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2-2 どうやら舐められてるらしい

「それでは皆さん〜、授業を始めるますので教室へ移動してください〜」


 そんな放送が校内に鳴り響く。シンも移動をしたいが肝心な校内の説明を受けていなかった。校内を分からないまま右往左往していると、1人の女子生徒が声をかけてくる。


「新入生?」


「そうだが、君は?」


「私は1年のマヤ。エルフなの」


 そう言ってマヤはエルフ特有の耳を見せてくる。シンもそれは見慣れたもので、前の世界でも何人かはシンの配下としていた事もある。


「エルフか。懐かしいな」


「ん? 何が懐かしい?」


「いや、こっちの話だ。君も1年ってことはもしかして行先は同じってことか?」


「そうだね。同じ授業を受けなきゃならないから同じね。案内しようか?」


「助かる」


 シンはそう言ってマヤの後ろを着いていく。すると、ぞろぞろマヤの行く方向へ走っていく生徒が見え始める。周りは急いでいるようだが、マヤにそれは見受けられない。


「みんな急いでいるが、いいのか?」


「みんな席を取りたいだけ。焦らなくても前の方なら有り余ってるから安心よ」


「そうか。なら良い」


「あら、貴方は後ろの席を希望しないのね。みんな授業なんて聞く気がなくて後ろの席で寝ているのよ」


「確かテストがあるのだろう? ならば前で聞くのがいいだろう」


「テストなんてみんなカンニングしてるわ。教官もそれは見過ごすわ」


「なんでそんな事が罷り通る?」


「賄賂よ。校内には貴族の子もいるの。その貴族からお金を貰って見て見ぬふりをしてるって訳。校長は基本忙しくて学院にいないからお咎めなし」


「ならもう授業なんて意味ないだろ」


「それがそうもいかないの。1部の人間はしっかり見られてるわ。まぁ要するに嫌われ者ね、貴方のような」


 マヤはニコニコとそう言うが、シンは「面白い」と鼻で笑うだけで一蹴する。


「君名前は?」


「シンだ。よろしく頼むよ」


「ええ、こちらこそ。もう着いたわ」


 案内された場所はとても広い講義室。とても大きな黒板に、黒板を中心に円を描くようにして配置された椅子や机。そして、後ろの席で楽しそうに話す生徒と、前の席でノートを用意する生徒。これがマヤの言っていた事なのだろう。人目見ただけで状況がわかる。


 マヤとシンは前の方の席につくと、遅れてもう1人の女子生徒がマヤの隣に座る。


「危なかった〜、遅刻するところだった」


「だから言ったのに、遅刻するよって。でもエリーはグダグダ言って起きなかったんだからね?」


「ごめんってマヤ。……それで、その隣の男性は?」


「名前はシン。新入生よ」


「あー、噂の。私はエリー、マヤと同じエルフ! 宜しくね〜シン」


「ああ、宜しく。やはりエルフってのは美人が多いな。それでいて優しい」


 そう言われて2人は顔を赤くする。シンは真面目にそう言うが、2人は「冗談やめてよ〜」と顔を手で煽りながら言う。


 マヤは長髪で綺麗な金髪。スラッとした体型にぱっちりとした目で誰が見ても優しそうに見える。


 エリーは、短髪の明るい緑の髪色。マヤよりはガッチリとした体型で背も低い。キリッとした目だが、時々見える笑顔はその目を忘れさせる。


 それから数分後、先生が入ってくる。その先生はシンが試験の時に戦った先生だった。腹に包帯を巻いていおり、周りの生徒は先生を見てクスクスと笑う。


「授業を……そうか、貴様も今日からか」


「ええ、よろしく先生。肋は大丈夫?」


「貴様に心配されるまでもない。それじゃあ始める」


「ちょっと待ってくださいハーリー先生」


 授業が始まろうとした時、1人の生徒がその場に起立し授業を止める。


「なんだジェーク。また問題か?」


「またとは失敬な。その新入生に負けた貴方の講義なんて聞く気にならない。みんなもそう思うだろ?」


 1部はクスクスと笑い、1部は下を見たまま無視する。ハーリーも、なにか言いたそうに口を開くが何も発さず睨みつける。


「怖いなー、先生。レイチェル家の血筋があんな何処ぞの知らぬ馬の骨に負けとあっては、レイチェル家も程度が知れる」


「何?」


 その言葉にハーリーは怒りを表す。一方、ジェークと呼ばれた男子生徒は、見下すような目でハーリー先生を見ている。


「あんないいんですかー? そんな目で見て怒りを表して。この学校に出資している我がリンドヘイム家を目の敵にして」


「くっ……ガキが」


 誰にも聞こえないような小声でハーリーは呟く。怒りを何とか抑えて無理矢理授業を始めようとするが、ジェークは止まらない。


「なぁ先生。俺は言ったよね〜? 講義を聞く気はないって。生徒に負ける雑魚は帰って怪我の休養でもしてなよ?」


 ハーリーは手に持つ紙をぐしゃりと握りつぶす。だが

 何らかの関係で口出しは出来ない。まるで立場が逆で、シンはそれを疑問にしか思えず、ジェークに聞こえるように発言する。


「弱い者ほどよく吠えると言うが、それは本当のようだな?」


「何? 今なんて言った新入生?」


「何も言っていない。独り言だ」


「いいや、お前は俺に向かって言ったよな? 何だ、金で八百長しかけた雑魚生徒が俺に決闘を挑むのか?」


「貴様の脳内は花でも咲いているのか? 耳にクソでも詰まってるのか? 独り言だと言っただろう?」


 シンは煽るように言う。それを聞いたジェークは怒りを体に表し机を蹴り飛ばす。


「いいだろう、新入生。貴様に決闘を挑む。貴様をボコボコにしてこの学院を退学させてやる」


「シン、やめた方がいいよ。彼はジェーク・リンドヘイムと言って、リンドヘイム家の三男だ。リンドヘイム家を知らないわけないだろう?」


 マヤはそう言って止めてくれるが、世の中誰が偉くて誰が強いのかなどシンは1つも知らない。


「知らぬ。それに、彼も男だ。喧嘩を売った以上覚悟はあるのだろう」


「でも……!」


「初めてあった人間にそこまで言う君は、きっと優しいんだろう。大丈夫だ、俺の心配より彼の心配をしてやれ」


「言いたい放題言ってくれやがって! 絶対に殺してやる!」


「2人ともそれまでだ!」


 ハーリーは声を上げて言うが2人ら聞く耳をもたない。


「先生、今すぐ闘技場を抑えてくれ。庇うつもりは無いが、君も貶されてそれで良いとは思わないだろう? それに、本気だったのは俺も良く知っている」


「だが……」


「いいから、言うことを聞け」


 ハーリーはシンの命令に従うかのように動き出す。シンも久しぶりに魔王らしい事をしたなと昔を思い出す。


「さぁ、リンドヘイム家とやらがどの程度なのか俺にみせてくれ?」


「新入生がでしゃばるなよ!」


 こうして入学早々問題が起きることとなった。

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