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運命の皇子と伝説の乙女  作者: ふう
第一章 皇子の帰還

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14 帝国騎士団

ディアーナ対戦する。



 早朝、サラセナ宮殿の東の端にある騎士団の広い鍛錬場に金属のぶつかる鋭い音が響く。


 宮殿で働く多くの人がまだ目を覚ます前の冷たい空気を震わせるように長い槍と剣を合わせているのは、男性用の騎士見習い服に長い黒髪を一つに束ねたディアーナとまだ新しい騎士服を着たカイルだ。

 髪の毛には魔力が宿るといわれるため、男性でも魔術師や魔力の多い者には髪の長い者は多い。


 まだ誰もいない鍛錬場でカイルが次々と突き出す訓練用の槍を、同じく訓練用に刃を潰した剣でディアーナが受け止めかわしている。

でも槍だとストロークが長いためなかなか近付くことが出来ず剣では防御一方になり攻撃することができない。

こういう時のための魔法での攻撃であるが、人目は無いとはいえたかだか見習いが高度な攻撃魔法を使えるのは不自然なため控えている。

 ジリジリと端へと追い詰められていったディアーナは、カイルが繰り出した鋭い槍の穂先の上に飛び上がりその身をトンと乗せ、そのままふわりと跳ね上がった。

くるりと空中で一回転してカイルの背後に着地して剣を首の後ろギリギリに突き出した。

勝敗は決まった。


「あぁ…まいりました…。」


 穂先を地面につきカイルが残念そうに声を上げ、ディアーナは満足そうに笑った。


 その時、鍛錬場の入口の方から大きな声がした。


「そこの見習い、やるじゃないか。」


二人が振り返るとそこには第一騎士団の分隊長が数人の騎士を連れて朝練のため入ってきた。


「おい、まだ子供(ガキ)じゃないか。

そっちのは新入りか。」


二人は無言で頭を下げる。


「よし、見習い。俺が相手をしてやろう。」


「えっ、そんな…。」


 分隊長は他の騎士から訓練用の剣を受け取り、肩を回しながら中央へと歩いてきた。

ディアーナは困った。

なかなか腕が立ちそうな相手だが、本気を出さなくても負けることはないだろう。

でもただでさえ勝手に潜り込んだ場所で目立つようなことはしたくはない。

カイルでさえそこそこ強いぐらいのフリをしている。


(どうするか…。)


 仕方なくディアーナも少し距離をとり剣を構えた。


「行くぞ、全力で来い!」


 掛け声とともに剣を上段に構えた分隊長がこちらに向かって駆け出し、ディアーナの手前で盛大に足を滑らせ背中と頭を地面にゴンッと鈍い音とともに打ちつけた。

 広い鍛錬場の真ん中に空を見上げて大の字に横たわる大男を見て、周りの者がポカンとする中、ディアーナが言った。


「水溜まりがまだ凍ってたようですね。大丈夫ですか?」


「ああ…。」


と、何が起こったか分からず頭をさすりながら起きあがろうとする男に、ディアーナとカイルは


「失礼します!」


と礼をして逃げるようにその場を去って行く。

後ろから、


「おい待て!お前の名はー!」


と、分隊長の呼ぶ声がするが、聞こえないふりをして鍛錬場を後にした。



「一体どうやったんですか、お嬢。」


と笑いを我慢できないカイルが問う。


「ああ、咄嗟に水溜まりと靴の裏に氷魔法をかけた。」


「それでつるんと!」


クックッとカイルはいつまでも思い出して笑っていた。


 

 そんなカイルと別れて、ディアーナはいつものメイド服に着替えて掃除や食堂の手伝いなど仕事をこなしていく。

 夕方近く、ディアーナとミリアムにメイド長が声をかけてきた。


「アンナとリア、悪いけど急いで第一騎士団の団長室へ行ってくれないかしら。

どうやらティーカップを落として割ってしまったそうなの。

そこのバケツとモップを持っていきなさい。

お願いするわね。」


「はい。すぐに参ります。」


と、返事をして二人は宮殿の東側にある第一騎士団の建物へと急ぐ。


 ローゼンシア帝国には国の騎士団として四つの騎士団がある。

 この第一騎士団はサラセナ宮殿の中に本部を置き、宮城を守っている。

貴族出身者が多く、その中で見目の良い者が選ばれて近衛騎士となり王族の警護をしている。

 第二騎士団は帝都ビエナブルクの警備と治安を守り、都内に本部がある。

 第三騎士団は対魔獣討伐に特化していて遠征に出ることも多く、ビエナブルク郊外に本部を置き広い鍛錬場と馬場を持つ。

 第四騎士団はビエナブルク港に本部を置く海軍である。

何隻もの軍艦を持ち、ディアーナの父、ジェラールも海軍提督の位に就いている。

 ディアーナから見たこの帝国騎士団の感想は、第一が一番弱くて、海軍は別にして、たぶん日頃から実戦を重ねて鍛えている第二、第三騎士団の方が戦力としては上だろうと思う。

 第一騎士団の中にも今朝、手合わせをしかけた分隊長など見どころのありそうな者もいるが、顔と貴族の者のみが選ばれる近衛騎士は、制服も他とは違い、赤地に金モール刺繍がされた華やかなもので、貴族の令嬢やメイドの中でファンクラブがあるとかでキャーキャー騒がれていて、ディアーナは見かけだけの騎士っぽい奴らだと思っている。

 その長たる第一騎士団団長がチェザーレ ベルゼルク公子だ。

皇帝の弟であり、今は病気で伏している皇帝陛下と皇太子殿下の代わりに摂政として事実上帝国を動かしているアウグスト ベルゼルク大公の一人息子である。

年は二十三才。

本来なら皇太子が全ての騎士団のトップである元帥として軍を率いるが、病気のためベルゼルク団長が代理を務めている。

皇太子の従兄弟になり皇位継承三位の高い身分と美形の皇太子によく似ているといわれる容姿と剣の腕前のほどは分からないが、第一騎士団長の肩書きを持つため女性達からの熱い眼差しを集めている。

故に女性との噂話も絶えないが、今最も注目されている人物だといえる。

 ディアーナは思いがけず噂の人物を近くで観察できる好機を得て、期待を持って団長室へと急いだ。




 


近衛騎士団ファンクラブ♡



お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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