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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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43/59

43 コルネリゼの戦い 上

思いもよらぬ戦闘が始まる。



 そうしてチェザーレ将軍から指示された場所に着き、野営の準備を終えたリオンハルトはエディを呼ぶ。


「なあエディ、この場所だがおかしいと思わないか。」


「そうだな。冒険者をしていた時だったら川が近いし片側が崖で広い場所だし、魔獣や盗賊なんかが襲ってきても分かりやすいし撃退し易い場所なんだが、これだけの人数がいてそれ以上で襲い掛かられたら逃げ場が無くて崖から落ちるしかない場所だな…。」


「やはりそう思うか。今夜一晩やり過ごしたら明日移動しよう。

今夜は用心のため、あの砦からは見つからないよう夕飯の煮炊きは止めにしよう。煙の上がる焚き火も禁止だ。

念の為、服もこのままで何かあればすぐに動けるように仮眠を取る程度に休めと皆に伝えてくれ。」


「分かった。用心するに越したことはないからな。」


 リオンハルト皇子の護衛騎士のエディから伝令を聞いた皆はすぐさま理解して、長旅で疲れていたが旅装はとかず武器を側に携帯食の干し肉や木の実などを練り込んだ乾パンを齧り、木に寄りかかったり手枕で横になったりして休息を取っている。

 上手く第一騎士団の新入り騎士としてこのリオンハルト率いる別動隊にルドルフ副団長とともに入れたディアーナとカイルも後方支援の下っ端として働いていた。

これならリオンハルトとの接点は無く、バレることもないだろう。


 その夜、全ての片付けと明日の準備を終えたディアーナは、神経が昂っているのかなかなか仮眠を取ることが出来ず、誰にも知られずそっと隊を抜け出した。

 そして風魔法を使ってふわりと崖を飛び降りた。

これぐらいの高さなら、昨年の秋、デビュタントの日に帝都のマルティオス邸の大屋根の上からバルコニーに降りた時と同じぐらいだったので大丈夫だ。

 夏の初めの大きな月の明るい夜で、ディアーナは周りに誰もいないことを確かめ軍服のボタンをはずし始める。

 特に男だと偽ったつもりはないが、周りの皆からは少年だと勘違いされ、気軽に風呂に誘ってくれるがさすがに一緒に入る訳にはいかなかった。

それで一人、川でその日の汗を流したいと考えたのだ。

 夏とはいえ川の水は冷たかったが、さっぱりとしたディアーナは急いで服を着てブーツを履こうとした時、後ろでパキリと小枝を踏む音がした。


(誰かいる!見られたか。)


気づかぬふりをしてブーツを履き、手のひらに魔力を込め、


「誰だ!」


と、振り向きざまに氷のナイフを投げつける。


「うおっ!待てっ、違う!」


 ドンドンドンッと、ナイフが土に刺さる音がして、見るとそこには月の光の中、金色の大きな獅子がたてがみを氷のナイフをで土手に縫い付けられて変な体勢で固まっていた。


「聖獣様…⁈」


絶句するディアーナに、獅子は慌てて言い訳をする。


「そ、その、決して覗くつもりはなくてだな、そんなにハッキリとは見ていないし、その、少年だと思ったし、だ…」


「やっぱり見たんだ…。」


「いや、その、すっ、少しだけ…まさか人が居るとは思わなかったし。」


「うっ…。」


泣きそうな顔のディアーナに獅子はますます困り顔で、


「すまん!許せ!ごめんなさい!」


あまりに必死な聖獣様の様子にディアーナは思わず吹き出した。


「ぷっ!分かりました許します。

でも今、見たことは誰にも内緒にして下さい。」


「ああ、ああ承知した。誰にも言わぬ。」


 ディアーナは刺さった氷のナイフを魔法で溶かした。

近づいてきた聖獣は改めて、


「そなたの名は?新入りか?」


と問う。


「はい。ディアーナと申します。

皆にはディーと呼ばれています。

訳あって家出中で…リオンハルト様をお守りしたいと思ってこの隊を志願しました。」


「そうか、ディーか。我のことはレグルスと呼べ。」


「レグルス様と?」


「ん?そなた何者だ?

