々がディアーナの名を叫んでまだ無傷の敵艦に乗り移り、鬼気迫る勢いで敵兵を倒していく。

 その轟音をたて次々と落ちる青白い稲妻と、降り注ぐ巨大な氷の柱と、襲いかかる金色の獣と、冥王の使いの悪鬼のような騎士達の様は、まるでドニエーブル帝国の神話に出てくる「ラグ・ナロック(世界の終末の戦い)」のようで、ドニエーブル兵達は、いや味方であるローゼンシアの騎士達も震え上がった。

 のちにマルティオス騎士団は「最強」ではなく「最恐」の異名で呼ばれることとなる。


 元々が海賊等の寄せ集めの艦隊だったドニエーブル帝国海軍は、味方の惨状を見てまだ無事だったいくつかの艦は他を見捨てて慌てて逃げていった。

 そして夕闇迫る頃、水平線を黒々と覆い尽くすほどの大艦隊だったドニエーブル帝国海軍の艦は数える程度になっていた。

 どうにか無事にフリゲート艦のひとつに救助されたヴェローニカは、動揺を隠し切れずに信じられないモノを見る目つきでリオンハルトと新たに加わった敵兵達を見る。


(一体何なんだ⁈ あの者どもは…。

あんなガキくさい小娘を一人沈めただけだろう。

何をそこまで狂ったように向かってくる?)


 誠に不本意だがここまでの状態で戦いを続けられると思うほどヴェローニカは無能ではない。


(ここまでか…。

いずれ機を見て必ず復讐してやる!)


ギリギリとリオンハルトを睨みつけヴェローニカは命令を下す。


「全軍撤退する! 急げ!」


 その時、海面が白く輝き艦が大きく揺れた。

海面が盛り上がり飛沫を上げ浮上してきた巨大な光の泡はだんだんと光が収縮していき何かの形を作った。

 その場にいた全員がこの異変に動きを止め、目の前で起こった信じられない光景に驚愕する。


「何だ…アレは…⁈」


 小型のガレオン船ほどの大きさの銀色に輝く蛇のような魔獣が大きな翼を広げて海面より体を突き出していた。

 鋭い爪のある前足に二本の角、その瞳はエメラルドグリーンに輝いている。

そしてその背には真っ白な衣装を着た銀髪の少女を乗せていた。


「ま、まさかあれは大海蛇(シーサーペント)か⁈

えっ…ディ、ディアーナっ⁈」


リオンハルトが驚きの声を上げて目を見開く。

その隣でいつもの大きさに戻ったレグルスが嬉しそうに呟いた。


「アルファルドか。

おおっ、やはりディーちゃんは無事だったのだな。」


 アルファルドの背に乗り戦場に戻ったディアーナは目の前のフリゲート艦の上にリオンハルトを矢で狙った敵の総指揮官らしい女を見つけた。

 その女は驚きながらも憎々しげにディアーナとアルファルドを睨みつけている。

ディアーナは怒りを抑え切れずアルファルドの背から飛び降りその女の近くの艦上に立つ。


「死ななかったのか。忌々しい小娘が!」


 剣を抜きながら黒い魔力を体に纏わせるヴェローニカに対峙するディアーナからも白い魔力が滲み出る。


「リオン兄様を、この国を脅やかす者を私は赦さないっ!」


 衝突する黒と白の魔力の中、ディアーナは身体強化魔法をかけ固めた拳をヴェローニカに叩きつけた。

吹き飛ばされたヴェローニカの体は艦上より海へ水飛沫を上げ落ちた。

 あっという間の出来事に、


「皇太女様ーっ!」


 と、騒ぐ敵艦を飛び退いたディアーナは、ネットランチャーの網に引き上げられずぶ濡れで咽せている女を乗せたボロボロのフリゲート艦数隻が全速力で遠ざかって行くのを呆然と見ていた。


 背後から「ウォーッ!!」という歓声と船端を叩き、武器を打ち鳴らす大きな音が聞こえた。


「ディアーナ!」


「お嬢っ!」


 リオンハルトが、ジェラールが、ラディアスにカイル、ミリアム、マルティオス騎士団と第四騎士団の皆が傷つきボロボロになりながらも歓喜に満ちた顔で叫んでいる。

ディアーナもアルファルドの頭上に乗り大きく手を振る。


「我々の勝利だ!!」


拳を振り上げ大声で宣言するリオンハルトに応えるようにより一層の歓声が上がった。


 そんな中、アルファルドが思いついたように言った。


「そうだディア、お前、治癒魔法使ってみろ。」


「えっ?」


「出来るぞ。なんせお前は海神の巫女だからな。

皆の傷を癒してやれ。」


「私が?そんな事できるの…?

うん、やってみる。」


 アルファルドの頭上に立ったままディアーナは指を組み合わせて祈る。

 その瞬間、ブワッとディアーナから白い光が溢れてキラキラと降り注ぐ。

 光が消えポカンとする人々の驚きの声が上がった。


「傷が、治ってる…⁈」


「切り落とされた腕が、腕が元通りにっ⁈」


「潰された目が見える…!」


わなわなと震える人達の誰かが呟く。


「奇跡だ…。」


「聖女様…伝説の聖女様だ…!!」


 大騒ぎする人々を見てディアーナも呆然と呟く。


「アルフ、できちゃったよ…。」


「だろう?」


 得意そうなアルファルドの頭上から旗艦の兄の元へと降り立ったディアーナをリオンハルトが駆け寄りきつく抱きしめる。


「良かった。ディアーナ…。」


「リオン兄様…。」


 そしてリオンハルトに子供のように抱き上げられたディアーナは皆の歓声の中、同じように大声で笑った。

 水平線から昇ってきた青く大きな月が静かに夕闇の海を照らしていた。







最後は女の戦い

怒りのディアーナ

第一章完結まであと少し。


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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