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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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49/59

49 裁きの時

断罪の始まり



 思いの外、早くに帝都へ帰還することができたリオンハルト達はビエナブルク港でテレンスの出迎えを受け、これまでの事情を知る。

 そして本日、リオンハルトの帰りを待ってサラセナ宮殿の一室でベルゼルク大公の初めての審理が行われることとなった。

 非公開の審理の場に出席したのは、皇帝とリオンハルト皇子、ワイマール宰相とテレンス補佐官、書記官が数名のみだ。

 貴族牢に囚われていた大公は少しやつれて薄汚れた風貌になり、尊大な態度は変わらなかったが手と腰に縄をかけられ看守に引かれて皆の前に現れた。

 そしてギロリと血走った目で皆を睨み付け、今まで黙秘していたのが嘘のように冤罪だと叫び宰相とテレンスを口汚く罵った。

 兄である皇帝に向かってこの二人が裏で密かに罪を捏造して自分に擦りつけ、アレクサンダー皇太子と皇帝陛下を亡き者にして国を乗っ取ろうとしていたと、そのために新たにリオンハルト皇子も戦死させるつもりで戦争を起こしたと声高に訴えた。

 ワイマール宰相は大公に罵られても冷静にテレンスに目配せをする。

 テレンスは白い手袋をした手に机の上の分厚い調書の上にある布包みの中から慎重な手つきで一枚の紙を取り出した。

そして所々焦げ跡のある便箋を広げて皆に見えるように示した。

その便箋が何なのか一目で分かった大公の顔色が変わる。


「それは…。そんな馬鹿な、燃えたはずでは…。

にっ、偽物だ!あれこそが儂に罪を擦りつけるために捏造された冤罪の証拠だ!!」


叫ぶ大公を遮り、テレンスが眼鏡のブリッジを押し上げて、


「ほう。これが偽物とおっしゃるのですね。

ここに書かれた文字と署名はあなたの書斎に残っていたたくさんの書類の筆跡を鑑定魔法で比べて同一のものであると証明されています。

もちろんこの使用された便箋、インク、蝋印も書斎に残っていた物と同一のものだと鑑定され証拠として押収されています。

逆にあなた以外の人物がどうやって全く同じ筆跡と便箋とインクと蝋印を使ってこの手紙を書くことが出来たのかお聞きしたいですね。」


と、冷ややかに発言する。

テレンスの発言を受けて宰相も続く。


「よってこの状況と証拠、鑑定の結果を持ってこの手紙をベルゼルク大公本人が書いたのもと断定する。

内容について何か申し開きはおありか。太公?」


 宰相とテレンスを射殺しそうな鋭い目つきで睨んでいた大公が、突然狂ったような大声で笑い出した。


「お前らさえいなければ全て上手くいったのに!!

もう少しで、あと少しで儂は…!

いつもいつもそうだ、誰も彼も儂の邪魔をする!

兄よ、お前もそうだ。キサマのせいで儂が子供の頃からどれほどの辛い思いをしてきたか分かるか!

どれほど悔しい思いをしてきたか知らないだろう!」


 突然大公が縄を引っ張り皇帝に掴み掛かろうとした。

咄嗟にリオンハルトが間に入り風魔法で大公を弾き飛ばす。

大公は壁にぶち当たりズルズルと崩れながらも皇帝を睨み付けながら続ける。


「だから殺してやったのだ。アレクサンダーを!

そしてキサマも!もう少しでくたばるところだったのに何故だ!

後少しで儂が皇帝となれたのに。儂こそが相応しいはずなのにキサマらが邪魔をしやがった!

それから今になって出てきたキサマもだ!

何が双子だ!呪われた忌み子のくせに!

この国は儂のものだ!!」


言い終わった途端、大公の前に怒りで体を震わせた皇帝ユーレヒトが立つ。


「言いたいことはそれだけか。」


見上げた大公の顔に強烈な拳が落ちる。

何度も大公に拳を落とす皇帝を宰相とリオンハルトが押さえつける。


「陛下、それ以上はなりません!

まだこの者には聞きたいこともあります。

必ず厳格な処罰を下しますゆえお静まりを!」


 肩で息をする皇帝にリオンハルトが強くしがみつく。


「父上!!今はご辛抱を!」


 歯が折れ顔中を血で真っ赤に染めた大公を見下ろし、皇帝が歯を食い縛り言い放つ。


「お前の思いなど知るか!

お前の身勝手な欲望のためどれほどの者が血を流した!

お前の独りよがりな妄執のためにどれほど国を危うくしたのか分からないのか!!」


 兄皇帝の血を吐くような諫言にも睨みで返す弟大公に、宰相はこの場を終わらせる時を告げる。

それを制したリオンハルトが口を開く。


「大公、最後に聞く。

何故まだ俺自身でさえ知らなかった出生の秘密を知っていた。」


「ふんっ。それは去年のデビュタントの夜会の後、マルティオスの娘が話しているのを立ち聞きした。

アレクサンダーと兄の顔と魔力の形がそっくりだったと。

恨むならあの娘を恨め。

せっかくチェザーレの嫁にしてやろうと言ったのに断りよった身の程知らずの馬鹿な娘をな。」


 突然、リオンハルトが大公の胸ぐらに拳をめり込ませた。


「グヘッ…!」


大公が変な呻き声を上げ前に倒れた。


「これは母達の分だ。」


続けて倒れ込んだ大公の背を踏みつける。


「これは妹を侮辱した分だ。」


これで完全に大公は失神した。

 テレンスは密かにリオンハルトの思った以上のシスコンぶりにため息を飲み込んだ。



 三日後、宰相と司法担当大臣達により大公アウグスト ベルゼルクの判決が下された。

 皇太子アレクサンダーとマルティオス辺境伯夫人アマリア マルティオス、他、三名の殺人と皇帝とリオンハルト皇子への殺人未遂、ドニエーブル帝国と通じ国家の転覆を謀り皇帝の座を奪おうとした国家叛逆とその他数々の不正と賄賂等のたくさんの罪を犯しこれを認めた為、まず身分を剥奪して平民となし、領地と全ての財産を没収、公開の磔刑となるところを王族としての配慮で牢にて毒杯を煽ることとの判決が下された。

 そしてドニエーブル帝国へ拉致されたままであるが、その息子である第一騎士団長チェザーレ ベルゼルクにも同じく判決が下され、身分の剥奪と、今後、ローゼンシア帝国との関わりを一切断つ、生涯国外追放の刑が言い渡される。

敵国で、国から追放され、交渉の価値も無くなった捕虜の身柄などゴミ同然だろう。

 それともう一人、大公達の犯罪には関わらなかったが、計画を聞いても放置したとして、元側妃のアマンダ パルマンが後宮より追放、実家とも身分を剥奪され平民となった。



 それから三日後、アウグスト ベルゼルクの刑が執行される。

 最後まで暴れて喚き散らし、結局は押さえつけられ刑吏の手によって毒薬を口に流し込まれた。

その遺体は埋葬する事を許されず、他の罪人達と同様に穴に投げ込まれた。


 これでローゼンシア帝国を揺るがした忌まわしき一つの事件の幕は降りた。

 だが、この国の長い長い歴史を見続けてきた女神が遣わした聖獣であるレグルスには、これで神が下された啓示が全て終わったとは思えない不安を感じていた。









リオンハルトお前もか!

敵討ち完了

しかし暗雲は去らず。


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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