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王の剣士4「かりそめの宴」  作者: 雅
第一章「変わる季節」
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第一章「変わる季節」(二)

 王家を語る時、人々の言葉には二つの異なる色調が含まれる。


 一つは、王への畏怖。

 王とは高みにある存在、触れ得ない存在、滅多な事では人々の生活の中に降りては来ない存在だ。

 大いなる統治者として――、寄り難い、寄らざるべき存在として、常に国の頂点にある。


 折々の式典の際に王城の露台に見る王の姿は、人々に高揚と畏怖と畏敬を与えはしても、血の通った存在のように親しみを感じさせる事はなかった。


 その長い治世に証明される、政治、軍事面双方からの手腕は確かなものだ。

 だがそれ以上に、王という存在を際立たせているもの――


 この世界には、法術という力の体系がある。

 法術とは自然の中に満ちる力を利用する技を言い、風や水を操り、大地と対話し、時に高位の法術士は天候すら左右する。


 生活の中に溶け込む穏やかな力や、軍事目的に用いられる破壊的な力まで様々だが、法術は術式と印の組み合わせにより、初めて可能となる技だ。

 法術士になるには長い修養と修練、そして少しばかりの適性が必要とされる。


 だが、王の持つ力は、法術とは次元の異にした。

 王は高位の法術よりも更に強い力を、術式に依る事なく用いる。


 瞬き一つ。

 それこそ、その意思一つで。


 四大公と呼ばれる四人の公爵は、王に近い力を有している。例えば「炎帝公」アスタロト。

 彼女が齢十四にして、地上最大の魔物と言われる黒竜を倒したのは、未だ人々の記憶に新しい。


 だがそのアスタロトすら、王の有する力には並び得ない。


 喩える者すら無い程の、特異な、強大な力――


 王城に近く仕える者でさえ、その姿を前にしただけで、王の身を包む威厳と辺りを圧する力の片鱗に身が竦み、全てを見通すと言われる慧眼の前に、心の奥底を見透かされるような、そんな思いに駆られた。


 政治力、軍事力、それら国家という枠を取り払ったとしても、おそらくその存在は少しも揺るぐ事なく、高みに在り続ける。


 それは、国があり王が存在するのではなく、この王の許に初めて国が存在するのではないかと、そうした印象を抱かせた。


 もしある日ふと、最早国は必要無いと、王が玉座を立ったら――


 そんな事で崩れる脆弱な国家体制ではないと判っていても、それは時折高官達の間で密かな冗談混じりの会話に上るほど、どこか真実味を帯びた仮定だった。




 そしてもう一つ。


 王への畏怖に添うように、並び立つ親愛がある。

 人々が王家に触れた時に込められる愛情と親しみは、王への寄り難い畏敬とは別に、確実に人々の中に存在した。


 その最たるものが、今年十五を迎える王女エアリディアルと、齢四歳になる王子ファルシオンについて話す時だ。


 聡明で美しい王女は国の誇りであったし、何より幼い王子について語る時の様子は、まるで自分の子供について自慢しているようでもあった。


 まだ四つの王子は、王の寄り難さと対を為すように、国民の人気者だ。

 王家の揃う儀式や謁見に臨む時などは、王都や近隣の住民達はこぞってその姿を眺めにやってくる。


 遠巻きにでも、王城の露台にいるファルシオンの姿はすぐ見分けられた。

 ファルシオンが一時もじっとしていないからだ。


 幼い瞳にはまだ見る物全てが珍しいのだろう、頬に好奇心をありありとのぼらせ、玉座の周りをあちこち動き回っては、侍従長に叱られるか、王妃か姉である王女に諭されるか、最後には王に摘み上げられて、無理やり椅子に座らされる。


