25 聖コンティス国王への拝謁
キマイラ討伐その後
あの日から10日ほどたった冬の日、リオとエディの二人は王都ツェルンの中央にそびえ立つ白亜の王城の豪華な一室にいた。
二人ともあのキマイラ討伐の時に負った傷や凍傷もすっかり癒え、今はなぜか真っ白な華やかな儀礼用の騎士服に身を包んでいる。
「それにしてもいろいろ大変だったな。」
と、普段と違い優雅な手つきで出された紅茶を飲んでいたエディがリオに話しかける。
リオは窓辺に立ち、眼下に広がる街並みと遠くの白い雪を乗せた山々を眺めている。
そう、キマイラを倒した後がまた大変だった。
毒にやられたエディに異常状態を回復させる高価なポーションを飲ませ、二人でキマイラの死骸から色々な色が混じった大人の拳より大きな魔石を取り出し、リオが消し炭にした。
その後を聖水で清め、雪の中を下山し再び近くのエルドの街まで戻ってきた。
そしてそこで王都の冒険者ギルドにキマイラの討伐完了の知らせと、山中にキマイラ発生の元となったと予測する瘴気だまりがあることを急ぎ伝える。
その後すぐに任務完了の受付と二人にS級への昇格認定通知と、聖コンティス国軍の聖騎士団より瘴気だまりの浄化に一小隊を派遣するのでそれに同行して欲しいとの連絡が帰ってきた。
その2日後、雪山への装備を固めた十二人の小隊と共にリオとエディは再び雪深いウォレム山脈へと登ることになった。
リオンハルトが予測した通り、キマイラを倒した場所から少し離れた谷の底に大きな瘴気だまりを発見した。
元々休火山であるその地には、硫黄の臭いが立ちこめ、湯が湧いている池があった。
それがいつしか瘴気に汚染され、真っ黒な瘴気だまりとなり、その水を飲んだ動物が魔獣と化したようだ。
そして浄化を出来る聖騎士や浄化のための魔道具や聖水を用いて水源の池は見事に浄化され、そこは良質の温泉となった。
キマイラを倒し瘴気だまりも浄化され、この地にはこれから人も戻り、街道も再開して再び北のドニエーブル帝国との交易で賑わう場所となることだろう。
そして今、このことに大変喜んだ聖コンティス国王が褒章を与えるために二人の冒険者を王宮へに呼んだのだった。
二人は王都へ還る聖騎士と共にツェルンの街へと入ると、まるで凱旋する英雄を迎えるように街の人々が詰めかけ、歓喜の花びらと、
「勇者様ー!」
と、呼びかけるたくさんの声とともに王宮へと入った。
そして城の客間を与えられ、謁見用にこのような美麗な騎士服まで用意してもらい、これから王に拝謁するために待っていた。
「そんなキラキラした服を着ているとホントお前、王子様みたいだな。」
リオンハルトは今日の謁見のため、普段は一つに三つ編みにしている背中まである髪を解き首の後ろで緩くリボンで括っている。
「お前だって、そんな格好で優雅にお茶を飲んでるとどこかの貴族のご令息に見えるぞ。」
「いや、俺元々貴族の令息だし。
勝手に辞めたけど。」
「ま、慣れないのはお互い様か。」
と二人で笑い合っていると、扉がノックされ、侍従が入ってきた。
リオとエディは侍従に案内されて王宮の奥へと進む。
ケスニア教の神殿によく似た造りの美しい王宮は広い庭園を回廊で繋ぐように建っていて、まだ花の少ない冬の庭に小さな白いスノードロップがひっそりと蕾を付けている。
(王族に会いたいとは思っていたが、王直々に謁見できるとはな。)
リオンハルトは思わぬ機会に胸の隠しに入れてある紋章のついた指輪をそっと押さえた。
やがて着いたのは王宮の奥の私的な謁見の部屋のようだ。
大きな両開きの扉が開かれ、中規模なホールの中には正面に聖杯を囲む二本の百合の花の紋章の旗が掲げられ、その前の壇上の玉座にこの国の王、フェルディナンド ドゥ カレルギーと王妃マリールイーズの両陛下が座っていた。
初めて拝謁するフェルディナンド陛下は歳の頃は四十代半ばぐらいか、細くはないがすらりとした体格に魔力が多いのだろう、薄い金色の癖のない長い髪を後ろに垂らし、紫紺のタンザナイトのような瞳を持つ美丈夫だった。
