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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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45 勝利と新たな疑惑

コルネリゼ領の戦いその後。



 その日の夜遅く、ローゼンシア帝国の帝宮、サラセナ宮殿の皇帝の元にローゼンシア帝国軍がドニエーブル帝国軍に勝利したと戦況を知らせる早馬の使者が到着した。

 皇帝と大公と高官らが居並ぶ広間に埃で汚れた軍服もそのままに騎士が報告を行う。


 砦を占領し、攻撃を仕掛けるドニエーブル帝国軍に対抗するためリオンハルト皇子が50人程度の別動隊を指揮し敵の脇腹を突き足取りを乱すため密かに本隊を離れた。

 その野営地に敵の約半数の300人ぐらいの軍勢が夜襲を仕掛けたが、逆に少数の別動隊によって殲滅され敗走した。

 そのすぐ後、敵の残りの半数がチェザーレ将軍の野営する本隊を襲い、寝込みを襲われたローゼンシア軍は蹂躙され、チェザーレ将軍が下着のまま敵に連れ去られた。

 その後駆けつけた別動隊とコルネリゼ騎士団によりリオンハルト皇子の命令で急きょ追撃隊が組織され追わせたが、ドニエーブル帝国軍は砦を捨てコルネリゼ領からチェザーレ将軍を連れたまま撤退した。

 砦を奪還しコルネリゼ領からドニエーブル軍を退けたが、将軍を奪われ、別動隊と第三騎士団をのぞいて死者数人と多くの怪我人を出し、辛くも勝利したと使者は報告した。


 勝利したと聞いたが誰一人喝采を上げるものはおらず広間には重苦しい空気に包まれる。

当然、行きに華々しく送り出した時のような凱旋式を行うような雰囲気ではなかった。

 そんな報告を聞いたベルゼルク大公は激昂する。


「何故だ!! なぜチェザーレが連れ去られるのだ!

チェザーレに付いていた近衛騎士達は何をやっているのだ!

それに少なくとも本隊には300人以上はいたはずだろう。 なぜチェザーレを守れない⁈

どうして負けるのだ!!」


 跪く急使の騎士を足蹴にし、倒れ込む騎士が呻きながら続ける。


「そ、それは…まさか襲撃があるとは思わず、酒も振る舞われ熟睡していて…油断をいたしました。

将軍閣下も近衛騎士のヴァイン伯爵令嬢とお休みになっておられて…。」


 流石に皇帝も宰相以下大臣達も絶句する。

大公だけが、


「奴等め許さん…。」


と、何かをぶつぶつと呟き、皇帝陛下の前だというのに挨拶もせず謁見の間を飛び出して行った。


「で、リオンハルトの方は無事なのか?」


と尋ねる皇帝陛下に再び騎士が答える。


「はい。ご無事でいらっしゃいます。

将軍の代わりに指揮をとっていらっしゃいます。

目を見張るようなご活躍で、隊を率い聖獣様と共に大部分の敵をお一人で倒されたということでございます。」


「そうか、ご苦労であった。下がるがよい。」


 皇帝はリオンハルトの無事と活躍を聞きホッとするが、たくさんの負傷者とチェザーレのことを聞き勝利には間違いないが、大公の様子といい、何か釈然としない不安が胸に残った。



 一方、夜を徹しての戦闘を終え、勝利の実感とリオンハルトとの再会を喜ぶ間もなく、ディアーナは騎士達の傷の手当てに奔走していた。

 あれだけの戦闘に関わらず命を落とす者はなく、皆軽傷で一番の重症者は脇腹を切りつけられたルドルフ副団長だった。

 後方支援の治癒師もいないので自ずと治療にはわずかだが治癒魔法の使えるディアーナが行っている。

 今までのディアーナの能力なら軽く傷が塞がる程度だったのに、なぜか自分でも驚くほど魔法の精度が増していることに気付く。

ルドルフ副団長の鎧まで血が滴るほどザックリやられた傷が淡い光の中、みるみる間に塞がり何もなかったように傷跡も消えていく。

目を見張るルドルフ副団長が声を上げる。


「ディー少年は()()じゃなかったのか。」


(驚くとこそこっ⁈)


