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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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46/59

46 謎を解く鍵

全ての謎を解く鍵を追え!



 宰相補佐官室の窓から飛び出したカイルとミリアムの二つの黒い影は、サラセナ宮殿のすぐ近くにある壮麗なベルゼルク大公のタウンハウスへと向かう。

高い鉄柵を軽々と越え、影は真っ直ぐ2階にある大公のまだ灯りのともる執務室を目指す。

 その時、目指す部屋のバルコニーからひらりと別の黒い影が降りたのが見えた。

二人は目配せしてその影を追うことを決める。

 影は裏門の脇に繋いでいた馬に飛び乗りビエナブルクの街を北へと走り去っていく。

二人も馬に乗りそれを追う。

相手に気付かれないようかなりの距離を空けているが、カイルが集音魔法を発動しているため見失うことはない。

 帝都を出てなおも北へ向かって走り続けてしばらくして誰も追ってこないことに気を許したのか、川の近くで馬を停めた。

二人は馬を降り気配を殺してそっと近づく。

 男はまだ二人には気付かず、馬に水を飲ませ、自分も川で顔を洗っている。

そこをカイルが後ろから男の腕を掴み地面に捩じ伏せ、ミリアムが男の後ろ首にナイフを当てた。


「動くな。」


カイルが素早く男を縛り上げ、ミリアムが男の懐を探ると、皮袋がありその中に大公家の蝋印で封をされた手紙を見つけた。


「これを何処に届けるつもりか。」


ナイフを突きつけるミリアムを一睨みして男は顔を逸らす。

話す気は無いようだ。

 ミリアムは手紙を開封しようと蝋印に指を掛けた時、男を取り押さえていたカイルが男の異変に気付く。


(急に鼓動が早くなった。まさか…⁈)


「ミリアム開けるな!すぐ離れろ!」


その瞬間、男の体からボンと音がして炎が上がり瞬く間に炎に包まれた。

手紙にも火がつき、男は苦悶の表情を浮かべ一瞬のうちに黒い灰の塊となり異臭が辺りに漂った。

 間一髪その場を逃れた二人は顔を見合わせる。


「証拠は残った。とにかく今は急いで戻ろう。」


頷いたミリアムは焼け焦げた手紙を手にしてテレンスの執務室へと急いだ。



 真夜中はとうに過ぎたがテレンスは寝ずに二人からの連絡を待っていた。

 そこへ少し焼け焦げたマントを羽織ったカイルとミリアムが帰ってきた。


「ああ、二人ともご苦労だった。それでどうだった。」


「こちらを。」


ミリアムが焼け焦げた手紙を差し出して、二人は先程起こった事の顛末を語った。


「そうか…。きっとその男と手紙には制約の魔法がかけられていたのだな。

手紙に記された宛名や場所など指定された条件以外で開封された時に発動するように。

まるで呪いだ。

でもよく二人とも無事でよかった。」


 ミリアムはあの時、カイルの大声に咄嗟に二人に防護の結界と、炎に包まれる手紙に真空状態となる結界を張った。

手紙の火は一瞬で消え、良い紙を使っていたためか、外の封筒はボロボロに焼け焦げていたが中の便箋は汚れていたもののほぼ無事だった。

 テレンスはその便箋を慎重に開く。

宛名には「偉大なる皇帝(ツァーレ)ドミトル三世陛下」とあった。


(やはりそうか…。)


 読み進めるテレンスの顔色がだんだん悪くなり眉間の皺が深くなる。

手紙の内容は、


 この度の戦闘ではお互い重大な勘違いがあり、こちらは決してそちらとの契約を違えるつもりは無く、貴軍に与えた損害は偶然かつ予想外の事故であり大変遺憾に思っていること。

その為そちらに連れて行かれた息子のチェザーレを速やかに安全に返して頂きたいこと。

そのお詫びを兼ねた代償としてコルネリゼ領と新たに貴国が欲していたビエナブルク港の半分の領有権を譲渡する。と。

そして自分は近々皇帝となり全てを掌握するつもりなのでその折の助力と交友を乞う。

と、書かれてあった。

もちろん差出人には、アウグスト ベルゼルクとハッキリ署名があった。


 余りに衝撃的な内容にテレンスは目眩を覚えて震える手で眼鏡のブリッジを上げる。

 手紙の内容には、今回の紛争は先に大公とドニエーブル帝国の皇帝(ツァーレ)との間に密約があったことを示していた。

この戦い自体が仕組まれたものだったのだ。

次の皇太子となられるリオンハルト殿下を退ける為に。

 そしてその見返りにコルネリゼ領とビエナブルク港の半分を譲渡すると。

一体何を考えているのか!

ローゼンシア帝国(この国)を売るつもりなのか!

テレンスは本気で激しい怒りが湧いてきた。

大公は摂政としてご病気の皇帝陛下と皇太子殿下の代わりに国政を担っていたはずなのに。

 コルネリゼ辺境伯領は豊かな森林資源と鉄鉱石を産出する大きな鉱山を有している。

それらの資源は国境を分けているレーヌ川の流れに船に積み込まれ、他領を流れる支流を合わせてローゼンシア帝国一の大河となりビエナブルク港へと注ぐ。

その運ばれた資源はビエナブルク港より船に乗せられ各地へ、他国へと輸出されローゼンシア帝国の豊かな経済を支えている。

 ビエナブルク港には海軍、第四騎士団の施設もあり、そんな国の大動脈と呼べる場所を他国に譲渡するなど普通では考えられないことだ。

正に喉元に刃を突きつけられるような国の存亡に関わる行為と気付いていないのだろうか。

 ドニエーブル帝国もコルネリゼ領と同じく森林資源と銅や鉄の産出する鉱山があるが、大陸の最北に位置するこの国は全て北の海に面する場所しか港が無く、寒流の影響もあり冬から春にかけて流氷に閉ざされ全く使えなくなる。

つまりその国の最大の輸出品を出荷し、食糧の半分を他国からの輸入に頼っているにも関わらず、夏から秋にかけての期間しか港が使えない、一年中使える不凍港が一箇所も無いという建国以来の大問題を抱えているそんな国が大公の提示するコルネリゼ領を、ビエナブルク港を手に入れたなら、それだけに止まらないとは考えなかったのだろうか。

 それに何よりテレンスを驚愕させたのは、大公自ら近々次の皇帝となると、そして全てを掌握すると書かれていることだ。

これの示唆するところは大公が皇帝と皇子を暗殺するかクーデターを起こすと明言している事に他ならない。

そうして考えると、大公の目的と今までの数々の事件の全てが繋がっていく。

 テレンスは怒りで白くなるほど硬く握った拳を震わせ掠れる声で固唾を飲んで見守る二人に言う。


「二人ともよくやってくれた。

これでようやく証拠を掴めた。

必ず今までの、アレクサンダーの仇を討つ!

後は任せてくれ。」


と言い置いて、手紙を手に隣の宰相室へ乱暴なノックと同時に滑り込んでいった。


「父上!掴みました!!」





怒りのテレンス、真実まであと少し。



お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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