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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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41 出陣

風雲急を告げる



 ディアーナが帝都ビエナブルクで新しい皇子の宣誓式と夜会を大々的に報じる新聞を買い漁り、ミリアムによって描かれた美麗な夜会の一コマの推し絵を祭壇に飾り、毎日眺めてニマニマしていた頃、ローゼンシア帝国の最北の地を守るコルネリゼ辺境伯領では不穏な空気に包まれていた。


 四ヶ月ほど前、ディアーナもデビュタントの夜会で会ったコルネリゼ辺境伯が落馬して足を骨折し、杖のいる生活となったため、不承不承に末の子でまだ成人して間もない息子に辺境伯の地位を譲った。

 新しい辺境伯は武勇共に見どころのある若者だったが、若いだけに経験とコルネリゼ騎士団の統率力の不足は否めない。

 先日、そんなゴタゴタしていたところをまるで狙ったかのように、隣国のドニエーブル帝国との国境を守っている砦が襲撃を受けた。

 突然国境線を越えてドニエーブル帝国の軍隊が押し寄せてきたのである。

ドニエーブル帝国とのこれまでの関係は、信仰する宗教の違いもあり、ここ100年ほどは国境を巡って小規模な小競り合いを繰り返す不安定な状態が続いている。

 ドニエーブル帝国との国境は、西は延々と続く高い山脈、東には広大な森と海まで流れる広い大河によって守られていた。

 その山脈の切れ目の数少ない峠道を通って襲って来た軍隊と、国境の砦を巡って激しい攻防があり、若き辺境伯の奮闘虚しくついに陥落してしまった。

そしてその砦を足掛かりに、付近の村を蹂躙して領内をゆっくり南下しているという。

 もしコルネリゼ領を占領されるとビエナブルクまでは目と鼻の先だ。

そして先日、急きょコルネリゼ辺境伯の応援要請を受けてローゼンシア帝国騎士団が派遣されることとなった。


 思いもよらぬ知らせに、アレクサンダー皇太子の葬送からの先日のリオンハルト皇子の慶事に浮かれていたビエナブルクの街と宮廷は大混乱に陥った。

 皇帝の病気の悪化や皇太子の死去による国内の不安やコルネリゼ領のことも含めて、まるで国力が低下していることを見透かすようなドニエーブル帝国の突然の侵略に、皇帝を始め宰相や高官達も右往左往する中、リオンハルトだけは冷静だった。

 そう、リオンハルトはこの東の大国から起こるであろう世界を巻き込む戦乱と混乱の事態を聖コンティス王国のモラーニュ師長に下された予言として聞いていた。

それを防ぐため、自分に与えられた役割を思い出す。

 故意か偶然かは分からないが、自分がここにこうしてたどり着いたのは、今まで関わってきた人達の真摯で深い愛情があったことに疑いがないからだ。

そして亡き母たちが繋いでくれたこの命と思いを持って、これからは自分で運命を切り拓いて生きていくのだ。

 今、リオンハルトは出陣の報を受け、武者震いに似た胸の高まりを感じていた。



 二日後、大急ぎで出撃の準備を終えた騎士団は、帝宮前の広場にて大規模な出陣式を行うこととなった。

 高々と掲げられた、王冠を戴いた翼のある金獅子と赤い薔薇の国旗が並ぶ広場の正面に皇帝が立ち、その前に臙脂色の制服を着た近衛兵二十名とその後ろに黒の軍服の第一騎士団を中心とした三百人の騎士が整列している。

 その一団の先頭には今回の将軍に任命された、一きわ煌びやかな近衛の制服を纏った元帥代理のチェザーレ ベルゼルクと副将軍に任命された黒い軍服にマント姿のリオンハルトが並んで立っていた。

 そして皇帝より出撃の命が下される。


「勇猛で誇り高きローゼンシア帝国の騎士達よ。

我等が故郷を民を守る為、今こそ忌まわしき侵略者どもを撃て。

神聖なる翼のある獅子と赤き薔薇の御旗の元にその忠誠を示す時が来た。

征け!女神アルテーアの加護と共に!」


 と、力強い皇帝の檄に応えたのは将軍であるチェザーレだ。

大袈裟な身振り手振りで、


「偉大なる女神の加護を受けし我が祖国、ローゼンシア帝国に永遠の栄光を!」


と叫んだ。

そしてなぜか皇帝陛下に背を向け、後ろに並んでいる騎士達と詰めかけたたくさんの民衆の方を向き、腰に手を当てて右手の握り拳を突き上げて、キランと効果音が付きそうな白い歯を見せて決め顔を見せた。

 騎士達の最後列の端から、同じ黒い軍服を着てそのチェザーレの様子を見ていたディアーナはげっそりした。

一体自分は何を見せられているのか?

これでは騎士達の士気を上げるどころか、こんなのが将軍で大丈夫なのかと不安を煽るばかりである。

 しかもこんなアホの婚約者にされていたかも知れないと思うと身慄いがした。

隣でカイルもプルプル笑いを堪えている。

 そこに居並ぶ騎士達も一瞬ポカンとしたが、間を置いてブーツの踵を鳴らし、胸の前に握り拳を当てた騎士の礼をしながら、


「「ローゼンシア帝国に栄光あれ!!」」


と、一斉に叫んだ。


 そして空気の読める男、リオンハルトが左手の金の腕輪をなぞると金色の眩しい光が放たれ、正面に黄金色のたてがみの翼のある大きな獅子が現れた。

会場に悲鳴のようなどよめきが広がる。

 その金色の姿を見た皇帝がサッと膝をつく。

そんな皇帝陛下の姿を見て騎士達も慌ててそれに倣う。

会場の両側で観覧していた貴族達やベルゼルク大公も渋々といった様子で膝を折る。

 そんな中、朗々とした声で聖獣レグルスが言葉を発した。


「時は満ちた。

女神に選ばれし者、リオンハルト フォン ローゼンシアよ。

この世の混乱を統べる為、我と共に今征かん。

皆の者、出撃せよ!」


 レグルスの咆哮とともに行進を始めた騎士団に周りから盛大な歓声が上がる。

 

 その歓声に見送られて、白馬に跨がりマントを翻し王子様然とした容姿ながら、何となく良いところで主役を奪われて不貞腐れたような様子のチェザーレを先頭にこの日、三日間の日程をかけて帝国騎士団は北のコルネリゼ辺境伯領へと行軍を開始した。

 その騎士達の中に混じってディアーナはずっと先を行く金色の獅子とともに進むリオンハルトの金色の長い髪が揺れる広い背中を目で追っていた。





 

ディアーナはもちろん推し(リオンハルト)の活躍を見たくて従軍します。



お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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