 実はその一瞬に見せる子の親としての王の姿、血の通った存在としての王に、人々は安堵を覚えるのかもしれなかった。


 とにかく、ファルシオンが成長していく姿を見るのは国民にとっての楽しみであり、心和むものでもあった。


 それだけに、王家の揃う露台にファルシオンの姿だけ見えない時は、どうしたのだろうと不安気な囁きが交わされた。

 それは時折ある事だ。


 ファルシオンは今よりもっと幼い頃――正確には二歳を迎えたばかりの頃、大病を患い、一時は生死の境を彷徨った。


 幸いに一命を取り留めたが、以来少々病がちで離宮で療養する事も多く、また過去のある事情から、それは王家の中だけではなく国民にとっても大きな心配事だったのだ。


 その反面で、公然とは語られないものの――そうした「不安定」な状況にあるファルシオンに対して、新たな王子の誕生を望む声も少なからず存在する。


 王家正流の男子は一人、ファルシオンのみで、第一王位継承者はファルシオンだ。

 王妃に懐妊の兆しはなく、また現在は側室も無い。

 それは言ってしまえば、権力を望む者達にとって、大いなる好機でもある。


 王に変わり得る事は不可能とも思える。――だが、王に近付く事は、不可能ではない。


 我が娘を王城へ上げ、王の眼に留まって側室、あわよくば第二王妃に……と考える貴族や有力者も少ない数ではなかった。


 尤も、それは今に始まったものではない。そうしたやり方はずっと続いている慣習でもあり、自らに適齢の娘がいなければ、遠縁から――更には市井の美しい娘を養女を取ってでも王城に上げる者もあるほど、出世を望む者にとってそれは魅力的な手段だった。


 そうした意図は王城の外へも見え隠れしていて、特にファルシオンびいきの城下の人々にとっては憤りすら覚えるものだ。


 そしてまたもう一つ、別の理由による憤りも、彼等の中にあった。


 そんな考えが、まだ無くならないのか――

 あの痛ましい事件を経て、未だに、と。


 ところが最近、王城の風向きが、少しばかり変わってきている。


 (くだん)の「王の剣士」が時折幼い王子の傍に上がるようになったと、そんな噂がちらほらと、王城の外で交わされ出したのだ。


 王の認めた、稀有な二刀の剣士は、未だ不安定な立場ながらも、国民の中で多くの信頼を得ている。


「王がファルシオン殿下に、彼をお付けになったらしい」


 つまりは、王の剣士が第一王位継承者の護衛に当たるのだ、と。


 それは王の意志を代弁しているようにすら映る。

 どんなに周囲がファルシオンの代わりをと考えたとしても、王の意思は明確なのだと、そう思えた。








「レオアリス! そこで待て!」


 幼くまだ少したどたどしい声に呼ばれて、レオアリスは立ち止まった。


 ここは王城の六階にある庭園に面した回廊だ。緑豊かな庭園が、空中に浮かぶように張り出している。

 庭園には午前中の早い日差しが静かに照っていたが、地上よりも空に近い分、冬の弱い太陽もどことなく暖かく感じられた。


 ちょうどこれから、レオアリスは王が会議の議場へと出向くその警護の為に、この上にある王の私室へ向かう所だった。


 振り向いた視線の先で、冬の始めでありながら、季節のくびきから解き放たれたように緑の青々とした庭園を、幼い少年が駈けてくる。


 レオアリスはその場に跪いた。

 その間にも少年は、庭園に控える侍従達が恭しく、しかし何時でも手を差し伸べられるようにと見守る中を走り抜け、最後の仕上げとばかり、回廊に跪いたレオアリスの前にぽんと跳ねて立った。


 艶やかな銀の髪に濃い金の瞳。王に良く似た面差しは、やんちゃな盛りといった風情だ。

 身長はまだ、跪いたレオアリスの頭の辺りまでしかない。


 頬は走ってきたせいで薔薇色に輝き、一見しては、幼い姿の上に病の影は見当たらない。


 切らした息を整える間も惜しそうに――この国の第一王位継承者、ファルシオンはその丸く輝く瞳を上げた。



「今日は何をしてあそぶのだ?」

「殿下」


 レオアリスは思わず苦笑を浮かべた。


(すっかり俺が居城に来るのは遊ぶ為だと思われてるな)


