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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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39 もう一人の皇子

紛う方なき皇子様。

タイトル変更しました



 夏の初めの眩しい光が朝のビエナブルクの街に降り注いでいる。

街の至る所で見頃を迎えたバラやピオニーの花が甘い香りを漂わせ、二ヶ月前のアレクサンダー皇太子の葬送の日とは全く違う華やいだ雰囲気を漂わせていた。


 十日前、突如もたらされた帝宮からの発表にビエナブルクはもちろん、国中が歓喜に湧いた。

特に帝国の最西にあるマルティオス辺境伯領ではお祭り騒ぎだったという。

 先頃二十一才の若さで逝去されたアレクサンダー皇太子の双子の兄弟が見つかった。

その者の名はリオンハルト ライエン。

 双子の禁忌を憂いた亡きエリーザベト皇妃が密かに侍女に託し、マルティオス領で育ち、聖コンティス国王の庇護を受け聖騎士となり、この度ローゼンシア皇帝の唯一の継子として帰国し、本日ビエナブルク大神殿にて正式に皇子としての宣誓式が行われることとなった。

 しかもその新たな皇子は、ローゼンシア帝国の国章にもなっている聖獣、金色の獅子を伴っての帰国ということで多くの人が一目その姿を見ようと朝から大神殿に詰めかけ今か今かと到着を待っていた。


 真紅の制服を着た近衛騎士達に護衛され、翼のある獅子と薔薇の紋章のついた四頭立ての馬車から降り立ったのは、聖騎士のような真っ白な騎士服にローゼンシア帝国の紋章が刺繍されたマントを羽織った、帝室特有の黄金色に耀く長い髪と皇妃と同じ紫紺の瞳を持つ背の高い凛々しい青年だった。

そのアレクサンダー皇太子にそっくりの光り輝くような麗しい皇子を見た人々は、割れんばかりの歓喜の声を上げる。

そして同じく馬車から降りてきた翼のある金色の大きな獅子に人々は感嘆の声を漏らし、中には跪き祈る者もいる。

 二人は辺りを見廻し割れんばかりの歓声の中、軽く手を上げて神殿の中に入っていった。


 神殿の中の祭壇の前には、中央に聖獣と右手に皇帝、左手に大司教が並び、その前まで進んだリオンハルトは跪き、堂々とした口調でローゼンシア帝室の正統なる血を受け継ぐ皇子として、この国に忠誠を誓う宣誓をした。

 双子に対する迷信は聖獣によって否定され、晴れてリオンハルトは本来の名前、リオンハルト フォン ローゼンシアの名を名乗ることになった。



 そしてその日の夜、サラセナ宮殿の大広間にてたくさんの貴族達を集め、新たな皇子となったリオンハルトのお披露目の夜会が開かれた。

 大きな煌びやかな広間の正面には一段高くなった場所に玉座があり、今日はその横にもう一つ同じ椅子が置かれてある。

その後ろにはこの国の紋章のタペストリーが下がっていた。

 ディアーナはそれを見て、昨年の秋の初め、同じ場所で行われたデビュタントの夜会を思い出していた。

 あれからまだ一年も経っていないのにもう随分昔のことのように感じる。

 あの時は、今日の日のことを想像も出来なかった。

母アマリアに送り出され、兄リオンハルトとダンスできることを願い、思いがけずアレクサンダー皇太子殿下とワルツを踊ったあの日のことは、もう二度とは戻らない幸せで大切な思い出で、失ってしまったそんな日々を思い出すと今も心のどこかで癒しきれない傷口が疼いている。

 そんなデビュタントの日のことに想いを馳せながら、ディアーナはいつもの姿でメイドとして大広間の柱の影の隅っこに立っていた。


 実は先日、テレンスからこの夜会にマルティオス辺境伯令嬢として参加しないかという話が出た。

なんならそのためのドレスも用意してやるとの申し出も。

一瞬、リオンハルトとの再会に胸が高まったが、今の状況を思い出し泣く泣く断念した。

 皇帝や多くの貴族達や民衆に熱狂的に迎えられたリオンハルトだが、陰で一部の者達にはその存在を快く思われていなかった。

 主に、その出生について懐疑的だったり、双子に対する拭えない忌避感や皇位継承順位についての不都合があるといったところだ。

 そのため、一部の貴族からの反対もあっていきなりの立太子が見送られたらしい。

 テレンスも言っていたが、そのせいかこの短い間にも二度も暗殺の危機があった。

それはもちろん未遂に終わっていて、聖獣や聖騎士達に阻止され、本人も相当強かったということだった。

が、そんな命を狙われるような危ない状況の中、自分が名乗り出ても良いのかディアーナは悩んでいた。

 今、自分はベルゼルク大公とその息子チェザーレから既成事実まで作ってもと婚約を迫られている。

受けるつもりは更々無いし、もちろん向こうの思うままになるほど自分は弱くはないが、今、事を荒立てたら立場が悪くなるのはマルティオス辺境伯である父で、ますます恨みを買うのは兄だったリオンハルトだ。

だからこのまま身分を隠して影からリオンハルトを守っていくのが良いのかもしれないと思う。

どうせ今までのような兄妹ではいられないのだから。


 そんな考えに沈んでいたらファンファーレが鳴り響き、皇帝陛下とともにリオンハルトが入場してきた。

 昼間とは違い、金の刺繍がされた煌びやかな大礼服に片側だけのマント、ペリースを纏い青いサッシュを斜めにかけたリオンハルトは正しく皇子様だった。

そのあまりの美々しさに会場にいた婦人達は頬を染め、皆息を呑む。

 何よりディアーナを驚かせたのはその黄金色の髪と紫紺色の瞳だった。

そのせいか亡きアレクサンダー殿下にますます似ていると思った。

亡き母はとんでもない秘密を背負っていたことに心が冷える思いがする。

 そして正面の玉座の前に立った二人に、皆一斉にお辞儀をする。


「「帝国の太陽であらせられる皇帝陛下とリオンハルト殿下に変わらぬ忠誠を。」」


「皆の者、頭を上げよ。

今宵、我が新たな息子、リオンハルトの披露の為に集まってくれたこと嬉しく思う。

今後、亡きアレクサンダーの代わりにこのローゼンシア帝国を支え導く者である。

若輩者ゆえ、これからも皆の変わらぬ力添えを望む。」


 以前の病に喘ぐ姿ではなく、力強い皇帝の宣言に夜会に出席した多くの者が感動を持って見守る中、リオンハルトは騎士のように皇帝の前に片膝をついて跪き誓う。


「我が名と誇りにかけてローゼンシア帝国にこの身を捧げんと誓う。」


その高潔で気高い姿にローゼンシア帝国の輝かしい未来を想像し、その場にいた人々は歓喜した。



 


 

リオンハルトまたクラスチェンジしました。

ディアーナはちょっと寂しい。


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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