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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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55 ビエナブルクの海戦 下

ディアーナの奇跡



 ユラユラ ユラユラと青緑色の柔らかな光が揺れている。

海の底のような静かで暖かい場所でディアーナはゆっくりと目蓋を開いた。

 まだぼんやりとする意識の中で、ディアーナは辺りに視線を巡らす。

何か、銀色の真珠のような光沢のある輝きの中に包まれて眠っていたようだ。

なぜか、矢に射抜かれた時の左の胸の焼け付くような痛みも、海に沈んでいった息のできない苦しみも今は感じない。

 

(ここはどこだろう。

私は死んだのか…。

ならばここは神の国なのか…。)


 まだぼうっとするディアーナの頭上から静かな声が聞こえる。


「目覚めたか。」


男とも女とも区別のつかない若い声だった。

 ディアーナはハッとしてゆっくりと声のした方へと頭を上げあまりのことに固まった。

 そこには見上げるような巨大な見たことのない生き物が居た。

いや、自分はその()()の大きな身体に包まれるように横たわって眠っていたのだった。

 パールのような虹色の光沢を持つ銀色の滑らかな鱗に覆われた身体を蛇のようにトグロを巻き、鋭い爪のある短い前足、背には背びれと大きな翼があった。

頭には大きな2本の角があり、ディアーナによく似たエメラルドグリーンの二つの瞳が穏やかにディアーナを見下ろしていた。


(うっ…⁈

ま、まさかこれは…。そんな…本物の大海蛇(シーサーペント)⁈)


 ディアーナは驚愕のためポカンと口を開いた。


 ケスニア教では女神アルテーアの御使いである金色の獅子、聖獣レグルスと同じく、女神の伴侶である海神トリトーネも大海蛇(シーサーペント)を聖獣として使役する。

 ディアーナも小さい頃から神話や領都バレッサにあるトリトーネ神殿の壁画、それにマルティオス辺境伯家の紋章に描かれたシーサーペントをよく目にしていて馴染みのあるものだったが、生きて動いている実物を見るのはもちろん初めてだ。

まさか伝説だと思っていたものが実在するなんて…。

 その伝説の生き物が静かに口を開く。


「海神トリトーネの寵愛を受けし聖なる巫女(おとめ)よ。

我は海神の使いの聖獣である大海蛇(シーサーペント)。名はアルファルドという。

海神の命により我がそなたを助けた。」


「えっ⁈ 海神(トリトーネ)様の?

聖獣様…⁈」


「そうだ。

海神はそなたに下命を下された。

女神の聖獣レグルスと愛し子リオンハルトと共に立て。

この女神の守り賜う世界(くに)を救うのだ。」


 ディアーナはまだ混乱する中、どうにか体を起こして神の神託(お言葉)を聞く。

そして騎士としての最上級の礼、アルファルドに向かい右腕を胸の前に当て片膝をつき頭を下げた。


「全て神の仰せのままに我が身を捧げんことを。」


「良かろう。

って、カタイな。お前、名前は?」


「へっ?…ディ、ディアーナと申します。」


「よしっ!よろしくな。ディア。

(オレ)のことはアルフって呼べ。

話し方も普通でいいぞ。」


 急に態度を崩した大きな聖獣は嬉しそうに短い前足の片方をディアーナの前に出し、まるで拳をぶつけるようにディアーナの握った手をチョンとつついてにっこり笑った。


 それからアルファルドはディアーナといろいろな話をした。

 この海の底のような明るく青い場所は海神が作り出した異なる世界であること。

そこで矢を受けて海に沈んだディアーナをまる三日間かけて傷を癒したこと。

 ディアーナは矢を受けた傷を確認すると、左胸の鎖骨の少し下には矢傷は無く、代わりに薄桃色の百合の花のような拳ほどの大きさのあざがあった。


「傷が無い…このあざは?」


「ああ、海神の愛し子である聖なる巫女(おとめ)の証だ。」


「で、この服は…?」


 ディアーナは紺色のマルティオス騎士団の制服を着ていたはずだったが、目が覚めると見たことのないあざを晒すように左肩が開いたワンショルダーの「聖なる乙女」の役をした時のような白い布を巻き付けた腰のところまで片側だけスリットの入ったドレスにショートパンツとブーツを履いていた。


「あの時、お前の着ていた服はボロボロで使い物にならなかったし、治療し易い服に着替えさせてやったぞ。

巫女らしくてなかなか良いだろう。」


「うーっ!!」


ディアーナは真っ赤になって遠慮なく拳をアルファルドにぶち込んだ。


「⁈ 痛ってぇーっ!

仕方ないだろ!誰も居ないし。

それに(オレ)はオスでもメスでもない!

聖獣なんだから。

それにお前の見たってどうも思わねぇよ。つったく…。」


 少しむくれたアルファルドが伸び上がる。


「まぁ、もうそれだけ元気ならそろそろ戻るか。」


納得していない顔のディアーナだったが、ハッとして、


「そうだった!戦いは!リオン兄様はどうなったの

⁈」


「ああ、心配するな。お前の居たところと異界(ここ)とは時の流れが違う。

お前が海に落ちてからまだ30分ぐらいしか時間は経ってねえ。

どうやらリオンハルトがお前のせいでブチ切れて大暴れしているみたいだぞ。

ということで加勢しに行くぞ!」


と、言ってアルファルドは剣帯ごとディアーナの愛剣を差し出した。


「あっ。ありがとう。無くしたかと思ってた。

じゃ、早速リオン兄様を助けに行くわよ!」


 剣を身につけたディアーナは、大きく翼を広げた聖獣のいうままにその銀色の背に飛び乗った。





 一方、少し時間を遡る。

 突然飛んできた矢からリオンハルトを庇ったディアーナの左胸に深々と矢が突き刺さり、バッと赤い血が飛び散った。

振り返りその状況を見たリオンハルトは考えが追いつかず立ち尽くす。

 そしてフラフラとディアーナはよろけて船縁より真っ逆さまに海へと落ちていく。

ハッとしたリオンハルトが駆け寄り手を伸ばすが届かず、ディアーナはそのまま海中深く沈んでいった。


「ディアーナーっ!!」


 必死の形相でディアーナの名を叫び、続いて海へ飛び込もうとするリオンハルトを周りに居た者達が甲板に押さえ込んだ。


「殿下、なりません!

今飛び込めば敵の思い通りになります。

ご辛抱を!!」


 それでも皆を振り払い、立ち上がったリオンハルトはギッと敵艦上にいるヴェローニカを怒りを込めた目で睨みつけた。






新キャラ登場

アルファルドはうみへび座のニ等星

レグルスはしし座の一等星の名

夏の星座です


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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