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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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54/59

54 ビエナブルクの海戦 中

謎の船団の出現



 突如水平線に現れた正体不明の黒い船団の出現に両陣営に鋭い緊張が走る。

 お互い戦いの手を止めその船団を息を詰めるように見る中、高速で近付いて来たのは超巨大な戦列艦と新しいフリゲート艦で合わせて二十隻以上はあった。

 その全ての艦が黒々とした無数の砲門をキリキリとこちらに向け発射準備に入った。

そして轟音と共に沢山のカノン砲やカルヴァリン砲が一斉に火を吹いた。

 発せられた暴風雨のような無数の砲弾は凄まじい威力で艦の舷やマストを打ち砕きバリバリと音を立て人々の悲鳴と大きな水飛沫とともに幾つもの艦が海中に沈んでいった。

 濃い火薬の臭いと辺りを真っ黒に覆った硝煙の中を掻き分けるように現れた巨大な旗艦の舳先から大音声(だいおんじょう)て叫ぶ声が聞こえた。


「無事かーっ。リオンハルトーっ!」


(まさかっ、義父上⁈)


「リオン兄様ーっ、遅くなりましたーっ!」


「加勢するぞーっ!リオンハルト!」


「若様、ご無事でーっ!」


「リオンハルト様ーっ!」


 リオンハルトは久々に養父であるジェラールと帰ったはずのディアーナ、ラディアスとかつての仲間達の声を聞く。

 姿を現した艦隊の全てのマストの上には高々と、盾に海神(トリトーネ)の使いの聖獣である大海蛇(シーサーペント)と剣の紋章のマルティオス騎士団の旗が翻っていた。

 厳しい戦いを耐えていたリオンハルトは安堵のため鼻の奥がツンとするような痛みを感じる。

 同じく傷付きながらもどうにか持ち堪えていたローゼンシア海軍の団員達からもウォーッ!という歓声が上がる。

 敵味方入り乱れての混戦となっている中、艦の接舷を待ちかねて、ディアーナがリオンハルトの乗る旗艦へと飛び降りた。

そして群がる敵を流れるような剣捌きで次々と沈めていく。


「兄様ーっ!」


「ディアーナっ!」


 そしてマルティオス騎士団の紺色の制服を纏ったラディアスが、カイルが、ミリアムが、リオンハルトの副官だったジオルドが、マルティオス騎士団の懐かしい面々が、剣を手に乗り移って来たのが見えた。

 今まで優位に立ち襲いかかってきた敵の兵を次々と剣で切り伏せ、魔法で吹き飛ばし、帰る艦を失った敵兵達を海へと沈めていく。

 マルティオス騎士団の旗艦の上ではジェラールが、ローゼンシア帝国最強と呼ばれる艦隊を指揮して潮と風を読み艦を動かし敵艦隊に砲弾を放ち、鋭い牙と棘のある尾鰭を持つデビルウェールに魔法で作り出した巨大な氷の銛を打ち込んで単騎で激しい戦いを続けているレグルスに加勢している。

 その時、突然リオンハルト達の乗る艦が大きく揺れる。

海中から薄灰色の大きな触手が伸びてきてメインマストに絡みつき、巨大なポイズンデンタクルスが海上に顔を出した。

そしてギラギラ赤く光る眼の間にある器官、漏斗が毒を吐くべく大きく膨らんだ。

 ポイズンデンタクルスの名の通り、この魔獣は神経毒を吐き、浴びると身体が痺れて動かなくなり、最悪の場合身体の機能が停止して死に至る強力な毒を持つ。

 毒が吐き出された瞬間、ディアーナは最大威力の氷魔法を放ち毒ごとポイズンデンタクルスをカチコチに凍らせて動きを止めた。

そこにすかさずラディアスが炎を纏わせた大剣両手剣(ツヴァイヘンダー)を振り回し粉々に打ち砕いた。

 幾つもの大きな水飛沫を上げ砕けた魔獣の破片が海へと沈んでいく。


「助かった、二人とも。」


リオンハルトが叫ぶ。

 

 そんな様子を少し離れた旗艦の上から見ていたヴェローニカは悔しさに唇を噛む。

ヴェローニカの近くにはリオンハルトを捕獲しようとネットランチャーが狙っていた。


(こんなはずではなかった!!)


と、ヴェローニカは舌打ちをする。

 戦いの序盤こそ追い込まれていたが、数を頼りに巻き返し、あと少しのところでローゼンシア帝国海軍を制圧し勝利を収めることができると意気込んでいたのに、突然現れた敵の援軍により形勢が逆転され勝ちが読めなくなったことにヴェローニカは怒りのままに手にしていた剣を甲板に突き刺した。

 その横から巨体を屈めて副官の男がヴェローニカに耳打ちをする。


「皇太女殿下。もうこれ以上は我が軍は耐えきれません!

誠に遺憾ではありますが時間切れでそろそろ潮時かと…。」


 ヴェローニカは怒りを露わに副官を睨みつけるが眉間に皺を寄せたまま辺りを眺めた。

 凪いでいた風が夕暮れを迎えて今度は逆の陸風が吹き始める。

このままでは今度はこちらが風下となって追い込まれる可能性もある。

 見渡したところ60隻以上で出陣した艦はおよそ半分ほどしかなくなっており、しかもその多くは砲弾により損傷を受け、悔しいがこれ以上は損失が大きすぎた。

 ヴェローニカは渋々決断する。


「……分かった。全軍撤退する。

その前に敵の皇太子を生け捕りにするのだ!」


 副官が大声で撤退命令を叫ぶ中、ヴェローニカはポイズンデンタクルスの毒を塗った矢を小型のボウガンにつがえ、向き合う敵の艦上で剣を振るっていたリオンハルトに照準を合わせた。


 艦首近くでリオンハルトと背中合わせに剣を振るっていたディアーナは、敵の旗艦の上にいた敵の司令官らしい真っ黒な鎧を着た大柄な女がボウガンを構え矢を放ったのが見えた。

その矢は真っ直ぐリオンハルトに向かって飛んでくる。


「兄様!!」


 咄嗟のことで魔法を発動することができず、ディアーナはリオンハルトを思いきり突き飛ばした。

その勢いで避けきれず矢は深々とディアーナの左胸に突き刺さった。

赤い血が飛び散る。


「ディア⁈」


リオンハルトが驚き振り返る。


「ぐっ!!」


 痛みで声を上げたディアーナは衝撃でよろめき、ふらふらと船縁に近づく。

 

(ち、力が入らない…!

毒か…網を用意しているところを見るとリオン兄様を捕まえるつもりだったのか。チェザーレのように…。

兄様…無事で良かった…)


 振り返り驚愕の表情を浮かべるリオンハルトと向かい合う艦の上、矢を放った女の忌々しそうな顔が目に入った。


「ディアーナーっ!!」


 最後にリオンハルトの悲痛な叫び声を耳にしながら、ディアーナは艦上から落下していき深く青い海の中へと沈んでいった。



 





ディアーナ、絶体絶命!

タイトル変更しました。


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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