そなたから聖なる力、トリトーネの加護の力を感じる…。」


「えっ…?もしかして去年の秋、マルティオス領の秋のフェスタでトリトーネ様に祈りを捧げる巫女に選ばれたからでしょうか?」


「ふむ、前髪でよく見えなかったが、そなたの眼はエメラルド色か。もしかしてその黒髪は染めているのか?」


「ええ、本当は銀色なんですが…。」


「もしやそなたはマルティオスの血族の者か?」


「はい。よくご存じですね。」


「そうか。それで分かった。リオンハルトを守るのもそのためか。」


その時だった。


「ディー!そこにいますよねー!」


崖の上からカイルの心配して呼ぶ声が聞こえた。


「ああ、今行くー!」


「ディー、我の背に乗れ。」


「レグルス様の背中に?」


ディアーナがこわごわ背に跨ると、レグルスは羽根を広げてふわっと一羽ばたきで崖の上まで飛んでカイルの目の前に降りた。


「へっ⁈聖獣様とお嬢…⁈」


「ディー、この者は?」


「はい。私の従者でカイルと申します。

ここではルークと呼んでいます。」


「そうか。家出娘の守役か。」


「そんな!レグルス様!」


「ははっ。そろそろ散歩も終わろうかの。ん…?」


 突然レグルスの和やかな雰囲気が一変して、暗闇に目を凝らしている。


「見えるか?砦の方角の森の中に幾つか灯りが見えた。」


ディアーナも夜目はきく方だが、遠すぎてよく分からない。


「俺にお任せを。」


カイルが遠距離の集音魔法を発動する。


「微かにですが、たくさんの足音がします。

百、いや、二百以上、こちらに向かっています。」


「こんな時間に砦の方角からとなると敵襲だ!

すぐに戻るぞ。リオンハルトに知らせねば。

二人とも我の背に乗れ!」



 「何だと!夜襲が来る?」


レグルスから知らせを聞いたリオンハルトが唇を噛む。

 こんな時間に迷わずこちらに向かって来るとは、初めからこの場所に別動隊がいることを知っているということだ。

 明日の奇襲というのは偽りで、最初から仕組まれていたというのか。

誰がこのことを漏らしたのかは分からないが、今、この時点でリオンハルト達のこの隊が危機的状況に置かれているのは確かだ。

 腹を括ったリオンハルトはすぐさま命令を下す。


「敵襲だ!皆、戦闘体勢につけ!

敵の数はおよそ二百以上。もうすぐ森を抜ける。

大軍に囲まれていると思え。それを突破する為(やじり)形戦闘隊型を取る。

俺を先頭にその後ろにエディとルドルフ、その後を第一、最後尾を第三で固めろ。

敵の真ん中を突っ切る。皆、全力で行くぞ!」


「「おおーっ!!」」


 直後に森から黒々とした敵兵が姿を現した。

その数目測で三百以上、こちらの5、6倍はいる。

 ドニエーブル軍の兵士達は、てっきり寝静まっていたところを慌てふためいて出てきたと思っていたのに、戦闘体勢を整えているローゼンシア軍を見て怪訝な顔をしている。

それでも数を頼みにジリジリと間を詰めて来る。

 それにエビルベアなど何体か魔獣もいるようで、魔道具か薬で隷属させて興奮した大きな唸り声も聞こえる。

 久々の戦闘にディアーナは思わず武者震いをすると、敵を前に怯えていると勘違いした周りの大きな男達が声をかけてくる。


「坊主、大丈夫だ。俺達が守ってやる。」


「そうだ、遅れずついてこいよ。」


「は、はい…。」


 その時、一回り大きな姿になったレグルスが眩く金色に輝きを放ちながらリオンハルトの横に並ぶ。


「魔獣は我に任せろ。皆の者、リオンハルトと共に行け。女神の加護を信じて!」


「敵の中央を突破する!皆、俺に続け!」


 走り出す二人の金色に輝く姿を追って、ディアーナ達も剣を抜き、武器を構えて敵軍の中に突破口を作るべく突っ込んで行った。












「見ーたーなー!」

「いや、その、ごめんなさい。少年と思ってました。」

「……。」


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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