静かな威厳を湛え、神話に出てくるエルフの王のようだとリオンハルトは思った。
隣に座る王妃は少しふくよかで、栗色の髪に緑の瞳の優しそうな美女だった。
王の隣には十代半ばぐらいの王と同じ紫紺の瞳に栗色の髪の賢そうな少年と王妃の隣にはその少し上ぐらいの王妃に良く似た少女が立っていた。
この国の王太子と王女であろう。
壇の下には壮年の大臣らしき男性が二人と長い白髪にローブを着た魔術師のような老人と、反対側には同じ白い騎士服に勲章が並んだサッシュベルトをつけた騎士が三人並んでいた。
リオンハルトとエディはその中央を真っ直ぐ進み、王の前でローゼンシア帝国流の左膝を立てて跪き、右手を胸の前につけ頭を下げる騎士の礼をとった。
そこで大臣らしき人が進み出て、王に二人を紹介する。
「この度、長年ウォレム山脈に棲みつき辺りに甚大な被害をもたらしていたキマイラを見事討伐致しましたS級冒険者達でございます。
そして今回得ましたキマイラから取り出した魔石を献上するとのことでございます。」
隅に控えていた侍従がトレーに載せた魔石を掲げて王の前に差し出した。
玉座より立ち上がったフェルディナンド王がそれに近づく。
「二人とも楽にせよ。
このたびの働き誠に嬉しく思う。よくぞ長年の懸念であったキマイラを倒してくれたな。
礼を言う。」
顔を上げた二人は
「勿体なきお言葉にございます。」
と、畏まる。
「これがキマイラの魔石か。何とも美しいものよ。
それに素晴らしい魔力量だ。国の宝として然るべき時に使わせてもらおう。」
と、王はそのブラックオパールのような魔石を嬉しそうに眺めた。
続けて大臣が告げる。
「よって今回の褒章として冒険者ギルドに依頼していた報酬に上乗せした金一封と、冒険者リオンハルト ライエン、エドモンド ハンスタインの両名に我が聖コンティス王国の聖騎士の称号を与える。」
フェルディナンド王が二人の前へ進み出て、跪く二人の肩に銀の剣を当てる。
「勇敢なる勇者達よ。
我、フェルディナンド ドゥ カレルギーの名に於いて誉れ高き聖コンティス王国の聖騎士と成すことを許す。
女神アルテーアの忠実なる使徒たらんことを。」
「「謹んでお誓い致します。」」
と、二人が応えると盛大な拍手が起こった。
フェルディナンド王は表情を和らげ二人に問う。
「高潔なる騎士達よ。他に望むものはないか?」
その言葉にエディと顔を見合わせたリオンハルトが一歩前へ出て跪く。
「寛大なる王に伏して御願いしたき儀がございます。
どうかこの指輪を御覧頂きたく。」
と、リオンハルトはハンカチに載せた指輪を捧げた。
訝しげに指輪をつまみ上げたフェルディナンド王の顔がその瞬間、驚愕に見開かれた。
「こ、この指輪は…エリーザベトのか!」
その金の指輪には聖杯を囲む二本の百合の花の紋章とその真ん中に大きなタンザナイトが嵌っていた。
「リオンハルト ライエンと言ったな。
この指輪をどこで?」
「私の母がずっと隠し持っていました。
そして亡くなる時に私に託したのです。
私の本当の母の物だと。
母は昔、ローゼンシア帝国の宮廷でエリーザベト皇妃様の侍女をしていました。」
リオンハルトは立ち上がり王より返された指輪を指に嵌めた。
不思議なことにその細い指輪はリオンハルトの左手の中指にきっちりと収まった。
すると突然指輪からパァーッと眩しい光が辺りを包み、光が収まった後、そこには濃い金色に輝く真っ直ぐな長い髪と指輪と同じタンザナイトのような紫紺の瞳を持つ青年が立っていた。
ステイタスウィンドウがあったら(無い)
リオンハルト: 職業 冒険者→S級冒険者→聖騎士→???
とかなる。
エディの本名が登場しました。
お読みいただきありがとうございます。
不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。