 確かにここ最近、レオアリスはファルシオンの遊び相手を仰せつかっていた。

 遊び相手、というのは比喩ではなく――本当に、間違いなく、遊び相手だ。


 巷で噂されている内容はレオアリスの耳にも届いていたが、実態は大分違う、とこれまた苦笑せざるを得ない。


 レオアリスがファルシオンと初めて面会したのは、先の月に行われた御前演習の後で、それからまだ一月も経っていない。

 正確に言うと二十日程度、その間に四度ほど正式に目通りする機会があったが、その僅かな間にファルシオンは、この若い近衛師団大将を殊の外気に入ったようだった。


 そもそものきっかけは、御前演習を終えた数日後の王への謁見の折だ。


 王の隣に、ちょこんと座っていたのがファルシオンだった。


 レオアリスは初めて間近にファルシオンを見たのだが、ファルシオンにも相当珍しかったのだろう。

 身を乗り出し、丸い瞳をまじまじと見開いて、「ほんとうにおなかに剣があるのか」と聞いた。


 レオアリスが頷くとびっくりした顔で少し恐々と身を縮め、暫くはおとなしく、レオアリスが父王と言葉を交わすのを見つめていた。


 それから傍らに立っていた近衛師団総将アヴァロンに何事か囁き、アヴァロンの答えを聞いて、また瞳を輝かせた。


 その翌日、突然王子からの急使が来たのだ。

 王の指示もなく他の王族から召喚される事など、滅多な事ではない。



 何事かと驚いて、副将グランスレイと共に急遽居城に参じ、二人して恭しく眼前に跪くと、しんと静まり返った広間で、ファルシオンは小さな身体に昨日の父王のような威厳を纏わせようと胸を張り――


『よく来た。私とあそぶのだ』


 と言った。


 その瞬間の、周囲に控えた侍従達の何とも申し訳なさそうな微妙な空気が忘れられない。


 どう受け止めるべきか、生真面目で実直なグランスレイはすっかり言葉を失っていたが――、取り敢えず、レオアリスはファルシオンと鬼ごっこをして、彼が疲れてきたら札取り遊びや謎かけをして、満足するまで二刻ほど遊んでから帰ってきた。


(本っ当に遊ぶだけだったもんな……)


 二度目に呼ばれた時はせがまれるままに室内でずっと本を読み聞かせ、その内ファルシオンがうとうとと眠り込んでしまった為、そうっと退出した。


 そうしたらその翌日またすぐに呼ばれて、何で黙って帰ったのかと怒られたのが、十日ほど前だ。


(三日前は、玉遊びか……)


 それもこの居城の、空に張り出したような庭園でだ。


 実を言えば、意外と――というか、結構楽しい。

 だが、「遊ぶ」というのは果たして、近衛師団大将の任務に入るのだろうか。職務権限規定を読んでも当然、書いてはいない。


 本来レオアリスの――近衛師団の任務は王の守護であり王城の守護だ。いかに王子の下命とは言え、「遊ぶ」――


 何となく、仕事を呆けているようで後ろめたい。


 しかし二度目の召喚の折に、ファルシオンの侍従長ハンプトンからは王の承知のもとである事を告げられていたから、実はこれも任務の一つに数えられているのかもしれなかった。


 王が認めているのならおそらく、問題はないのだ。


(うーん……まあでも)


 何となくいいか、と思うのは、遊んでいる時のファルシオンが、とても生き生きと楽しそうな顔をしているからだ。


 少し身体が弱いと聞いていたその影も、「第一王位継承者」という通常なら近寄り難い鎧も、声を上げて駆け回っている幼い姿の上には見当たらず、随分と楽しそうに笑うものだと、そんな印象が強かった。


