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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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24/59

24 魔獣討伐 下

リオとエディのタッグバトル



 見上げるようなキマイラを目前にしてエディが呟く。


「デケェ…。」


「ああ…魔力が消されるって言ってたな。ヤバいな。」


「なら、試してみるか。」


 エディは構えた二本の剣をクロスさせると風魔法の風の刃が生まれキマイラに向かって放った。

勢いを増しながら刃がキマイラの翼に届く瞬間、フッとかき消されるように風の刃が消えた。

 そしてキマイラの金色の目がギロッとこちらを向き、くちばしからゴォッと激しい風雪のブリザードが放たれた。

 咄嗟にリオンハルトが火魔法の豪火を放ち、ブリザードとぶつかり合って爆発のような水蒸気が上がり視界が悪くなる。

その白い煙の中からいつの間に近付いたのかキマイラの鋭い爪が襲いかかった。

すれすれで辛うじて避けた二人は地面に倒れ伏す。

 勢い余った鋭い爪がそのまま横のカチコチに凍った木をごなごなに砕いた。


「あっぶねぇ。リオが相殺してくれてなかったら俺も粉々になって死んでたな。」


「いや、凍った時点で生きてないだろ。」


「全く…やっぱり魔法はムリか。」


「だったら力でねじ伏せるのみ!!」


「了解!」


 二人は再び襲ってきたブリザードを避けながら攻撃の機会を狙う。

しかし図体は大きいがキマイラは俊敏な動きと翼があるためになかなか捉えることが出来ない。

そして二人を襲うのは鋭い爪とブリザードだけではない。

尾の部分の長い大蛇が毒を吐きながら牙で襲いかかる。

防戦一方になる二人は切り立った崖の方へと追い詰められていく。

 何度目かのブリザードが放たれ、リオンハルトの火魔法とぶつかり水蒸気で辺りが見えなくなった時、エディがキマイラの目を盗み後ろに回り込んだ。

そして右手の剣で渾身の力で大蛇の頭を切り落とした。

血しぶきと口から毒を吹きながら大蛇の頭が飛ぶ。

その時、


「うあぁぁっ!!」


エディが声を上げ倒れ込む。


「エディ! 大丈夫か!」


駆け寄ろうとしたリオンハルトに、


「近付くな! 少し毒を浴びた。

体が痺れるが何とか生きてる!」


 キマイラは尾を斬られた痛みに激しく暴れ、エディに気を取られたリオンハルトは後ろ足で弾き飛ばされ雪で覆われた斜面を崖の方へと滑り落ちていく。

咄嗟に崖の手前の倒木に掴まってギリギリ落下を免れた。

 リオンハルトは急いで体勢を立て直そうとするが、雪が深く立ち上がることが出来ない。

キマイラは斜面の上からリオンハルトを見下ろし、再びブリザードを吐こうと嘴を大きく開ける。

動けないリオンハルトに放たれたブリザードにエディの叫ぶ声が重なった。


(間に合わない!!)



 エディは痺れる体で這うように斜面の上からキマイラのブリザードに包まれるリオを見て、血が逆流するような恐怖を覚えた。

声の限りリオの名を呼ぶが、アレをまともにくらって無事でいられるはずは無かった。

しばらくしてリオを包んだ白い嵐が治ると、信じられないことにそのまま無事な姿でリオが立っていた。


(リオ!! 良かった。いや、あれはリオか…?)


白い光に包まれ立つ男は形こそリオのままだが、茶色だった長い髪は輝くような黄金色に、榛色だった瞳は青い紫に変わっていた。


 

 リオンハルトは衝撃に身構えた時、突然リオンハルトを守るように白い光が身体を包み込み、ブリザードは周囲を凍らせ吹き抜けていった。

リオンハルトは奇跡のように何の衝撃も感じる事なく無傷であった。


(こ、これは防護の結界? 一体どういう事だ…。)


 そしてリオンハルトは自分のローブの下、ファイアリザードの皮でできた胸鎧(きょうこう)の胸元が光っているのを見た。

ハッとして首から下げた細い革紐を手繰り寄せると、その先に通したタンザナイトの指輪が白く輝いていた。

 ブリザードを浴びながらも何故か無事な姿で立っているリオンハルトを見たキマイラは雄叫びを上げ、翼を広げてこちらを見据える。

次は直接攻撃してくるのか、崖を背にしたリオンハルトには不利な状況だ。

咄嗟に養父ジェラールの言葉が浮かんだ。


『もしもの時はごちゃごちゃ考えるな。本能のまま身体を動かせ。』


「エディ、そこから離れろ!」


「えっ?」


 突然呼ばれたエディは体が痺れてふらついて足を滑らせ、リオンハルトの方へ転がり落ちてきた。

リオンハルトは左手を前へ突き出し手のひらに炎の魔術を展開する。


「おい、魔術は無理…」


 エディが言い終わる前に見たことが無いような巨大な火球(ファイヤボール)が放たれた。

火球は飛び立とうとしていたキマイラを大きく外れ、左の山の雪の斜面にぶつかり爆発を起こし雪煙をたてる。

すると斜面の大量の雪が地響きをたてて雪崩を起こしあっという間に押し寄せてキマイラを飲み込んだ。

雪崩に押し流されてもがくキマイラが右の切り通しの斜面にぶつかり止まった。

 その間にリオンハルトは背中のコンポジットボウに矢をつがえ、狙いを定め(ストリング)をギリギリと引く。

矢尻からはユラユラと炎が揺らぐ。

魔力がだめでも(パワー)で押し切るのみだ。

キマイラの三つある目のまん中、魔眼を狙い矢を放つ。

矢は真っ直ぐキマイラに向かって飛び、勢い余って魔眼だけでなく鷲のような頭ごと吹き飛ばした。

 頭部を失ったキマイラの体は、爪を振り回して激しくもがいていたが、しばらくすると雪の中に地響きを立てて埋もれるように倒れて動かなくなった。


「終わった…のか。」


「終わったな…。」


二人はそのまま雪の上へへたり込んだ。

自然と笑いが込み上げる。


「リオ、さっきのは何だ。

アレをくらって何ともないのか?

それにあの髪の色と目の色が違っていたが何故なんだ。」


リオンハルトはいつもの茶色の髪と榛色の瞳に戻っている。


 「多分コレのおかげだ。」


と、首からかけた革紐の先にぶら下がる指輪を見せた。


「これはどうした?」


「亡き母のものらしい。

これが俺を守ってくれたようだ。髪と目の色もこのせいみたいだ。」


エディは紐の先の指輪を見つめる。


「この紋章はまさか聖コンティス王国の…⁈」


「そうだ。カレルギー王家の紋章だ。」


「どうしてお前が持っている。」


「養母が亡くなる時俺に託した。だから王族に会うためこの国に来た。

俺が何者かを知るために。」





意外と脳筋な勇者見習いリオンハルト


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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