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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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52 皇太女ヴェローニカの野望

北に不穏な動きあり。



 ドニエーブル帝国の皇太女、ヴェローニカは一年半前の十八歳の時、皇太女の座に就いた。

それは正しく熾烈な争いを制し、やっと後継の座を勝ち取った厳しいものだった。

 ドニエーブル帝国の皇帝は国教である絶対的な神(ラーニュ・ゴール)の唯一の代行者であり、強大な権力を持つ。

その後継たる皇太子には長子や男子のみとは決まっておらず、後宮に数多居る妃が産んだたくさんの子の内で最も優れたものが就くため、手段を選ばない激しい後継者争いが常に起こっていた。

 今の皇帝には子が全部で二十二人いて、最初、上から三番目の男子が皇太子となったが3年前に謎の死を遂げた。

そのため他の兄姉達を抑えて十一番目のヴェローニカが次の後継に収まったのだ。


 ヴェローニカは今までの()()に思いを馳せる。

 ヴェローニカの母である妃はあまり爵位の高くない貴族の娘だった。

容姿はそこまで美しいとは言えなかったが、賢く機転がきき、ほどほどに皇帝にも愛された。

が、数多の妃が妍を競いしのぎを削る後宮で母妃は二人目を妊娠中何者かに堕胎薬を飲まされ、もう子供が望めない体になってしまった。

それでただ一人の子となったヴェローニカをそれはそれは厳しく育てたのだった。

他の兄姉よりも強く、賢く、強かになるように。

 それはこの後宮という煌びやかな檻の中で母娘が生き残るための終わりのない戦いであった。

 前回、父皇帝が先の皇太子を決めた時、ヴェローニカはまだ成人前で後継になれる資格は無く、指名されるような力もライバル達に対抗する術も無く無念の涙を飲んだ。

それでも諦めずに地道な努力とあらゆる手段を使って下地を固めてきた。

 そして前皇太子が何者かによって暗殺され、後継の座が空席となった。

 ヴェローニカはここぞとばかりに次の後継を狙うライバルの兄姉達を、ある者は罪を捏造して失脚させ、ある者は政略結婚をまとめて遠くへと追いやり、ある者は色仕掛け(ハニートラップ)で堕落させ、または武力で屈服させ、手強い者には刺客を放ち、あらゆる手段を使ってたくさんのライバル達を全て排除した。

 そうしてやっとのこと皇太女の座を掴んだのだったが、それも安泰とは言い難かった。

 今年成人したばかりの三歳下の有力な貴族を母に持つ弟が力をつけてきていて、皇太子の座を狙って密かに不穏な動きをしているという。

 今年、この国の国教では百年に一度の破壊と再生の年といわれている。

それにかこつけ、先のコルネリゼ領での戦いが敗戦に終わった責任と、ベルゼルク大公との密約が不履行となったことをヴェローニカの不手際だと貴族達や軍部に吹聴しているという。

皇太女は絶対的な神(ラーニュ・ゴール)の加護の無い者だと。

 だからヴェローニカは決断する。

数々の不穏な批判や噂を跳ね除け、皇太女の地位を絶対的なものにするのだ。

そのためには再びローゼンシア帝国に戦争を仕掛け、今、皇太子が亡くなり皇帝も病で伏せていて国内が混乱しているというあの地を今度こそ我がドニエーブル帝国のものとする。

 そして新しく見つかったリオンハルトとかいう名の市井で育った皇子を隷属させて我が夫とし、ローゼンシア帝国を属国として支配下に置くのだ。

ローゼンシアさえ手に入ればその周辺の友好国など取るに足らない弱小国ばかりだ。

 そうなれば神聖なる我がドニエーブル帝国はこの世界の覇者として絶対的な神(ラーニュ・ゴール)の御名の元に神の理想の国を創り、我は女帝として絶対的な権力を得るのだ。


(聖戦じゃ!!)


 ヴェローニカは力強く父皇帝の執務室の両開きの重厚なドアを押し開けた。





 (ほら、言った通りになっただろ。ゴリラ姫…。)


 サラセナ宮殿の奥、白やピンクのクレープマートルの花が咲き乱れる奥庭にある紫のクレマチスの蔓の繁る優美なガゼボで、リオンハルトは優雅なお茶会を開いている。

 リオンハルトの向かいにただ一人座っているのは、その美しい花々にも負けず劣らず、まるで花の妖精かと思うような艶やかで可憐なフローリア ロートシルト公爵令嬢が頬を染めて微笑みを浮かべていた。

 端正でキラキラしい皇子様然としたリオンハルトもフローリアに優しい眼差しを返して笑談していて美しい庭園の中、全くお似合いの二人の様子に周りにいる侍女達も頬を染めて眺めている。

 でもそのずっと後ろに護衛として控えている近衛騎士団長であるエディから見れば、リオンハルトのそれは無理して取り繕っている笑顔だと内心でため息をついた。

 ディアーナがリオンハルトに何も言わずにマルティオス領へ帰って行った後、リオンハルトは晴れてこの国の皇太子となり、ますます忙しい日々を送っていたが目に見えて落ち込んだ。

 エディにもハッキリと愚痴を言うことも無かったが、リオンハルトは日々の騎士団での鍛錬にも精彩を欠き、公務の書類仕事でも普段はしない単純なミスを連発してテレンスが眼鏡のブリッジを押し上げ眉をひそめているという。

 今日も婚約者候補に選ばれたフローリア公女とのお茶会を持ったのは良いが、どうにか失礼にならないぐらいに気を使っているようだがエディから見ればリオンハルトは心ここに在らずといった感じで笑顔が嘘くさいと感じている。


(あーあ。あんなに清楚で可愛らしい姫君を前にして勿体無いと思うがなぁ。リオ…。)


 そう思いながらも、あの夏の嵐のように周りを巻き込みカラリと笑う、二つ名に恥じない強さを持ち、逞しくて、黙って澄ましていれば可憐に見える銀色の髪と明るいエメラルド色の瞳を持つ、騎士団のゴリラ達を率いる姫をエディは懐かしく思い出していた。







リオンハルト色々狙われてます。

クレープマートルは日本名は百日紅さるすべり


お読みいただきありがとうございます。

家の事情で更新に間開きました。

しばらく不定期に更新となりますがよろしくお付き合いくださいませ。

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