 どんな立場であれ、やはり本来の姿はまだ四つの幼い子供なのだと。


 レオアリスがそんな風にすんなりとこの状況を受け止める理由の一つには、友人であるアスタロトと重なるものがあるという事もある。

 彼女も十七という若さでアスタロト公爵家の当主、正規軍将軍という重責にありながら、その重荷を周りに感じさせない。


 そしてもう一つ、何より気に掛かっている事があった。


 レオアリスが退出しようとする際に見せる、ファルシオンの表情だ。


 いつもぐっと何かを噛み締めるような、寂しげな顔をした。


『殿下のお側近くにあるのは、我々のような侍従達ばかりですから……』


 そっと洩らしたのはハンプトンで、レオアリスは王城の中で一番歳の近い存在でもあり、それが兄を得たように感じているのだろう、と。


『私どもは女性ばかりで、あまり殿下の思うような遊びはお勤め致しかねますし』と、そう苦笑を零した。


 ただ、彼女の穏やかに刻まれた皺には、少しだけ別種の翳りが含まれている。


 その翳り――兄を、というハンプトンの思いには、一つの背景がある。


 それはレオアリスも――レオアリスだけではなく、この国の大抵の者が知っている背景だ。

 ファルシオンがレオアリスを傍に置こうとする、最も根底にある理由。


 レオアリスは目の前のファルシオンと瞳を合わせた。


「殿下からおいでにならなくても、お呼び止め戴ければ俺が伺います」


 病がちと言っても、体調の良い日はこうして走る事もできる。

 ただ、それを見守る身としては気が気ではないものだ。侍従達の中には常に典医が付き従っている。


「もんだいない。皆がさわぎすぎなのだ」


 年齢に似合わぬ大人びた口調は、おそらく父王の受け売りだろう。


 レオアリスが典医へ視線を向けると、少し離れた所にいた典医はやや苦笑しながらも、ファルシオンの言葉を肯定するように頷いた。


「そら見ろ。そんなことより、レオアリス」


 王子は顎を引き、父王がそうするように、レオアリスに金色の瞳を注いだ。


「剣を見せよ」


 唐突な言葉のようだが、それは初めて呼ばれた時から、ずっと言われ続けている事だ。

 剣を見たい、と。


 ただ、屈託なく、本来否と申し出る事の難しいその言葉にも、レオアリスは頷いた事がない。


 剣の制御に不安がある訳ではない。

 剣は既に、完全にレオアリスの意志のもとにある。


 それでも、レオアリスは自らの剣をいたずらに幼い王子の前に出す事をしなかった。


 レオアリスはファルシオンの前に跪いたまま、低い視線を覗き込むように漆黒の瞳を合わせた。


「またいずれ――相応の機会に御覧に入れます」

「またって、いつもそればかりではないか。いつ見せてくれるのだ!」


 それには宥めるように笑っただけで、レオアリスは静かに頭を下げ、ファルシオンの前を辞す為に立ち上がった。

 その服の裾を、小さな手が掴む。


 ぐいと引かれて、レオアリスは少し驚いてファルシオンを見つめた。


「約束しろ! いつなら見せるって」

「――」


 さすがに、何度もはぐらかすのは通用しないらしい。

 どうあっても、約束するまで掴んだ服を離さないといった構えの王子に、レオアリスは僅かに考えてから、生真面目な顔で応えた。


「――では、王のご許可を戴いた時に」


 王の許可が無ければ面前で剣を抜く事はできないと、その含みを利発な王子は理解したのか、柔らかい頬をぷくりと膨らませる。


「父上にはもうたのんだのだ」


 許可が出なかった、と膨らんだ頬が言っている。


「父上だけずるい」


 その子供らしい物言いに、レオアリスだけではなく周囲の侍従達も笑み零れる。


 実際には、レオアリスが剣を抜く事を、王から禁じられている訳ではない。常に用いる訳でもないが、部隊の演習などでは時折、大抵は一刀のみだがレオアリスはその剣を顕している。


