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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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27/59

27 聖廟

リオンハルトの墓参り




 聖騎士団での仕事にも慣れ、久々の休日の午後、リオンハルトとエディの二人は王都ツェルンの街を歩いていた。

 今日はいつもの騎士服ではなく冒険者の時のシンプルな私服だ。


 ツェルンの街は一月少し前に二人がキマイラを討伐して以来、再び安全に街道が開通したこともありさまざまな国の人達や物でますます賑わっている。

 聖コンティス王国の北には大陸の最も北に位置し、寒冷でローゼンシア帝国に並ぶ広大な国土を有する軍事国家、ドニエーブル帝国がある。

数少ない南への交易路が通れることになった今、その国の商人達が自国では作れない数々の農作物の買付や北の海産物の交易に訪れている。

 市場には一足早く春を迎える温暖な南の国々の珍しい作物や物品も並び目を楽しませている。

 そんな街角の花屋でリオンハルトはケスニア教では聖なる花とされる白百合の花を中心に春の花をあしらった花束を買った。

 それを手に向かうのは街の中心から少し離れた小高い丘の上にある聖廟だ。


 白い石造りの聖廟にはケスニア教の聖人でこの国の初代の王となった聖コンティスが祀られていて、そこはカレルギー王家の墓所でもあり、たくさんの観光客や巡礼者が詰めかけていた。


 聖騎士に守られた立派な門をくぐると広い階段があり、その両側に大理石でできた大きな墓石が立ち並び、その奥には高い尖塔のある廟が建っていた。

 リオンハルトは神聖な気配の中に強い魔力を感じた。

どうやらこの聖廟は守護の結界の要となっているようだ。

そこに葬られた王族達は死してなお、この国を守っているらしい。

 しばらく墓石を巡っていると、リオンハルトの目指す他に比べて小さな墓を見つけた。

石に刻まれた名は「エリーザベト カレルギー ローゼンシア」元ローゼンシア帝国皇妃でリオンハルトの生みの母だ。

 その小さな墓には遺髪のみが納められていて、墓前にはまだ新しいたくさんの花が置かれてあった。

生前の慕われぶりが分かるようなその墓に、リオンハルトも先程買った白い花束を置きひざまづく。

 もちろん顔も知らぬ母だが、首から下げた指輪がふわりと温かくなった気がした。


「やっぱりお前って皇子サマだったんだな。」


背後に立っていたエディがわざとふざけるように呟く。


「そうみたいだな。まだ実感はないが。」


そう言いながら二人は一番奥に建つ聖廟へと歩き出す。

 広い園内にはたくさんの人が歩いているが、二人の青年に特に目を留める者はいない。


「育ての母を殺され、俺も命を狙われて故郷を出るしかなかった。

どうしてこんなことになったのか、この指輪のこと、本当の母のことを知りたいと思った。

正直、皇子サマなんてなりたくはなかったがな。」


「そうか。

俺も結局周りの都合に振り回されて、今、こんな事になったが、お前に比べりゃマシか。

母親はまだまだ元気にやってるし。

それでお前、これからどうするんだ?」


「ああ、()()()の言う「運命」に乗ってみようと思う。

俺は一体自分が何者で何をすべきかを知りたいんだ。」


 そう言ってリオンハルトは美しい彫刻で飾られた聖廟の入口の重い扉を開く。

 高い天井から光の差し込む広い廟内には、正面に美しいフレスコ画でケスニア教の神話が描かれた祭壇があり、その前に文字の刻まれた台形の大きな石碑があった。

ここが聖コンティスの墓所といわれている。

 ひっそりとした廟内には幾人かのの巡礼者や観光客らが祈ったり、美術館のような内装を見て回ったりしていた。

 リオンハルトはこの空間に満ちている強力な魔力を感じていた。


(やはりこの場には特別な何かがあるな。

さすが魔術師の祖といわれるだけあって息苦しいほどの濃い魔力だ。)


「俺はそんなに強い魔力は持っていないけど、何か此処は圧を感じるな。」


エディも何かを感じているようだ。


「そうだ、この場所は聖地だ。

ここから強い守りの結界が張られていて王都を守護しているようだ。

そしてこの廟の地下には「深淵の泉」と呼ばれる王族しか入ることの出来ない試練を受ける場所があるらしい。」


「何だそれ。ダンジョンみたいなものか?」


「多分、そんなものだろう。

必要となった時だけそこへ行く扉が開かれ、その試練を受けることを認められた者のみが入れるそうだ。

そしてその試練の内容も様々で何が起こるか分からないらしい。」


「なんか…怖いな。」


「そうだな…。

この国の長い歴史の中で数回、厄災が起こる時に開かれたことがあるそうだ。

それが今らしい。

運命に導かれた選ばれた者が此処に現れると啓示があったという。

それが俺だと言われた…。」


「行くのか…?」


「ああ。正直怖いとは思う。

でもそれが俺がここまで来た運命だと思うから。

それに今まで死んだやつはいないそうだし。」


「お前、見かけによらず脳筋か⁈」


「……。 養父(おやじ)と義妹をはじめ、そういう連中の中で育ったからな。」


「例の妹のゴリラ姫か…。」


 リオンハルトは久しぶりに故郷のマルティオス辺境伯領に思いを馳せる。

 春の初めのこの時期には、きっと青い海を望む丘や街のあちこちでアーモンドの木に薄いピンクの小さな花が満開になっていることだろう。

 今は運命という試練の真っ只中にいてもがいている状態だが、全てを片付けて必ずディアーナの待つ美しい故郷に帰ると決意を新たにした。




早春に地中海沿岸などに咲くアーモンドは日本の桜にそっくりの淡いピンクの花です。 


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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