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2-3 どうやら舐められてるらしい

 それからすぐ闘技場へ向かい、観客席には1年生の全員が座っている。ほとんどの人間はリンドヘイム家に手を出したて愚かだと思っている。それほどに強大な力を持っているのだ。


 闘技場の真ん中にシンとジェークが向かい合う。その間にハーリーが立会人として司会進行する。


「ルールは規定に則り行われる。もし過度な攻撃がされた場合は私が全力で止める。良いな?」


「はい」


「いいから早く始めてくれ、先生」


「返事はしろ、ジェーク。これは決まりだ」


「はいはいわかったよ」


 シンは真面目な顔でジェークだけを視界に入れる。ジェークは笑いながら手をぶらぶらさせ余裕な姿を見せる。


「それでは始め!」


 開始の合図と同時に、ジェークは大きく後ろへ飛び退く。すると、ジェークは手を広げて大きな声で何かを詠唱し始める。


「貴様に見せてやろう! 魔法適正の高い俺様の取っておきの魔法を!」


「何をしている?」


 シンはその得体の知れない行動に疑問を持つ。少し興味本位でその行動を止めはせず詠唱をさせた。


「これが俺様の魔法だぁ!『氷槍』」


 そう叫ばれ放たれた魔法は氷が槍の形をしている。かなりの大きさのその魔法に、辺りの1年生からは「おぉ!」と歓声を挙げる。マヤとエリーも、その魔法の強さに「シンは大丈夫かな……」と言う程だった。


 だが、シンから見たその魔法は小石程度の雑魚魔法にしか見えなかった。


「はぁ……くだらん」


 シンはその魔法を人差し指のみで受け止める。辺りからはその光景に声が出ない。


「こんな魔法がお前の取っておき? あれだけすごい長い時間ぶつくさと喋っておいてそれがこれ? 舐めるのも大概にして欲しい」


「な、何だと!?」


 ジェークはまだ理解ができず、再び詠唱を始める。


「な、なんかのイカサマだ!! 『氷槍』」


 立て続けに魔法が発射され、2本、3本と氷の槍は増えていく。だが、シンは逆算を使うまでもなく片手で難なくそれを凌ぐ。


「イカサマなどない。こんな3流以下の魔法などイカサマを使うまでもない」


「こ、このぉおお!!」


 ジェークはヤケになり魔力を暴走させる。そのせいで体中に駆け巡る魔素が暴発しジェークの体に異変が起こる。


「まずい、魔力暴走だ! シン、そこから離れろ! 爆発に巻き込まれて死ぬぞ!」


「くだらん。その程度で魔力暴走を起こすのか? ちんけな存在だな、人間というのは」


 ジェークの周りには暴発した風魔法と氷魔法が無数に飛び交う。ジェークの得意魔法は風と氷。その為、その2つの魔法が無意識下で発動され、あらぬ方向へと魔法が飛んでいく。


「観客席の1年は身をかがめろ! 魔法障壁が突破される可能性があるからな!」


 この闘技場では、常に魔法障壁が貼られている。観客席に魔法が飛んでいかないよう措置をしている。だが、その強力な魔法が何を起こすか分からないため、ハーリーはそう声掛けをする。


「た、助け……助けて……」


 苦しそうにそう言うジェークは、自分の体を抱きしめるように倒れ込む。


「シン! ここは我々に任せて早く逃げろ!」


「それでは遅い」


「なっ!?」


「俺がやった方が早い。『魔力操作』」


『魔力操作』他人の魔力を操作する。但し、自分より強力な魔力は操作不能。


 ジェークの周りにある魔法はシンの魔法逆算により消滅し、ジェークから溢れ出ていた魔力はシンの魔力操作により鎮静化される。


 ジェークは気絶し、その場でぐったりとする。すぐに保険の係がジェークを運び、その場は騒然とした。


「シン……彼は一体どういう人物なんだ……?」


 ハーリーは、そんな単純な疑問を持ち、その答えを探す。だが、その答えは一向に見つからなかった。


「少しやりすぎたか……隠して生きるにももう無理かもしれないな……」


 最初は誰に内緒で行くつもりだったが、ここまで派手になってしまうとそれはもう隠すのはほぼ無理と言える。例え隠していたとしても、この学校ではろくな成績は残せず、ずっと舐められっぱなしだっただろう。


 元魔王の立場からすると、それは実に不愉快である。舐められてはいい気がしないし、何より両親に迷惑がかかるかもしれない。その為、ここが潮時かなともシンは考える。


「シン、話があるんだがいいか?」


 そう声をかけたのはハーリーだった。


「何か?」


「何故それほどまでの力がある? どこで手に入れた?」


「……全てを話しても信じては貰えないだろう。だから、それには答えられない。これではダメか?」


「答えになっていない。私は答えが知りたい」


「……」


 シンは悩む。まだ誰にも打ち明けていない秘密をここで言ってもいいのか。それを言ってしまって今後がどういう扱いをされるのか、それが分からない限りそれは言えないとシンは判断した。


「俺は努力をした。死ぬ程の努力を」


 シンはそれだけを言いその場を立ち去った。


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