 だが万が一があってはならないから、そう簡単に彼の希望を叶える事はできなかった。


「さあ、もう大将殿は陛下のもとへ行かれるお時間です。大切な任務の途中なのですから余りお引き止めになってはいけません」


 ハンプトンが諭すように宥め、漸くファルシオンは膨らませた頬を元の大きさに戻した。


「またすぐに来い。今度はひりゅうにのるの。そなたのひりゅうと私の、くらべっこするのだ」


 飛竜の競争と聞いて、レオアリスはにや、と得意気な笑みを浮かべた。


「いいんですか? 俺のハヤテは凄く速いですよ。負けん気も強いし」

「私のだってはやいぞ」


 ハンプトンが丁寧に、だが素早く口を挟む。


「殿下はまだお一人では飛竜にお乗りになれませんでしょう。競争など危のうございます」

「一人でのれるもん!」

「万が一でも落ちて怪我をされてはいけません」


 ファルシオンはまた頬を膨らませて、唇を尖らせ、手足を振った。


「だめなことばっかりだっ」

「殿下。そのような所作を」


 ハンプトンに咎められ、ファルシオンは尖らせた唇をきゅっと結んだ。


(あーあ)


 一連のやり取りに、レオアリスは密かに苦笑ともつかない溜息を落とした。


 この年で早くも品格というものを求められるのは、レオアリスにしてみれば少し酷な気もする。


(だから俺が気楽なのかもな)


 内心で苦笑しつつ、レオアリスは丁寧に礼を捧げて改めて退出を述べ、先導官と共にその場を離れた。


 回廊の奥に向かうレオアリスの姿を、ファルシオンはぽつんと立って見送っている。


 じっと、食い入るように、小さくなる背中を眺めている寂しげな姿に、侍従達の幾人かは陰った顔を見合わせた。


「やはりお姿を重ね合わせておいでなのでしょうか」


 誰に、とは口にされなかった。だが見合わせたもう一人の侍従もそっと頷く。


 ファルシオンが生まれる、遥か前に失われた者。


「ご存命であれば、まさにあの方ほどの御年であられたのですもの……」


 囁かれた言葉はすぐに厳しい声に遮られた。


「滅多な事を。そうした事を我々などが、軽々しく口にするものではありません」


 ハンプトンに厳しい叱責の眼を向けられ、二人は慌てて口を閉ざし、彼等の王子の姿を見つめた。



 ファルシオンは漸く回廊から視線を逸らしたものの、しょんぼりと肩を落としたまま、少し早足に侍従達の間を抜けていく。


 だが幼い心で周りに心配をかけると思ったのだろう、すぐに精一杯の笑みを浮かべて彼等に手を振り、また庭園を駆け出した。


「かけっこしよう! あの噴水まで。私に勝ったら花をつんであげる」


 水が陽射しを弾くようなきらきらした声に、沈んでいた景色が明るさを増した。


「あら、そんなに先においでになっては、我々は勝てません」

「もう少し、おみ足を緩めてくださいませ」


 微笑みで答えて、侍従達もファルシオンを追いかける。冬の冷えた風も、ファルシオンの後を追って庭園を抜けていく。


「ラナエ、何をしてるの、お前もおいでなさい」


 女官の一人が、立ち止まっていた少女を振り返った。


 ラナエは回廊の傍に立ち、レオアリスの去った方向と先程の侍従達に思わしげな瞳を向けていたが、慌てたように頷いてすぐに駆け出した。






 ――ファルシオンは正式には、第二王子だ。


 ファルシオンがレオアリスを呼ぶ理由。


 兄を得たような、と周囲の思いに根差す、その背景。






 この国は、王子を一人、失っている。








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