と、ディアーナはツッコミたくなったが、


「副団長、傷口が開きますよ。黙って下さい。」


と返す。


リオンハルトの護衛騎士のエディも、


「リオの妹ってゴリラじゃなかったのか…。いややっぱゴリラか…。」


と、こちらもいろいろツッコミたい。


 その時、本隊の野営地が襲撃されているとの知らせが入る。

 リオンハルトと別動隊は休憩もそこそこに駆けつけると、すでに戦闘は終わっていてチェザーレは連れ去られボロボロになった将軍のテントと傷ついて力無く座っている騎士達の姿があった。

 リオンハルトはそこで合流したコルネリゼ騎士団と少し離れた丘陵の下で野営を命じられた第三騎士団を併せてドニエーブル帝国軍の追撃隊を作り、エディを隊長にエーリッヒ コルネリゼ騎士団長にも出撃命令を出す。

 ディアーナも動くことのできる医師や治癒師とともに騎士達の治療に当たる。

 将軍不在の本陣を立て直したリオンハルトはそこで奇妙な噂を聞く。

それはチェザーレが連れ去られた時に放った言葉だ。

 その時の話を詳しく聞くために呼ばれたのは、その日の夜チェザーレとともに休んでいた近衛騎士のルクレチア ヴァインだった。

 ルクレチアの話によると、その日の明け方チェザーレとともにテントで眠っていた時、急に押し寄せた軍勢にチェザーレは捕えられたという。

ルクレチアは裸のまま寝台からチェザーレに蹴り落とされ、咄嗟に毛布を体に巻き付け寝台の下て震えながら息を潜めていた。

その時聞こえてきた会話で、敵兵は大陸の共通語で


「裏切り者を捕えろ」


と叫んだという。

チェザーレも引立てられながら


「裏切り者はそちらの方だ」


と、叫んでいたとその時の恐怖を思い出したのか泣きながら証言した。


他の何人かの騎士も、チェザーレとドニエーブル兵がお互いを「裏切り者」と罵り合うのを聞いていた。

 リオンハルトは確信した。

この突発的な戦いには、自分達を襲った軍勢のことも含めて何か裏があると。


 そしてリオンハルトはカイルにこれらのことを言い含めて、戦果を伝えに向かった者とは別に帝宮に向かわせた。

すぐさま密かに調査をするようにと。

伝える先はディアーナ達が共に動いているという、テレンス ワイマール宰相補佐官だ。

リオンハルトはこの元、アレクサンダー皇太子の側近で宰相の息子である黒髪で銀縁眼鏡の端正な顔立ちの男を思い出していた。



 テレンスは先程の急使の報告を聞き、その内容と数々の疑問のため目が冴えて眠れず、一人宰相補佐官の執務室の机に座って考えを整理していた。

 その時、小さく窓ガラスを叩く音が聞こえる。

時刻は深夜、こんな時間に自分を訪れるのは()()()()()のみだ。


「入れ。」


窓からするりと入ってきた黒い影はコルネリゼ領にいるはずのカイルだった。


「カイルか。何があった?」


「はい。リオンハルト殿下のご命令ですぐさまお伝えしたいことが。」


 テレンスはカイルからこの戦いで起こったことを聞く。

チェザーレの本隊とは別にリオンハルトに密かに小隊を率いさせて敵軍を乱すために指定された場所に野営をさせたこと、そして隠密の行動のはずなのに狙ったように夜襲をかけられ、敵軍を聖獣とリオンハルトとディアーナで撃退したこと、そのすぐ後本隊が襲撃に遭いチェザーレが攫われその時にお互いを「裏切り者」と呼んでいたことを語り、その数々の疑惑を解くためリオンハルトが自分を密かに使わしたことを伝えた。


「そうか。リオンハルト殿下が…。

中々聡明なお方のようだな。」


 テレンスは自分と同じくこの戦いに疑問を持ち、密かにカイルを寄越したリオンハルト殿下のことを再評価する。

ディアーナが()()のもわかる気がした。


「ミリアム、今の話聞いていたな。」


「はい。」


部屋の隅の影から黒い衣装を纏ったミリアムが姿を現わす。


「やはり怪しいのは大公だ。

チェザーレを攫われ今夜焦って何か動きがあるだろう。

カイル、帰ってきたばかりで悪いが二人で大公を見張れ。」


「「了。」」


 黒い影が二つ窓から夜の闇に消えていく。


(まずは父上に報告を。今夜は宰相室で仮眠を取っているはずだ。

しばらくは寝れそうにないな…。)


テレンスは眼鏡のブリッジを押し上げ隣の宰相室へと向かった。

 

久々の名探偵テレンス


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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